■ 研 修 会: | 平成24年度 新任防災主任研修会(共通研修2) |
■ 日 時: | 2012年 7月12日(木) 13:10〜14:15 |
■ 内 容: | 防災管理等の実際 |
■ 講 師: | 山口裕之(宮城県立光明支援学校・教諭) |
次に点検についてです。ここでは非構造部材のことと,通学路の安全点検について触れます。
今回の震災で,学校の建物そのものが倒壊したところはありませんでした。
一方で,例えば仙台市のある小学校では,昇降口の下足箱が倒れて,3年生の女子児童が危うく下敷きになりかけたという報告があります。また,避難所となった中学校の体育館で,余震によって照明の傘が落下し,下で寝ていたこどもに危うくあたりそうだったという事例もありました。倒れてきたオルガンに足をはさまれて骨折したという話も,前回の研修でありました。
こういう下足箱や照明などは,「非構造部材」と呼ばれていて,建物の本体とは別に取り付けられているものです。他に,天井材,窓ガラス,放送機器,テレビ,本棚など,学校にはさまざまな非構造部材があります。最近の地震では,建物の倒壊による被害ではなく,こういう非構造部材による被害が目立ちます。
学校の日頃の安全点検の中で,こういう非構造部材についても,危険がないか点検していくことが必要です。その際は,各点検場所において,どのような点を確認するか,具体的に示した点検表があるといいですよね。
これは教室版ですが,特別教室や体育館など,場所によって点検項目が異なります。また,点検によって上がってきたものについては,迅速に集計を行って優先順位をつけて対応します。
文科省から「地震による落下物や転倒物から子どもたちを守るために」という冊子が出ています。この冊子の中には,学校内の非構造部材について点検のポイントがそれぞれ詳しく説明されていますので,点検項目を考える際の参考になると思います。学校には配布されていませんので,文科省のホームページからダウンロードしてください。
今,各小学校に文科省から,京都や亀岡での交通事故を受けて「通学路の安全点検」の依頼が出ているようですね。この通学路の点検をする際に,交通安全の視点に加えて「防災」の視点からも点検をしてみてはいかがでしょうか?
また,通学路の点検は子どもたちと一緒に行うのも一つの方法です。ブロック塀や自動販売機など地震の時に倒れそうなものはないか,それぞれの場所で地震に遭ったときに「落ちてこない,倒れてこない,移動してこない場所」はどこか。そういうことを子どもたちと一緒に歩きながら見て行くのもいいと思います。
津波の避難路を山道につくっているような場合,季節によっては下草刈りとか除雪が必要かもしれません。避難訓練の前に必ず点検するなど,年に何度かでも,そこを歩くような仕組みをつくることが必要でしょう。
「手引き」の要点4点目は「マニュアルを使った避難訓練を行ってマニュアルを改善する」でした。
避難訓練について311で学んだことは,それまでの避難訓練が画一的で,必ずしも実際に起こる場面の練習になっていなかったということです。形骸化した避難訓練を,実践的な避難訓練にしていく必要があります。
スクリーンに,いくつかのバリエーションを書いてみました。場面,場所や時間帯,参加者…さまざまなバリエーションが考えられます。
うちの学校で行っている初期対応訓練です。予告なしで緊急地震速報の放送を行い,すぐに「落ちてこない・倒れてこない・移動してこない」場所に身を寄せる。5分ぐらいで終わります。これを,いろんな時間帯でやることによって,いろんな場所で訓練できます。
新聞を見ていると,いろんな学校で地域住民と合同の避難訓練を行っているようですね。休日に行って,代休を取る学校もあるそうで,一人でも多くの住民に参加してもらうそういうやり方,素晴らしいなと思っています。東京の学校には,住民が避難所を開設して,避難してくる住民を受け入れる訓練を行っているところもあります。学校に教員がいる時間帯は,意外に少ないもので,学校に誰もいないときに,災害が起こる確率は低くありません
うちの学校で,放課後の時間帯に教職員だけでマニュアルに沿った避難訓練をしてみました。生徒がいる避難訓練だと生徒の指導に気を取られてしまいますが,生徒がいないと,かえっていろんなところで気づきがあって,面白いです。
