中学生・高校生による全国防災ミーティング
パネルディスカッションより(4/5)
4つめは次世代の視点です。つまりここにいる皆さんのことです。中学生や高校生の防災活動というのを考えたときに,私はさらに2つの視点があると思っています。ひとつは,中高生という「現在の視点」,もうひとつは,10~20年後に日本を背負って立つという「世代の視点」です。
現在の視点でいうと,地域の防災を考えたときに,特に田舎で一番頼りにされているのが実は中学生です。なぜなら,日中,働き盛りの大人は都会の職場に行って不在になる。地域に居るのは老人ばかり。でも中学校に行くと,そこにたくさん若い力があるのです。
実際,今回の震災でも避難所のスタッフとして中学生たちはとってもよく働きました。中学生がそうやってがんばった避難所では,雰囲気がとても落ち着いていたと言います。こどもたちががんばると,大人もがんばれるのです。これは,こどもにしかできない技です。
高校生はどうでしょう。高校生は中学生より専門的な勉強をしますよね。それから,部活動などで高校の枠を越えたネットワークもあります。それらのネットワークや専門性を生かした活動ができます。例えば,今日ここに参加している滋賀県の彦根工業高校の皆さんは,自分の技術を生かして,いろんな町内会の人たちと防災かまどベンチというのを作っているそうです。これは,普段はベンチだけど,災害が起こったら,板を外してかまどになるというものです。
「おちゃわんプロジェクト」というのは,神戸のひまわりオジサンとタイアップして行った,仮設住宅に寄付で集まったお茶わんを無料配付する活動です。この活動には,県内のいろんな高校のJRC(青少年赤十字)の生徒が参加して,共同でボランティア活動をしました。
「ありがとうの写真展」もいいですよね~。被災者の笑顔の写真も,高校生が撮るからこうなるんだろうなと思います。
この会場の皆さんも,防災という同じ志を持って集まっている人たちですから,この2日間を共に過ごす中で,強い絆でむずばれてほしいと思います。このネットワークは今日明日で終わりではなく,この2日間が始まりです。
世代の視点というと,最近とても感心したのが,ここにも参加している女川一中の皆さんの提言です。今回の震災の爪痕を将来の防災教育のために残すかどうか,大人たちがなかなか決められないなか,女川一中の皆さんは,広島市の原爆ドームを調査した上で,「震災遺構を残していく必要がある」と提言しました。
こういう問題は,大人たちではなく,実はこどもたちが決めるべきものだと思います。だって,震災を語り継ぐべき未来の世界を生きるのは,今の大人たちではなく,子どもたちですから。
震災直後に,津波で被災したあるおばあさんがこんなことを言ってました。
「私たちの世代では復興はムリ,息子たちの世代でも難しいだろう。孫たちが頼みの綱だ。孫が宝だ。」
今,こどもとして存在している人たちが,被災地の復興の担い手になる。そして,今より安全な地域社会を作ってくれる。そういうことを被災地の大人は願っています。