空白
前沢養護学校・講演(2001/6/1)
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 のび太くんは高等部の自閉症の生徒。会話は質問に答える形で1〜2語文。自発語ほとんどなし。行事の前などに家庭でパニックを起こすようになりました。いろいろ検討した結果,不安や疑問を周囲に伝えられないのがパニックの原因とみて,短期的な対策と並行して意思表示の学習を長期的に行うことにしました。

 この写真は彼の持っているシステム手帳(ブックと呼んでいます)です。システム手帳に,彼が会話する内容を絵カードにして綴じ込んでおきます。そして彼はその絵カードを見ながら,自分の話す内容を考えて話をします。

 学校では,朝の会の中でやり取りする場面(「今日の天気は何ですか?」→外の景色とブックを見比べて,指さしと言葉で答える),帰りの会の中で一日の感想を発表する場面,昼休みに「〜したい・行きたい」と意思表示する場面など,ブックを使って意思表示する場面を設定して指導しました。

 その結果,パニックが激減するとともに,言葉がつながるようになりました。例えば帰りの会で今日の出来事を「作業,かみちぎり,はさみでちぎってがんばりました」と言えるまでになりました。また,以前はなかった自発的な会話がでてきました(注目なしで「体育館に行きます」「トイレに行きます」など)。家庭では,ブックにない会話も増え,言葉を覚えて使おうとする意欲が増している様子が見られました。

 この携帯ブックは学校だけでなく,家でも同じように使っています。お母さんはお母さんのブック,担任は担任のブックをもっていて,学校と家庭で学習環境を揃えて同じように指導しました。

 このブックは,私たちが外国で「英会話おたすけブック」を見ながら会話するようなものだと思います。ある日,彼がめずらしくブックを忘れてきました。そうしたら,いつもブックを見ながらしゃべっている「元気です」という言葉を言うときに,自分で紙切れに「げんきです」と書いてそれを見て言ったのです。ブックがなくてもある程度会話はできるけど,ブックを見ながら言うと安心して,自信を持って言うことができたのだと思います。また,「今日の天気は何ですか?」に対する返答は,ブックを見ないと間違うことがあるのですが,ブックを見て言い直すと正しく答えられました。これなどは,視覚的に支援されないと(私たちで言うと「英会話おたすけブック」と首っ引きでないと)しゃべれないような内容なのだと思います。

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