こどもの学力より,大人が幸せな生活をしよう!
今年も文科省が実施した全国学力・学習状況調査の結果が発表されました。昨年同様,首位は秋田,最下位は沖縄だったそうです。「学力」にはいろんなとらえ方がありますが,その中で特に「誰かがつくった問題に答える力」を見るテストで,都道府県を順位づけしたということです。
でも,こどもたちは「誰かがつくった問題に答える力」を上げるために勉強しているのではないですよね。問題を解くことの先に,何かを見ているはずです。例えばそれは,価値のある人生かもしれない。幸福な生活かもしれない。どうせ調査するなら,その学力の先にあるものがどうなっているかを調査する方がいいのではないでしょうか。
世界各国の国民の幸福度を調査した研究で,日本は先進国の中で最低ランクだそうです。バブルがはじけたとはいえ,今でも日本は経済的には世界第2位の経済大国ですが,そこで暮らす人々は世界の他の国ほど幸福に感じていないということです。私にはとても納得できる調査結果ですが,皆さんはどう感じるでしょう。
先日,東ティモールで図書館をつくるボランティア活動をしている方にお会いしたとき,こんな話を聞きました。「日本は食べ物に困らないし物も満ちあふれているのに,自殺する人が毎年3万人もいる。東ティモールでは,誰もがその日に食べるものにも困るほど厳しい暮らしをしているが,こどもたちはとても人なつこく,笑顔が素晴らしい。自殺する人は誰もいない。」
いくら自分の県の学力状況調査の順位を上げても,高給を取っていろんなものが買える人を増やしても,それで教え子が幸せになれるというものではないのです。教育関係者や為政者,親たちは——つまりは大人たちは——,全国学力調査で右往左往している場合なのでしょうか。大人たちが自分の生活の幸福度を上げずして,こどもたちにどんな未来を語れるというのでしょうか。
全員がしゃべることの大切さ
リーダー研修会などで集団の活動をうまく進めていくためには,一人一人の参加者の考えや気持ちを言葉にして引き出すことが必要です。互いに何を考え,どう感じているかが分からないと,協力などできませんから。
大人の活動では,自由な発言を求めるだけで,けっこう言いたいことを言うものですが,中高生の活動ではそこがなかなかうまくいきません。そんなとき私は,全員に順番に発言させることにしています。中高生が発言しないのは,考えや気持ちを言葉にできていないからではなく,他と違うことをしたくないから。全員しゃべらなければならないという状況に置かれた方が,彼らは安心して発言できるようです。
先日,袋原中学校でリーダー研修会をしたときも,私はグループの全員に感想を求めました。二人で一本のペンを持って書いた「二人の家」を黒板に掲示したとき,3人で短所を長所に言い換える「オセロ紹介」をしあった後,断片的な情報を会話で組み合わせていく「近所の商店街」の活動のあとなど,ポイントと思われるところでは必ず全員に話してもらいました。発言させてみると,生徒たちは,非常に的確にそれぞれの活動から学んでいるということが分かります。的確な上に,互いに少しずつ内容が違うんですね。なので互いの学びを言葉で共有することにより,一人一人の学びがさらに深まります。
毎回全員にしゃべらせるのは時間がかかるのではないかと思われるかもしれません。確かに一部の人の自由な発言で活動を進めるより時間がかかります。でも,全員が互いの思いを共有して活動する方がグループとしての一体感が得られやすく,結局は目標に早く達することができるのです。急がば回れです。
アメリカ・インディアンの世界には,トーキング・スティックというものがあります。みんなで話をするときに使う1本の古木のことです。トーキング・スティックを持っている人は,自分が納得するまで話をすることができ,持っていない人は発言することはできません。スティックを持っている人の話を,みんなは黙って聞くのです。スティックを持った人が話し終わったら,スティックは次の人に渡されます。
このトーキング・スティックも,その場にいる全員が発言するためのしかけなんですね。自分の考えや気持ちを心ゆくまで発言できること。その発言をみんなが真剣に受け止めてくれること。そういう体験を積み上げることで,その集団に所属する安心感が生まれ,集団から学ぼうという気持ちが生まれるのだと思います。そういう体験を中高生はあまりしたことがないでしょう。特にリーダー研修会に出てくるような生徒には,全員が発言することの意味,そうしたときの心地よい感覚にも気づいてほしいなと思っています。
今読んでいる本より
