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次に,個別教育計画のおおよその流れを見ていきたいと思います。ここにあげた流れは「1年間の流れ」だと思ってください。その中で,「実態把握」から「授業の計画」までは年度始めに行うことになります。そして,1年を通して授業を実施し,年度末に評価するわけですが,実際問題として,「授業の計画」までで1学期のほとんどを費やしてしまうことが少なくありません。早くて6月初旬ぐらい。その問題は今は置いておいて,流れに行きたいと思います。 |
ライフスタイルを重視するためには,家庭や本人のライフスタイルがどうなっているか知る必要があるので,そういう実態把握を行います。例えば,余暇の指導をするときに,インドア派の家庭なのにアウトドアの余暇の指導をしても,それが家庭生活に活かされる可能性は低いでしょう。もちろん,アウトドアの余暇をしたい!という家族の希望が出ていれば別です。 具体的な手続きとしては,生活地図を書いてもらったり,1日の流れのスケジュール表を書いてもらったりして,そこからニーズをふまえながらQOLを高めるための学習内容を検討していきます。 |
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実態がある程度把握できたら,次に目標設定です。情報がたくさんあると,そこからたくさんの目標が出てきますので,まずはそれらに優先順位をつけてみます。そのときのよりどころが
という3つの理念です。そうしたら次に優先度の高いものを中心にして,長期目標と短期目標を決めます。私の場合,
ですが,一般的には長期が1年としているところが多いようですね。目標設定のときに参考になるキーワードが,トップダウン/ボトムアップアプローチと課題分析です。【→語句の説明】 |
例えば,買い物の学習で考えてみます。買い物をするからまずお金の種類を覚えて,次に指定された金額を揃えられるようになって…と,発達段階に沿ってできることを積み上げていくのがボトムアップ。それに対して,今持っているスキルを利用してとにかく買い物ができるようにしようと考えるのがトップダウンです。これらはどちらが正しく,どちらが間違っているというものではなくて,例えばお金の種類の学習は数学の時間に行い,お店の人とのやりとりの学習(トップダウン)は生活単元の中で行うというように両面からアプローチしていくことも可能です。 |
「排泄後に手を洗う」という目標を立てても,それをただ漫然と指導していては効果は少ないでしょう。排泄後の手洗いが,どんな単位行動の連鎖になっていて,その生徒がどこでつまずいているのかを,このような課題分析によって明らかにします。そうすると,重点的に指導するべきことを絞り込むことができます。 |
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一人一人の目標が設定されたら,それを束ねてクラスや学部の年間指導計画や時間割を作ります。といっても,普通の学校ではこれが年度はじめの一番最初にできてしまいます。ということは,集団の指導計画ができているところに,個別の指導計画を合わせていくという順番になってしまいます。このへんがちょっと窮屈なところですが,後々いろんな個別の目標を指導できるように考えて,全体計画を作っていくしかないでしょう。 |
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