MAP研究会は,宮城県教育公務員弘済会の支援によって活動しています。
■ 日 時: | 2007年9月22日(土)10:00〜16:00 |
■ 場 所: | 涌谷町立涌谷中学校 |
■ 内 容: | 教育プログラム研究 — MAPを取り入れた授業づくり — |
■ 担 当: | 研究部 |
■ 報 告: | Sphinx |
13名 |
記念すべき第1回MAP研(平成12年度)の会場,涌谷中学校で,平成19年度の9月研修会が行われました。
「MAPをいかに教科に生かしていくのか?」という話を,国語を例にとって話していく。国語の指導内容には,仲間の話を聞く,尊重するなど,人間関係に関するねらいがある。結論として,(1)授業づくりと人間関係づくりは一体であり,(2)国語科の授業つくりのために,MAPの考え方や手法を生かすことができる。
MAPの要素の中で,授業に生かすことができるものには次のようなものがある。自分としては,この中で特に体験学習サイクルとマインドマップを,多くの場面で使っている。
授業の中にMAPの要素を生かしていく場合,いくつかの留意点がある。
MAPを生かすとなると,どうしてもアクティビティをするという印象が強い。特活や英語活動など,アクティビティを中心に授業を組み立てることができる科目もある一方で,科目によっては,アクティビティ以外の要素を活用することで,教科のねらいに迫れるものもある。そのようなMAPの生かし方を,ここでは「間接的な生かし方」と言うことにする。
間接的な生かし方とは,たとえば単元の構成を,体験学習サイクルを意識してつくっていくというようなものである。また,児童・生徒への視線,教師の立ち方,誤答への対応,クラスの雰囲気に対するフィードバックなどの教師の指導技術も,たいへん大事なMAPの間接的な生かし方だと,最近気づかされた。
いずれにしても,教科の中でMAPを使う目的は,あくまでもその教科のねらいを効果的に達成するためであって,教科のねらいと違ったところで,MAPを使うというのは本末転倒である。
MAPでは児童生徒同士の学び合い(協同学習)を大切にする。互いに自分の意見を言ったり,協力して課題に取り組むことは大切だ。しかし,国数理社などの内容教科の場合,その前に,一斉学習で必要な基礎基本をしっかり押さえている必要がある。取り組むべき課題について,一斉学習(教え)で事前に十分な知識が与えられて,はじめて子どもたちは自分の考えを持つことができ,他者と交流できるようになる(学び)。つまり,教えは学びに優先する。
小学校学習指導要領には,国語の目標として次のように書かれている。
国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し,伝え合う力を高めるとともに,思考力や想像力及び言語感覚を養い,国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てる。 |
この中で,「伝え合う力を高める」という部分に注目したい。「伝え合う力」の土台には,表現力と理解力がある。それらの力を高めるとともに,相手の立場や考えを尊重するというフルバリューの要素が加わって「伝え合う力」になる。
今,国語の指導内容の中で「C 読むこと」を例にとって,MAPの活用例をあげてみる。
目標 | 内容 | MAPの活用 | |
---|---|---|---|
低 | 目的に応じ,内容の中心をとらえたり段落相互の関係を考えたりしながら読むことができるようにするとともに,幅広く読書しようとする態度を育てる。 | ウ 場面の様子などについて,想像を広げながら読むこと。 | 一読後の自由な想像(マインドマップ) 読み取りの異なる部分も,その根拠や理由を話し合いながら想像豊かに思い描き,読書意欲を喚起する。 |
中 | 書かれている事柄の順序や場面の様子などに気付きながら読むことができるようにするとともに,楽しんで読書しようとする態度を育てる。 | ア いろいろな読み物に興味をもち,読むこと。 エ 読み取った内容について自分の考えをまとめ,一人一人の感じ方について違いのあることに気付くこと。 |
教科書教材の発展,友だち同士の本の紹介 自分の考え,相手との意見の違いを認め合う雰囲気作り(フルバリューコントラクト) |
高 | 目的に応じ,内容や要旨を把握しながら読むことができるようにするとともに,読書を通して考えを広げたり深めたりしようとする態度を育てる。 | オ 必要な情報を得るために,効果的な読み方を工夫すること。 | 話し合いの交流(尊重した聞き方,相手のことを考えた話し方,振り返り等) |
(省略)
自分の授業を振り返って,目標を設定する。それで授業改善をしていくことが必要。
段階 | 今までの様子 | 目指す姿 | そのために |
---|---|---|---|
授業前 | ▲何となくやらされる受け身の学習 | ○今日はこの勉強をやるはずだ。やるぞ! | ・ |
授業前 | ▲自分勝手な行動 | ○相手のことを考えた聞き方・話し方 | ・ |
授業中 | ▲先生の指示のみで学習する ▲どうしてこれをやるの? | ○何のためにこの学習をするか分かった。 | ・ |
授業中 課題把握 | ▲言われたことだけ反復,繰り返す。 | ○自分の課題に気づく。 | ・ |
授業中 練り合い | ▲一部の子どもだけで授業が進む。 | ○ぼくも活躍できた。 | ・ |
授業中 練り合い | ▲自分の考えが生かされない。 | ○生かされた。 | ・ |
授業後 | ▲今日の勉強は自分にとってどんな意味があったか分からない。 | ○勉強してよかった。明日も学校でみんなと勉強したい! | ・ |
みっちぃ | 僕の考えていることと似ている。一番気になるのは,こどもがどう変わっていったかという効果測定なんですが,カズさんはどうしていますか? |