昨日,JRCトレセンの指導者反省会がありました。引率した先生の一人が「もっと英語を勉強しようと思った」という生徒の感想を話してくれました。先日,私に同じように言った生徒とは別の生徒です。この生徒も,あの1泊2日の体験で,学ぶ意欲が高まったんですね。
今,「イーグルに訊け」という本を読んでいます。サブタイトルは「インディアンに学ぶ人生哲学」です。ちょうど今読んでいるところに,こんなことが書いてあります。
私たちが本当に学校で学ばなければならないのは,自分には人に喜んでもらうことができるという自信なのです。そしてこの世界で必要とされているということなのです。
インディアンはよく私に「川の水面だけを見て川を知ったと思うな」と言いましたが,それと同じで,実際にプロセスを踏み,自分で体験しないと,得られないことはたくさんあります。
私はその話を聞いて,学校で教えることというのは人の役に立てるという自信をつけることだ,と思いました。数式や英単語はそのための「道具」だと思うのです。いまの教育では道具を覚えることが「メイン」になって,役立つことが「サブ」になるから,社会がおかしくなるわけです。
昨日集まった指導者の所属校のうち,半数近い学校は今週から授業が始まっているそうです。夏休み短縮。教科書での学びというのは,インディアンの言葉を借りれば「川の水面だけをみる」行為です。平面的な2次元の学びと言ってもいいかもしれない。その2次元の学びに,体験を通して深みを与えていく——3次元にしていく——ことで,本当の知識になる。
しかし,今の教育「改革」は,体験をする時間を減らし,ぺらぺらな学びの時間を増やすもの。薄っぺらな人間をこれ以上増やして,日本はどこへ行くのか?
体験を奪われるこどもたち
ケンカをすれば止められる。ダラダラすれば怒られる。失敗する前に答えを教えられる。暇な大人が多いとこどもには災難ですね。
体験を「させる」ではなく,体験を「奪う」。家庭でも学校でも,それが日本の教育の基本のようです。そして教科書からのバーチャルで一方的な学習だけが推奨される。
昨日の朝日新聞に掲載された格差社会の連載の中で,25歳のフリーターの男性がこんなことを言っていました。「戦争に反対する人らは,僕らを救う別の方法を教えてくれない」。戦争こそが自分たちにとっての希望だと主張する人たちのひとりです。
自分の生きる道を誰かが教えてくれるはずだと思っている25歳の若者。体験を奪う子育て,教育をしていれば,そういう大人が量産されるのは,当たり前のことです。私たち大人は,やっきになってこどもたちの「生きる力」を奪っているのではないでしょうか。
月山弓張平でキャンプ
月山弓張平オートキャンプ場で2泊3日のキャンプをしてきました。今年はうちの家族だけではなく,お友達家族と一緒です。毎年やっている木のクラフトづくりや,昨年に続いて行った石跳沢の沢遊びも,お友達と一緒だと楽しさ倍増です。2日目の夕方には,月山に登山をしたおじいちゃんが帰り道で寄ってくれて一緒にテニスもしました。こどもたちはとことん遊んで,夜もぐっすりでした。
※写真をクリックすると拡大して,次々閲覧できます。
<左端より>2日目の朝食/木漏れ日/空は秋の雰囲気/テニスコートでおじいちゃんと
<左端より>石跳沢/石跳沢のサンショウウオ/冷たい雪解け水/木漏れ日
<左端より>taroのつくったロボット/ayuはカメとネコ/3日目の豪雨/車の中で片付けを待つayu
震災(復興応援)エコツアーの体験をまとめました
7月20日〜21日にかけて参加した「震災(復興応援)エコツアー」の様子を,ウェブにまとめました。自分用の記録という意味合いが強いですが,震災直後の現場に行ったSphinxが何を見て,どう感じたのか,ぜひ皆さんにも読んでいただきたいと思っています。
エコツアーの2日目には,栗原市の観光名所をまわりました。3連休にもかかわらず閑散とした観光地。震災後の地域に観光に行くことは迷惑なのではないかと思って,遠慮する人が多いのかもしれません。実際私も気が引けるものがありました。でも実際に行ってみると,観光地では地域の皆さんが元気に働いています。地元の方に「観光に来ていただくだけで復興支援になる」とおっしゃっていただいて安心しました。
今日公開された政府インターネットテレビの番組でも,地震後の風評被害について取りあげられています。番組の中で岩手おかみ会理事の林晶子さんも「皆さんにいらしていただいて,地域が活性化することが復興の手助けになる」とおっしゃっていました。
地震の後に,何か手助けをしたいと思った方はたくさんいると思います。夏休みの観光として宮城県や岩手県を選ぶことも,地域の復興への大きな手助けになるのです。日帰り旅行もよし,温泉に1泊もよし。ぜひお出でください!
