MAP研究会は宮城県教育公務員弘済会の支援によって活動しています。
■ 日 程: | 2016年 1月23日(土)10時〜15時 |
■ 場 所: | 大崎生涯学習センター(パレットおおさき) |
■ 内 容: | アクティブ・ラーニングにMAPを活用しよう! |
■ 講 師: | 関田 一彦(創価大学 教授・日本協同教育学会 会長) |
■ 報 告: | Sphinx |
■ 参 加 者: | 30名 |
協同学習はグループ学習ですが,グループ学習がすべて協同学習ではないということを見てきました。同じように,プロジェクトアドベンチャーは外見的にはグループで楽しく活動しているように見えますが,集団で楽しく活動すればプロジェクトアドベンチャーと言えるかというと,そんなことはないですね。では,単なる楽しい活動ということではなく,PAをPAたらしめている要素はなんでしょう。次のように整理してみました。
- FVC(フルバリューコントラクト)に基づく参加者相互の尊重がある
- CBC(チャレンジバイチョイス)を前提とした自己挑戦が推奨される
- ビーイングを使った安全・安心な場が提供(保証)される
- ゴールに向かって活動が段階的にプログラミングされている
- 学びを生成するためのファシリテーションが介在する
- 体験学習サイクル,特に「ふりかえり」によって体験と概念の行き来の中で学びが生成されている
- 楽しい活動の中で,気づきと成長を得ることが目標になる
□プロジェクトアドベンチャージャパン
http://www.pajapan.com/
□プロジェクトアドベンチャージャパン・PAとは
http://www.pajapan.com/aboutpa/
協同学習は,人間が本来持っている「協力し合う」性質を最大限生かして一人一人の成長を引き出していこうとするものです。もっと言えば,協同することで成長すること自体が,教育の目的だと考えます。
5年前,皆さんがまさに体験された東日本大震災では,災害に際してコミュニティで支え合い,協力し合う日本人の様子に世界が驚きました。私たちは普段空気のありがたさを感じないように,私たちが世界も驚くような協同の中で生きていることも普段あまり感じることはありません。
しかし,実際に世の中を見ていくと,もう少し互いにしっかり関わり合えば解決できるのではという問題がたくさんありますよね。以前だったら話し合って協力して解決できたようなことでも,協力の一歩手前で関わりが停まってしまう。そういう雰囲気が,年を追うごとに増えているのではないですか。今まで空気のように当たり前だった協同というあり方が少しずつ薄くなっているのではないでしょうか。
だとすれば,日本の強みである協同をしっかり意識した教育を,これまで以上に進めていかなければならない。そういう視点から協同を目的にする教育を考えたときに,おそらくPAとか協同学習とか,名称は様々だけども,それらの違いはアプローチの差でしかなく,全体のねらい,最終的に育てたい価値は同じではないかと考えています。
プロジェクトアドベンチャーと協同学習は,今見たように非常に親和性の高い,共通のねらいや価値を持ったものです。次は,MAPと協同学習について見ていきましょう。
MAP事業推進のねらいとして,次の4つが掲げられています。
この中で特に2と3は,まさにアクティブ・ラーニングのコアの部分と同じです。さて,ではこれらの観点をどのように授業で実現しようとしていますか?
皆さんは,MAPの取り組みをする中で,この4つのことを実現するためにどんなことを具体的にしていますか。時間がないのでフェイスパートナーで(向かい合った人同士で),2分半で互いにやりとりしてみてください。
MAPと一つにくくってしまうと同じように見えますが,具体的に展開するときに,いろいろな方法がありますよね。いずれにしても,PAからの学びを授業に生かすとき,その単位の基本は学級集団になります。その中で,様々なサイズでグループ活動を行っていきます(ペア,班,学級全体)が,みんなで学び合っているということが大事になります。
うっかりすると,私たち活動そのもの,活動させることが目的になってしまいがちですが,やはり本来の目的に立ち返って,MAPが目指す学習者像,先ほどあげた4つの観点をしっかり踏まえて,目の前の子どもをどう導くかと考えなければならない。そしてどういう方法があるかなという話になり,その方法を選ぶときに,PAや協同学習や様々な手法の中から選べばいい。こういう子を育てたいんだ,というのがぶれてはいけないということです。
今日の研修で一番心に残ったことを一つ,相手に尋ねてみましょう。一緒に学び合う体験を通じて感じたことを互いに述べ合ってみましょう。そして,パートナーとねぎらいの言葉を交わしましょう。
時間になりましたので,私からはこれで終わりにします。協同学習について関心があれば,日本協同教育学会のホームページをご覧ください。長時間にわたって,お疲れさまでした。
■日本協同教育学会
http://www.jasce.jp
この研修会に参加されたあべたかさん(阿部隆幸・上越大学准教授)の感想がこちらにあります。ぜひ合わせてお読みください。
□あべたか's Scrapbook
感想「PAをアクティブラーニングに活かす」
http://abetaka.tumblr.com/post/137970018073/感想paをアクティフ-ラーニンク-に活かす
MAPでは,今,東日本大震災の経験を踏まえたMAPの生かし方の冊子を作成中です。関田先生の講義の後,関田先生も交えて,この冊子のプロトタイプを見ながら検討会を行いました。冊子は近日中に完成し,県内の各学校に配布される予定です。お楽しみに!
関田先生には,アクティブ・ラーニングを,宮城の方言では「MAP」または「マプティブ・ラーニング」と言っていいのではないかとおっしゃっていただき,私たちがやってきたことが間違っていなかったと心強く感じました。
アクティブ・ラーニングは時代の要請であるという話がありました。最近は社会の変化のスピードがどんどん加速していて,自分自身の生活もどんどん変わっていきます。25年前には携帯電話のない生活が当たり前でしたが,今では考えられませんね。また,世界情勢の変化が自分の生活に影響を与える場面も増えてきたと感じます(原油価格,G7,テロ事件など)。
それで思い出すのは,進化論を唱えたダーウィンが言った(とされる)「最も強い者が生き残るのではなく,最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは,変化できる者である」という言葉です。学校というのもなかなか変化しにくいシステムですが,将来の日本をまかせる人たちを預かっているのですから,社会の変化のスピードについていかなくてはいけませんね。個人的には,若いうちは社会の変化にどんどんついていくことができた気がしますが,五十路を目の前にして,最近はついて行けない自分を感じてしまいます。もう…半分あきらめ。苦笑
それはともかく,関田先生には分かりやすい講義に加えてお土産まで準備していただきまして,たいへん有意義で美味しい1日をすごすことができました。ありがとうございました。
※今回の研修報告の内容については,すべて報告者である私(Sphinx)に責任があります。