トップページへのリンク MAP研究会 1月研修

MAP研究会は宮城県教育公務員弘済会の支援によって活動しています。

■ 日   程:2016年 1月23日(土)10時〜15時
■ 場   所:大崎生涯学習センター(パレットおおさき)
■ 内   容:アクティブ・ラーニングにMAPを活用しよう!
■ 講   師:関田 一彦(創価大学 教授・日本協同教育学会 会長)
■ 報   告:Sphinx
■ 参 加 者:30名

関田一彦先生

学習指導要領の改定に向けて,文部科学省から「アクティブ・ラーニング」という言葉が聞こえてくるようになりました。私たちの取り組んでいるMAPも「後頭部凝視型」の受動的な教室を,学習者主体の能動的な学びの場に変えていこうと取り組んでいます。

今回は,日本協同教育学会の会長をされている創価大学の関田一彦教授をお招きして,アクティブ・ラーニングのとらえ方や具体的な実践方法,アクティブ・ラーニングとMAPの位置づけなどについてうかがいました。この講義そのものが,受講者に行動と思考を求めるもので,1日があっという間に終わったように感じました。

また,今回の研修会は,内容が up to date なものであったため,宮城県内はもちろん,隣県の福島県や,遠くは高知県,青森県から30名が集まりました。また,古くからの私たちの仲間である加美町長さんも忙しい中いらっしゃって一緒に学べたこともうれしいことでした。

1 アクティブ・ラーニングのとらえ方

識者の声

アクティブ・ラーニングという言葉は,一昨年度あたりから急にカタカナで出てきたもので,文部科学省が推進しているために急速に広まりました。しかし,次のような疑問の声もあります。

もともとは大学教育改革のキーワード

アクティブ・ラーニングという言葉は,元々は「主体的な学び」や「能動的な学び」などという言葉で,大学教育改革の文脈で使われてきました。平成24年8月中央教育審議会の「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」中に,アクティブ・ラーニングという言葉が明確に出てきました。その答申の「4.求められる学士課程教育の質的変換」にはこう書かれています。

 生涯にわたって学び続ける力、主体的に考える力を持った人材は、学生からみて受動的な教育の場では育成することができない。従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である。すなわち個々の学生の認知的、倫理的、社会的能力を引き出し、それを鍛えるディスカッションやディベートといった双方向の講義、演習、実験、実習や実技等を中心とした授業への転換によって、学生の主体的な学修を促す質の高い学士課程教育を進めることが求められる。学生は主体的な学修の体験を重ねてこそ、生涯学び続ける力を修得できるのである。

また,同じ答申の「用語集」には,次のように定義されています。

【アクティブ・ラーニング】教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。

この「質的転換」答申が出て,下村文科大臣(当時)が,大学だけでなく小中高校にもアクティブ・ラーニングを導入するにはどうすればいいか考えてくださいと諮問しました。そこから,初等中等教育の中にもアクティブ・ラーニングという言葉が入ってくるようになりました。いろんなアクティブ・ラーニングの定義がある中,一番ポピュラーと言われているのは京都大学の溝上慎一教授による次のようなものです。

 一方向的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表する等の活動への関与と、そこで生じる認知プロセス(*)の外化 を伴う。

(*)認知プロセスとは「知覚・記憶・言語、思考といった心的表象としての情報処理プロセス」(論理的 / 批判的 / 創造的思考、推論、判断、意思決定、問題解決など)

文部科学省の姿勢

次期学習指導要領の改定作業にかかわる文部科学省の大杉住子・教育課程課教育課程企画室長のコメントを要約すれば,次のようになります。

 いわゆるグローバル化する社会の中で求められている力(問題解決力,想像力,多様な人と協力する力)を伸ばすためには,知識伝達型の講義形式では難しい。しかし,子どもが主体的,協同的に学ぶアクティブ・ラーニングなら可能ではないか。

 アクティブ・ラーニングが目指すものは,今まで行ってきた言語活動や総合的な学習の時間で伸ばそうとしてきた力と同じものであり,「生きる力」を育むということに向かった取り組みである。