- 元気です!岩手〜「岩手・宮城内陸地震」による風評被害払拭〜 こちら
- 宮城まるごと探訪 こちら
- 美味し国伊達な旅 −仙台・宮城デスティネーションキャンペーン こちら
- 岩手県観光ポータルサイト いわての旅 こちら
学習意欲はどこから生まれるか?
学習意欲は授業の中からではなく,人やものとのかかわりの中から生まれてくるものだと思います。例えば自分が「英語を勉強したい」と思うとしたら,それはどんな理由でしょう。授業がよく理解できたときですか。それともテストで悪い点を取ったとき?
最近,ある高校生が私に「将来に向けてしっかり英語を勉強したい」と話してくれました。先日行われたタイの学生との国際交流研修に参加した生徒です。英語じゃないと通じない,でも話したい。そういう体験をすると,自然と英語を勉強したいということになりますよね〜。
人とのかかわりだけでなく,ものとのかかわりから意欲がわいてくるという経験も大切です。日本科学未来館でASIMOを前にした子どもたちの目の輝き。自分もこんなロボットをつくってみたいと思えば,夏休みの工作もやりたくなるだろうし,そこから理学や工学への興味がわいてくるかもしれない。工業高校というものづくりを学ぶ学校がありますが,例えば山形県の長井工業高校は,今,ものづくりを通したキャリア教育で脚光を浴びています。
- 工業高校が地方小都市を再生する(1)〜(4)(無料登録が必要)こちら
最近教育界は「学力向上」とかまびすしいですが,その一方で文部科学省は「(子どもたちの)学習意欲は必ずしも高くない」と認めています(こちら)。学力向上のために夏休みを削るとか土曜日にも授業をするという発想では,学習意欲を高めることはできません。むしろ,より低くなるでしょう。今の日本の教育は,こどもの学習意欲を奪いながら,学力をつけさせようとしているのです。
学習意欲が高くない,「学びたい」という気持ちを持たない人が集まってきて授業を受ける。そんな授業がいい授業になるわけがないのです。学びたいという気持ちを引き出すのも授業のうち。若い頃は私もそう思っていましたが,今ではそれに懐疑的です。学びたい気持ちは,あらかじめ生徒が自分で持ってくるべきものと今は思います。ではその学びたい気持ちはどこで得られるか。それが「人やものとのかかわり」です。人やものとかかわる体験が大事。もう少しつっこむと,人やものに主体的に働きかける体験とそこからの学びが大事。
日本科学未来館と船の科学館
7日から8日にかけて,taroと2人で東京お台場にある日本科学未来館と船の科学館に行ってきました。taroとの2人旅は,2年前に幕張メッセであった「世界の巨大竜博2006」以来です。前回の旅では,お楽しみを詰め込みすぎてtaroが体調を崩してしまったので,今回はその反省に立ちお楽しみは1日1個にしました。
<1日目>日本科学未来館の「世界最大の翼竜展」
左から 日本科学未来館/ケツァルコアトルス/地球カードゲーム/ASIMO (クリックで拡大)
恐竜が大地を闊歩していた中生代に,空を支配していたのが翼竜です。飛膜と呼ばれる翼が前足から後ろ足にかけて発達し,それで自由に空を飛んでいました。中生代の陸の支配者であった恐竜と,空の支配者であった翼竜——どちらも爬虫類であり,名前に同じ「竜」の字がつきますが,翼竜は恐竜の一種ではありません。空を飛ぶという点では鳥類にも似ていますが,鳥でもありません。とはいうものの,それらととても近い生きものの仲間です。
有名なところではプテラノドンや,プテロダクティルス,ケツァルコアトルスなどが知られています。中でもケツァルコアトルスは翼を広げた大きさが10mほどにもなり,地球の歴史上最大の飛行生物と言われています。「世界最大の翼竜展」では,このケツァルコアトルスの実物大の骨格標本と生きていたときの姿の模型が展示されていました。1億年ぐらい昔の地球では,こんな生きものが空を飛んでいたんですね〜。実際に飛ぶ姿を見てみたい。展示では,ケツァルコアトルスが現代の日本を飛ぶ様子が大スクリーン上に動画で再現されていましたが,残念ながら本当の翼竜は中生代末の生物大量絶滅で恐竜と一緒に絶滅してしまいました。翼竜展ではこの他にも,世界初公開という翼竜の実物化石が多数展示されていて見応えがありました。
