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共同研究係だより(第1号)

抽象的な課題はどうするの?

 本研究では,年度当初に学級担任が受け持ちの生徒の課題を設定することにしています.担任が設定した課題を「本年度の課題」といいます.この「本年度の課題」を立てるにあたって,共同研究係から「1年間で到達可能な具体的目標」を書いてくださいというお願いをしています.

 それに対して,いわゆる経験題材といわれる,たとえば「楽しく参加する」ことが目標となるような題材のことを考えると,生徒の課題をすべて「具体的で1年間で到達可能」な文章では書き表されないという反論がでました.その反論に答えるために書いたのが,このお便りです.係が,なぜ具体性にこだわるのかということを説明しています.



【質問】
 抽象的な課題はどうするの?

【回答の骨子】
 基本的には,係が提案している「1年間で到達可能な具体的行動目標」になるように努力してほしいと思います.しかし,学部によってはこのような具体的行動目標を立てにくいところもあるようです.現時点で具体的な課題への見通しがつかないところは,今年はとりあえず抽象的なままで課題を設定してみてください.

【詳しい回答】
 基本的には,係が提案している「1年間で到達可能な具体的行動目標」になるように努力してほしいと思います.それは例えば,

などのように書き表されます.

 なぜ「具体的な行動」にこだわるかというと,

1.具体的に記述することによって,指導の場所と内容がイメージしやすくなる.

  例えば,「コミュニケーションの確立」という目標と「あいさつを返す」,「話しかけられたら相手を見る」という目標を比べていただければ明らかだと思います.前者は私たちが生徒に望む「ねがい」がストレートに表現されているだけで,その「ねがい」をどんな指導で実現していくかという視点が欠けています.後者のように,具体的に行動で記述されているほうが,実際の指導場面でそれを意識しながら指導しやすいと考えているのです.


2.簡潔な文章で評価できる.

 抽象的な目標であるほど,評価は長い文章になる可能性があります.長い文章の評価は書くのも読むのもたいへんで,次年度に活かせる資料にならない危険性があります.目標を具体的に「行動」で記述しておけば,簡単な記述で評価できるし,場合によっては○,△,×等の記号だけで済むことになるかもしれません.


3.次年度への引継ぎがしやすい.

 抽象的な目標だけでは,具体的な指導内容を想像しにくく,次年度への引継ぎが難しくなります.具体的に書いてあると,次年度の担任は前年度の指導について容易にイメージでき,新しい目標も立てやすくなります.

 しかし,学部によってはこのような具体的行動目標を立てにくいところもあるようです.現時点で具体的な課題への見通しがつかないところは,今年はとりあえず,抽象的なままで課題を設定してみてください.年間の課題の「抽象度」については,現在のところ係と各学部で認識に差があるようです.係では,上に書いたような程度の「具体性」をもつ目標が一人につき20〜30本出てくるような状態を想定しています.その一方で,もう少し抽象的な目標が数本出てきて,さらにその下位目標として具体的なものが数本ずつ出てくると考えている学部もあります.この問題については現時点でどちらがよいか判断がつきかねますので,今年はそれぞれの学部にお任せしたいと思います.基本線は「具体的行動」で書き表された目標としますが,その具体性のレベルについては学部の実情にあわせて調整してみてください.今年度末に,年間の課題と題材の課題(およびそれらの評価)を生徒一人一人についてまとめていただきますので,それを見て,来年度に向けて年間の課題の「抽象度」を調整したいと考えています.

('96/7/4 発行)


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