アギトくんは太田のStage評価ではStage II 。名前やものの用途の理解が不十分で,例えば「〜くんに持っていって」「書くものを取って」などができませんでした。それで,「クラスメイトの名前を覚える」という個別目標をつくって指導しました。
指導場面は朝の会と給食時です。朝の会では,出席調べの係として友だちの名前を言う場面を設定しました。ここはいわば「練習モード」です。だいたい慣れた頃に,「○○くんに持っていって」という指示で給食の配膳をするという場面を設定しました。これが「実践編」です。
出席調べではミニメッセージメイトを使いました。クラスメイトの顔写真を押すと,その生徒の名前が音で出てきます。彼はこのミニメッセージメイトをとても気に入り,進んでこの係の仕事を行いました。最初は相手が返事をしてくれなくてもマイペースだったのですが,ある時から返事がないと「お願いします」のボタンを押すようになりました(「おねがいします」は違う目的で入れたものだったのだが)。また,給食時の配膳はほぼ間違わないようになりました。
ついでに朝の会のアイテムをもう一つ。ステップバイステップコミュニケーターという機器があります。これは,ボタンを押すたびに次々と音声が出てくる装置です。これで朝の会の司会進行をしました。それまでは,教師が彼の傍らで「立ってください」などと声を出して援助していたのですが,これを使うことでほぼ一人で司会をつとめられるようになりました。
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