「世界最大の翼竜展」を堪能した後は,地球カードゲームの体験会とASIMOの実演コーナーで楽しみました。地球カードゲームというのは,地球環境問題をトレーディングカードゲームに仕立てたもので,遊びながら環境問題を学べるようになっています。体験会に参加したtaroが面白かったというので,ミュージアムショップでさっそく購入しました。ASIMOの実物にも初めて会って,走ったり踊ったりする様子を見ることができました。走るということは,両足が地面を離れて宙に浮く瞬間があるということです。その時間は人間と同じ0.08秒。ちょっと腰が低すぎますが,ちゃんと上半身も使って走っています。最初は興味がなさそうだったtaroが,身を乗り出すようにして見ているのが面白かったです。
左から 船の科学館/南極観測船「宗谷」/海水のお風呂/新幹線の待合室で振返り (クリックで拡大)
日本科学未来館の目と鼻の先に,船の科学館があります。館内の展示も見応えがありましたが,そちらは時間の都合で足早にすませ,洋上に展示してある南極観測船「宗谷」の見学に時間を割きました。「宗谷」(全長78.3m))は先日引退した「しらせ」(全長134m)より一回りも二回りも小さい船でした。72年前に進水した船で設備も古く,昭和の香りが漂っていました。海水お風呂とか,海水の水洗トイレとか,私が大学院時代に乗った白嶺丸によく似ています。白嶺丸の全長が77mですから大きさも同じくらい。
この小さい観測船で昭和基地を何往復もしたわけです。あの有名な樺太犬タロとジロも,この船で南極に行きました。昨年「しらせ」を見学したときにも感じた,大自然に挑む人間のロマンを,再び感じることができました。一方,人間のtaroのほうは,犬のタロ・ジロやロマンよりも,海水のお風呂や海水のトイレに即物的な興味を持ったようでした。
- 船の科学館 資料ガイド3 南極観測船 宗谷 こちら
こんなかんじで2日間,お台場をウロウロしていました。泊まったホテルは汐留にある三井ガーデンホテル汐留イタリア街です。部屋で iPod から流れるジャズを聞きながら,「楽しかった」と言って眠りにつくtaroを見ていると,幸せな気持ちになりました。私にとっては翼竜展や宗谷よりも,taroと出かけることそのものが一番楽しいことでした。
トラックボールのお掃除
今朝は4時半過ぎに雷の音で目が覚めました。1階に下りてきたら,ボタボタっと大粒の雨。昨晩は寝苦しい暑さでしたが,雨とともにひんやりした空気もやってきました。夏らしい雨の降り方。
7月20日の震災エコツアーから8月2日のJRCリーダー研修まで走り続けた2週間が無事終了。昨日は久しぶりに家にいました。予定のない貴重な1日に何をするか迷ったのですが,震災エコツアーのまとめの日としました。メモ帳と撮影したビデオを見ながら,BiND for WebLiFE で1つのサイトにまとめました。もうアップロードしていますが,正式公開はもう少しあとにします。
左:使用中 中:分解中 右:組み立て中
ところで,昨日はその前に,トラックボールの分解掃除もしました。4年前に購入したこのトラックボール(Kensington Expert Mouse)。最近,ときどき右上のボタンが無反応になるのです。それで意を決して分解。開けてみたらびっくりするくらいゴミだらけでした。でも構造は意外にシンプルで,掃除をして組み立て直したら右上のボタンもしっかり反応するようになりました。
青少年赤十字(JRC)リーダーシップトレーニングセンター
今年のJRCトレセンは,6月14日に起こった岩手・宮城内陸地震の影響で,会場を急きょ宮城蔵王ロイヤルホテルに移し,期間も1泊2日に縮めての実施となりました。テーマは up-to-date な「地震災害」。参加生徒は,宮城県の高校生10名とタイ国のRCY(Red Cross Youth)の学生8名の合計18名です。
