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 防災教育の日常化(全知P連連絡協議会)4/7

■ 研 修 会:第15回全国都道府県PTA連合会代表者連絡協議会
■ 日   時:2014年11月30日(日) 9:20〜11:50
■ 内   容:防災教育の日常化
■ 講   師:山口裕之(宮城県立光明支援学校・教諭)

学校における防災の位置づけ

【3】から続く

4 学校における防災の位置づけ

話を少し学校教育に戻しましょう。学校の中で防災というのは日陰の存在だという話をしました。ここでは学校教育の中に防災がどのように位置づけられているか紹介します。

学習指導要領の中に「防災」という項目はない

中央教育審議会

今年,中央教育審議会(中教審)で,防災教育を教科にするかどうかという話し合いが行われました。どうしてそういう話し合いになるかということなんですが,それには次のような現状があります。

防災教育は現状,教科ではないので教科書がありません。学校でどの教科でどんな内容を教えるかということは学習指導要領という文書に示されていますが,学習指導要領の中を見ても「防災」という見出しはなく,防災についてこれを教えなさいとまとまって書かれているところはありません。一方,各教科の中に防災についての学習が分散していて,学習指導要領の中に「防災にも触れること」「災害にも触れること」という表現で,防災と関連づけて教えるように指示されている内容があります。

そうなると例えば,台風の仕組みや天気については理科で学ぶと明記されているけれども,雷や竜巻からの身の守り方は,どこで教えるとも書いていない。子どもたちが学ぶかどうかは学校の裁量に任されてしまう。そういう現状があって,これではしっかり防災教育ができないだろうということで,教科にして学習時間を確保して,学習指導要領に教える内容をちゃんと書いたらどうかということになったわけです。

しかし,教科にするとなると全体の時間数を増やせないので他の教科の時間を削る必要が出てきます。また,防災を教えられる教師が少なすぎるなどいろいろ課題がありました。結局,今年の中教審では教科化は見送られたようです。

各学校で作成している学校安全計画に防災教育の計画も書かれている

学校保健安全法 第二十七条

防災が学習指導要領にはっきりとは書かれていないということであれば,いったい何に基づいて防災教育が行われているのかという疑問がでてくるかもしれません。学校保健安全法という法律にその答えがあります。この第二十七条の中に書かれている「学校における安全に関する事項についての計画」のことを学校安全計画といいます。

学校安全計画は,3つの領域について,3つの活動の計画を立てることになっています。3つの領域とは,災害安全(防災),交通安全,生活安全の3つです。3つの活動とは安全教育(子どもたちへの教育),安全管理(施設設備の管理と,子どもたちの行動の管理),そして組織活動(防災の教育や管理を進めていくための組織体制づくり)です。PTAと連携して何か防災の取組をする場合などは,最後の組織活動に入ります

本校の学校安全計画全体計画 本校の学校安全計画年間計画

左側の表が本校の学校安全計画の全体計画です(配付資料を参照)。この全体計画を作るに当たって参考にした資料が,こちらの二つです。

そして,この全体計画に基づいて,各学部の年間計画というのを作ります。それが右側の表になります(配付資料を参照)。

うちの学校は,この学校安全計画をしっかりつくったところから,学校としての防災教育が動き出しました。学校安全計画はどの学校にも必ずあるので,うちの学校にも前からありましたが,形だけなんとか整えたというレベルで,授業につながる具体的なものではありませんでした。

学校安全計画年間計画を授業につながるように具体的に作り込む

うちの学校は被災地にありますが,学校として防災に特に力を入れてやっていこうという学校ではありません。防災主任になって,学校全体でどうやって防災教育を進めていくかと考えたときに,学校安全計画を実際の指導場面とリンクさせて分かりやすくつくれば,先生たちにやってもらえるのではないかと思ったのです。また,職員会議でしっかりした計画が認められれば,年間の授業計画に組み込まれ,時間もしっかり確保されるだろうと考えました。

学校安全計画年間計画一部拡大

防災教育を行う指導場面としては,生活単元学習,朝の会,特別活動(行事)をメインに考えました。その枠の中に,何月に何を教えるか具体的に書いていきます。例えば6月の生活単元学習には「地震に備える1」という単元を設定しました。7月の朝の会では,竜巻への対応や落雷の危険といった指導内容を教えることになっています。

さきほど,防災教育の指導内容が学習指導要領に具体化されていないと言いましたが,この表に具体的な指導内容を盛り込むときに参考にした資料が,宮城県教委から出された「みやぎ学校安全基本指針」です。

みやぎ学校安全基本指針表紙 みやぎ学校安全基本指針指導内容表

「みやぎ学校安全基本指針」には,防災の授業でどんな内容をいつ教えるのかということが詳しく表にまとまっています(配付資料を参照)。中を開くとこんな表になっていて,例えば落雷についての指導内容と,それをいつ教えるかが示されています。特別支援学校では☆印のところが教えるべきところとされています。この落雷の表には(7)と書いてありますね,これを覚えておいてください。

それで,先ほどの学校安全計画の年間計画に戻ると,「落雷の危険」という指導項目の前に「1−4−7」という数字が書いてあります。この数字をたどっていくと,「みやぎ学校安全指針」の先ほどの落雷の表にたどり着けるようになっているのです。

まとめ

ここでは,学校保健安全法に基づいて,各学校で学校安全計画というものを作って,それに基づいて防災教育が行われているということをお話しました。

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5 光明支援学校における防災


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