「やればできるじゃないか」は褒め言葉?
最近読んで,頭から離れない言葉があります。
親に「やればできるじゃないか」と言われるとムッとしたが,「やると思ってたよ」と言われたのはとてもうれしかった。
- 「やると思ってたよ」が嬉しい理由[やる気を引き出すコーチング] こちら
この2つの言葉は,同じようなことを言っているようですが,実は大きな違いがあると思いました。Benesse の記事では「Iメッセージ」と「Youメッセージ」というまとめ方をしていますが,私はちょっと違う理解をしています。「やると思っていたよ」という言葉からは信頼と肯定を感じ,「やればできるじゃないか」には批判と否定を感じるのです。
ちょっとした言葉の選び方,伝え方にその人の本音が見え隠れして,それを言われたこどもは,その本音を敏感に感じ取るのではないでしょうか。自分の言葉の中にどんなニュアンスが乗っているのか,どうしてそういうニュアンスを乗せたくなるのか,教師や親はときどき点検しないといけませんね。
[やる気を引き出すコーチング]には,こんな記事もありますよ。
9つの点(9 dots)
泉区社協のMAP体験で行った「9つの点」というアクティビティは,「The Nine Dots Puzzle」という名前で,いくつかのウェブサイトで紹介されています。
右図のような9つの点があったとき,「この9つの点をすべて1回ずつ通るような4本の直線を一筆書きで書く」という問題です。さて,いかがでしょう。皆さんも考えてみませんか?
このパズルの答えは,いくつかのウェブサイトで紹介されています。でも私のサイトでは答えは掲載しません。答えを見たらつまらないですから。4本の直線で引けたら,次は3本,1本と減らしてみてください。さて,この9つの点をすべて通過する1本の直線,どうやって引くんでしょうね!?
先日のMAP体験で,このアクティビティを使って感じていただきたかったことは,自分の中に知らずにできている「思考の枠」です。このパズルは,9つの点の中だけで考えていては絶対に解けないのです。9つの点の外側に線を伸ばすことができれば,正解に近づきます。
このアクティビティで自分の中の「思考の枠」を感じてもらい,次に取り組んだのが「ワープスピード」。これは円陣になって一人の人から決まった順番にボールを回していき,一番最後の人にできるだけ速くまわすという活動です。ボールは円陣にそって移動するのではなく,円陣の中をいったりきたりします。20人ぐらいでやると最初は20秒〜30秒かかったりするのですが,いろいろアイディアを出し合ってチャレンジするうちに10秒を切るようになり,アイディア次第ではもっと速くなることもあります。この過程で,やはり先ほどのパズルであったような「思考の枠」を飛び越える瞬間があるのです。振り返りで「ここまで速くなると思っていましたか?」と聞くと,「こんなに速くなるとは想像もしなかった」という返事が返ってきます。
これらの活動は「よりよい人間関係」というテーマで行われた研修の一コマです。一般に,コミュニケーションで大切なことは「相手の立場になる」ことだとよく言いますよね。でも,それはもしかしたら自分の「思考の枠」の中だけで「相手の立場になったつもり」になっているだけかもしれない。自分の思考の枠をはみ出すことで,相手との関係でも新しい世界が広がるかもしれない。これらのアクティビティを体験してみると,そんなことに気づかされます。
泉区社協のMAP体験とフルバリューカード
先月の話になりますが,泉区社会福祉協議会のボランティア・ステップアップ講座に講師として呼ばれ,MAP体験会を行いました。3時間ずつ2日間,合計6時間の講習です。参加者のほとんどが60代〜70代で,富士山に5回も登頂した人や,バイクで日本一周をした人,非行少年のサポート活動を30年もやってきた人など,皆さん豊富な人生経験をお持ちの方ばかりでした。
このステップアップ講座は「よりよい人間関係づくり」というのがテーマでしたが,講師から「こんなふうにしましょう」と押しつけるような内容にはしませんでした。というか,そうしろと言われてもできるものではありません。なにしろ受講者は人生の大ベテランの方々なのですから。その代わり,受講者の皆さんに,新しい人間関係をつくる過程を実体験してもらいながら,日頃の自分のコミュニケーションについて振り返るきっかけになったり,普段のコミュニケーションでどんなことを大切にしているか,互いに学び合えるような場面を設定しました。主な活動を紹介します。
- 3人組になって互いの短所を長所に言い換える「オセロ紹介」
- 2人で1本のペンを持って,住みたい家の絵をしゃべらずに書いてもらう「二人の家」
- 目をつぶっている相手に,自分が描いた鳥の絵を模写してもらう「ブラインド・バード」
- 自分の心の中に知らずにできる枠の存在を感じてもらう「9つの点」
- 1つの毛糸玉を決められた順番で全員ができるだけ早く回す「ワープスピード」
- コミュニケーションで大切にしたいことを順位付けする「ダイヤモンドランキング」
高齢の方が中心なので,飛んだり跳ねたりのアクティビティはできません。座ってできる活動を中心にしながら,時々立って体を動かすようなメニューで構成しました。普段ボランティア活動をするなどアクティブな皆さんなので,とても積極的に取り組んでいただきました。
そして最後の活動は,2日間の講習の振り返りです。フルバリューカードという100枚の言葉カードから,今の自分の気持ちに合うものを1枚選び,それをみんなに見せながら感想をひと言いただきました。皆さんが選んだ言葉を一部紹介すると…
[温][明][輪][笑][ありがとう][ひゃっ][続][創][ほんわか][新]
これらの言葉を見て,短い感想を聞くだけで,自分の中でも満足感が広がりました。
それにしても,今回,PAJのはるみちゃんが製作したフルバリューカードをはじめて使ってみましたが,たいへんよかったです。2日目は活動時間が押していて,振り返りの時間が予定の半分の時間(10分弱)しかなくなってしまいました。でも,この言葉カードを使ったおかげで,ちゃんとその時間内で皆さんから貴重な振り返りのひと言をいただくことができたのです。
短い時間の中で自分の心と対話して,2日間の体験をそれぞれ個性的に振り返っていただけたのは,やはり言葉のカードが体験と感情を結びつける触媒のような働きをしたからだろうと思います。ありがとう,はるみちゃん!
- フルバリューカード こちら(PDF)