私の担当は,仙台駅から宮城蔵王ロイヤルホテルまでのバスの中でのアイスブレーキング(1時間)と,ホテルの会議室でのアイスブレーキング(1時間半),そしてその後に行った地震災害をテーマにしたワークショップです。日本語+英語でのやりとりになるので,一つ一つの活動に時間がかかりますが,アイスブレーキングの活動の中で,互いの生徒の名前(ニックネーム)を覚え,打ち解ける様子が見られました。
地震災害をテーマにしたワークショップは,18名の参加者を3つの班に分けて行いました。ワークショップをやる寸前まで,タイと日本を分けて班分けするか,混合チームにするか迷っていました。初めて会ってから時間が短いので,考えながらディスカッションをする活動を,互いの母国語ではない英語でどこまでできるかと不安だったのです。しかし,アイスブレーキングでの活動の様子を見ると,かなり打ち解けた様子で英語での会話もそれなりにしていたので,混合チームで行うことにしました。
まずはじめの活動は「避難所に何かひとつだけ持って行けるとしたら,何を持っていく?」というお題で話し合い。班ごとに,一人一人の考えを発表して,その中から最も大事だと思うものをひとつ選びました。A班は「薬」,B班は「水」。面白かったのはC班で,日本の生徒とタイの生徒で意見が割れてまとまらなかったというのです。日本の生徒は「携帯電話」,タイの生徒は「IDカード」と主張したそうで,タイではIDカードがないと病院にもかかれないとのことで,お国柄の違いが出た話し合いとなりました。
次の活動は「クロスロード」という活動です。クロスロードは,阪神大震災における神戸市職員の体験を元にした,災害時の「究極の選択(決断)」をするアクティビティです。例えば,「被災から数時間。避難所には3000人が避難しているとの確かな情報が得られた。現時点で確保できた食料は2000食。以降の見通しは、今のところなし。まず、その2000食を配る?」というような問題に,各自がイエス/ノーで答えて,それについてグループで話し合うというものです。災害時に必要な情報が十分に集まらないなかで,即断即決で物事を進めていかなければならない被災地の状況を,シミュレーションで追体験できるような活動になっています。
これも,日本語の問題と英語の問題をカードにして準備して行いました。各班で話し合いをしたあと,その様子を発表してもらって全員で共有するというやり方で行いました。短い時間で通訳しながらの活動だったので2問しかできませんでしたが,タイの学生も日本の生徒も真剣に考え,議論をして,いろんなアイディアが出てきました。イエス/ノーのカードを一斉に出したときの「オーッ(Wow!)」という歓声もよかったです。生徒の感想を少し紹介します。
ワークショップでは,同じYesの答えでもなぜそう答えたのかということが違っていて,他の人の意見にも納得させられることがたくさんありました。皆違うことを考えているのだとあらためて実感しました。
各グループの意見をまとめ,グループの代表がそれを話しているとき,私はいろいろな考え方があることに気づかされました。私が思ってもみなかった考え方がたくさんあり,とても驚きました。「あ,なるほど」「そういう考え方もあるんだ」などたくさんの事を思いました。そのとき,人の意見を聞く大切さを改めて学びました。
また,この活動の後に,赤十字で災害救護に携わっている方からコメントをいただきました。「こういう問題は現場で常に起こります。その際私たちは,アンリー・デュナンならどう行動するかと考えます。」 アンリー・デュナンは,赤十字の創始者です。瞬間的に判断していかなければならない災害現場では,自分がどのような価値観をもって判断するのか,あらかじめ決めておくことが重要です。その価値基準が,赤十字の場合はアンリー・デュナンなんですね。青少年赤十字のリーダーとして,この言葉を忘れずにいてほしいと思いました。
- 震災の実体験が教材に 京大などがカードゲーム化 こちら