このように,アクティブ・ラーニングは,生きる力の育成に向けて今まで取り組んできたことと何ら変わらないと文部科学省は考えています。ただ,社会の変化のスピードに学校現場の実践が追いついていないかもしれない。そのようなところから,もう一段意識的に踏み込んでいけるように,「アクティブ・ラーニング」という言葉を持ってきたということが伝わってきます。また,この言葉を使うことによって,例えば言語活動を国語のこの単元で教えるなどと狭く捉えていくのではなく,学校での学び全体・教科同士の連携の中でとらえていけるようにという意図も感じられます。

アクティブ・ラーニングと子ども主体の授業

グループで振り返りをしながら頭の整理をする

今までの話の中で,アクティブ・ラーニングについてどう感じたか,思ったかを4人で語り合ってみましょう。一人一言ずつしゃべって,時間が余ったら,それについてどう思うかという話を続けてください。朝一番早く起きた人から時計回りにいきましょう。時間は3分です。

(3分後…)

自分たちが考えを深めるために,自分の中のリソースを使って話をする,聞く。そこにまた講師から新しい情報が入ってきて話が深まっていく。自分たちの問題意識が明確になると,そこに向かって意見を言っていく中で自分たちの足りないところが見えてくる。だからそれを学ぶという話になります。講師から与えられる新しい情報を,問題解決に使えるかもしれないと思って受け止めれば,それは自分のものになっていく。一方,ワークショップだから学ぶというスタンスでは,自分との関係が切れてしまっています。

アクティブ・ラーニングの成功例の共通点は,子ども自身が課題を認識していることです。今の皆さんのように,「アクティブ・ラーニングには現状こんな問題があるよね」と認識すれば,その問題を解決するために必要な知識を学ばなくてはいけないという話になる。授業があるから学ぶではなく,この問題を解決するために,この学びがつかえるかもしれない,となっていること。それが一つのポイントです。

子どもたちが課題を認識したら,次にその課題解決に必要な情報の提示がなされます。そして最後に,得た情報を知識に変えて活用する機会が提供される。こういうデザインで授業をつくっていくと,アクティブ・ラーニングとしてうまくいくことが多いでしょう。でもそれは,これだけで十分という話ではなく,例えば特別支援の必要な子どもへの働きかけなど,それぞれのクラスでアクティブ・ラーニングが成功するために必要となる要素があるでしょう。

アクティブ・ラーニングというのは,ジグソー法とか協同学習などの特定の技法ややり方のことではなく,一言で言えば『教授から学習へのパラダイム転換に際しての実践上の工夫の総称』です。「学び手が自ら学ぶ」というところへのフォーカスです。教授から学習へのパラダイムシフトと一口に言っても,具体的な実践の中には,それぞれいろんな工夫があるわけで,それらはみなアクティブ・ラーニングなのです。

アクティブ・ラーニングをしなさいと言われたときに,現場には「もうやってるじゃん」というモヤモヤが生じて困ってしまう。でも,その「やってる」の中味を,「教授から学習へのパラダイムシフト」としてやってるんだとしっかり認識して取り組むことが必要になります。

私たちは,普段の授業の中でペア学習やグループ学習をしています。ではそれは,本当に「学び手が自ら学ぶ」という方向に向かっている学習になっていますか? と問われたときに「あれ? どうかな?」となるようだと,そのアクティブ・ラーニングには「?」がついてしまいます。私たちがその質問に対して「安心してください! 一人一人が学ぶ力を伸ばしていますよ! そして成長していますよ! 手応えありますよ!」と言えるなら,それは立派なアクティブ・ラーニングです。

しかし,そうやってしっかりと自分たちの実践をとらえてやっていくところまで学校として取り組めないと,いつまでもモヤモヤが残ってしまうわけです。何か特定のやり方があるのだろうか,ペア学習が入っていればアクティブラーニングなのかな? ○○を取り入れればアクティブラーニング? そうやって形だけを取り入れて安心し,向かうべき方向性を認識できないようではダメで,やはり「何のためにしているのか」「どこに向かっているのか」が意味を持ちます。つまりそれは繰り返せば「教授から学習へのパラダイムシフト」ということです。

次のページに続く

2 協同学習

3 アクティブ・ラーニングとMAPの位置づけ


| 1ページ目 | 2ページ目 | 3ページ目 |