うちの学校は,マニュアルそのものはシンプルに作ってあるのですが,訓練をするにあたっては,資料に載せたような2ページにわたる詳細なシナリオを作成しました。このシナリオは訓練用で,マニュアルには載せないという考え方です。シナリオに沿って何度も練習する中で,体にたたき込むためのものです。
最後に書きましたが,今までの避難訓練は教師主導で子どもたちはどちらかというと指示されたとおりに動くというものが多かったと思いますが,これからの避難訓練は,子どもたち自身が考え,行動するという要素を入れていくことが,ひとつのポイントとなっていくと思います。
今年の1月12日,お昼頃に緊急地震速報がなりました。 私はちょうど大河原のえずこホールで防災の研修に参加していました。うちの学校の高等部の生徒は,そのとき食堂で給食を食べていました。うちの食堂は1〜2階の吹き抜けになっていて天井が高いのですが,3・11の時にはその天井の一部が落下しています。翌日,学校に行って食堂の様子を聞いたら「誰一人動じないで給食を食べてたよ」って言われたんです。それを聞いたときに「やはりいろんな場面で身を守る練習をしないと,いざというときにできないんだな」と痛感しました。
緊急地震速報が鳴ったら,必ず初期対応を取る。これは鉄則です。では,緊急地震速報が鳴らないのに地震が来たときはどうでしょう。可能性としては2つあります。
可能性(その1)は,緊急地震速報が間に合わなかったが,実は大きい地震の初期微動である場合。この場合,様子を見ていると,身を守る貴重な数秒間をムダにしてしまうことになります。可能性(その2)は,小さな地震で収まる場合。これなら様子を見ていてもいいでしょうか。小さい地震で逃げないという経験を積み重ねると,こどもたちはどんな学習をするでしょう。「きっと逃げなくてもすぐ収まるだろう」と,正常化の偏見を助長しますね。そういう体験を積み重ねることで,大きな地震の時も逃げ遅れる危険が出てきてしまいます。
そうならないように,小さな地震でも必ず初期対応を取るようにしましょう。それでもし地震がすぐに収まったら,避難訓練だったと思えばいいのです。そうすることによって,普段の訓練の成果を確かめる「評価の場」にもなります。子どもたちがどこに身を隠したか,時間が許せば振り返りの時間をとって,普段の訓練が身に付いているか確認してみてはいかがでしょうか。
事前の危機管理の最後は「教職員研修」です。教職員研修の目的は,スライドに書いたこの3つでだいたいいいと思います。忙しい学校の日常の中で,防災の研修を新たに入れていくというのは簡単ではないかもしれませんが,今が一番ニーズの高い時期だと思うので,このタイミングを逃さずに年間計画にうまく位置づけることができれば,後で楽かなと思います。
それで,どんな研修が考えられるかということなんですが,まずはじめに,私たち防災主任がしっかり学ぶことが必要なんだろうと思います。このような悉皆研修に出ることはもちろん,本を読んだり,インターネットで情報を仕入れたり,お金を払って研修会に参加したり学会に出たりすると,自分の知識が深まり,人と人のネットワークを広げることができます。そうやって自分が吸収したものの中から,良いものを他の先生にも紹介していくというスタンスがいいのではないでしょうか。いくつかの研修法方や研修内容について,例をあげてみました。
体験型の研修会というのもいくつかあります。DIG(Disaster Imagination Game),HUG(Hinanjo Un-ei Game),クロスロード,津波避難スクリプト…こういう活動も,まずは防災主任自ら体験することが大切ですね。最後の消火器・消火栓の訓練だけちょっと異質ですが,これも体験型です。皆さん,学校の消火栓の蓋を開いてみたことはありますか? ホースを伸ばしてみたことは? 火事になって初めて消火栓の蓋を開けるようだと,ちょっとこわいですね。
これは,10分という短い時間でワンポイントの防災の話をするというものです。うちの学校では職員会議の最後に必ずこの時間を入れてもらっています。年度初めは防災マニュアルの説明が多かったですが,竜巻が来たら竜巻の話も入れて,というかんじで時事ネタをはさみながら行っています。10分だと話す方にも聞く方にも負担が少ないですし,毎月必ず枠を用意してもらえるので,その度に防災の意識が喚起されていいと思います。
これは,私がやってみたいと思っている研修です。教職員を小グループに分けて,それぞれにお題を出します。与えられた危機をどのように乗り越えるか,グループで話し合って模造紙にまとめ,発表します。