カズさん | 効果測定は3つ。教科固有の評価基準,人間関係ではQ-U,そして三つ目は川村先生の講義で聞いたのだが,NRT(集団準拠型学力テスト)の学力評価テストにアンダーアチーバー,オーバーアチーバーというのが出てくる。自分の能力を超える力を発揮している場合(オーバーアチーバー),学級集団の仲間による底上げだと理解できる。アンダーアチーバーの場合,周囲に足を引っ張られている状態。 |
えんやす | 教えは学びに優先するという言葉。優先するという言葉のニュアンスをもう少し教えて! MAPは学びを大切にしようと思っているわけだが,それだけではダメだということだとは思うが。 |
カズさん | まず最初に教えて考えさせる授業。それができるようになって,学びあう授業に進化していく。 |
shinobu | こどもには大人の方向付けが必要なんだと思う。 |
Sphinx | 「優先する」というのは,順番として先にあるということ? まずは知識を得る。そこから自分の意見を持つこと,意見を考えることができるようになって,初めて協同学習に参加できるようになる。 |
カズさん | 結構,その考えに近い。 |
先日,カズさんから「教えは学びに優先する」という話を聞いたときはぴんとこなかったが,その後,学校でこどもたちに教えている過程で,やはりこどもたちは学ぶっていうことを,教えないとできないんだということが納得できてきた。 | |
まんちゃん | あべPAPAの意見を聞いて,そういうことがあって総合的な学習が出てきたと思った。MAPはずっと体験的な協同学習を大切にしてきているが,教えるべき部分をおろそかにしてしまってはいけない。情報資源・リソースはあなたですよという言い方をするが,教師は生徒たちの持っていない情報などをしっかり持っているわけだから,それを与えないでは授業にならない。 |
カズさん | 大村はま先生の有名な言葉がある。「戦後教育の最大の失敗は,教師が教えなくなったことだ。」 一斉学習というと一方的な教授というイメージがあるが,教師や生徒,生徒同士の豊かな関わりがある一斉学習もあると思う。 |
あべPAPA | 要するに,子供たちが授業中に脳が停止していない状態をつくればいいんだ。一斉学習の中でも,そういうふうに考え続けられるような授業にしていきたいと思うようになってきた。 |
先ほどのカズさんのお話は,MAPを教科に生かしていくというものだった。私が今考えていることは,MAPをより直接的に生かしていけないかということ。中でも野外活動の行事を,MAP活動で組み立てていけないかという話
今年度の野外活動(5年生)は,こんな日程で行われた。
1日目 | 2日目 | 3日目 | |
---|---|---|---|
午前 | ○移動(学校→自然の家) ○ベッドメーキング ○荷物整理 |
○沢登り | ○焼き板づくり |
午後 | ○ウォークラリー ○野外炊飯 ○ナイトハイク |
○沢登り(つづき) ○班活動(スタンツ準備) ○キャンプファイヤー |
○移動(自然の家→学校) |
メインの活動は2日目の「沢登り」だが,雨天時は体育館で「MAP体験」をする予定だった。つまり,MAPは雨が降ったときの代替プログラムという位置づけである。
今回の野外活動のねらいは,次のようなものであった。
|
しかし,メインの「沢登り」の活動中でさえ,このねらいに迫るような具体的な内容は見られなかったし,こどもたちもそれを意識している様子は見られなかった。
8月下旬に,PAJの方々と,ある私立中学校の野外活動を指導する機会があった。この私立中学校の2泊3日の野外活動は,すべてPA体験でつくりあげられていた。
1日目 | 2日目 | 3日目 | |
---|---|---|---|
午前 | ○移動(学校→自然の家) | ○プログラム②「PA体験」 | ○沢登り |
午後 | ○プログラム①「PA体験」 ○野外炊飯 |
○プログラム③「PA体験」 ○キャンプファイヤー |
○移動(自然の家→学校) |
150人を50人程度の3グループに分け,活動内容も屋内・ハイエレメント・ローエレメントの3つの活動にして,プログラム①〜③の中で,重ならないように順番に回していった。1つのグループはさらに14人程度の班に分かれている。それぞれのグループにつくファシリテーターは,自分のグループの活動の順番(特にどこにハイエレメントがくるか)によって,それに応じたシーケンスを考えて臨んでいた。
ねらいも,次のようなはっきりしたものであった。
・社会性の獲得の第一段階としてのクラスづくりをめざす。 ・異質の他者と削りあうのではなく,お互いに認め合える関係づくりをめざす。 ・自分の生が他者の支えのもとに成り立っているということを実感する。 ・自らの周囲へのかかわり方を見つめ直す機会とする。 |
もし,小学校でエレメントを取り入れたらどんなことができるだろうと考えた。小学校5年生の100名程度(3クラス)だったら,こんなかんじではどうだろう。
1日目 | 2日目 | 3日目 | |
---|---|---|---|
午前 | ○移動(学校→自然の家) ○ベッドメーキング ○荷物整理 |
○MAP活動 ・屋内活動 ・ローエレメント ・ハイエレメント |
○沢登り |
午後 | ○ウォークラリー ○野外炊飯 ○ナイトハイク |
○MAP活動(つづき) ○キャンプファイヤー |
○移動(自然の家→学校) |
1日目ののウォークラリーや,3日目の沢登りも,真ん中のMAP活動を意識したものにしていきたい。また,MAP活動の中で,野外炊飯やウォークラリーの活動を振り返り,3日目の沢登りにむけた目標設定をしていきたい。
問題はファシリテーターの数。担任にMAP活動の知識と体験が必要だろう。もしPAJのスタッフを招くとしたら,参加費がプラス1200円程度になる。保護者の理解が得られるかどうか未知数。
自然の家に行って「何をするか」(コンテンツレベル)ではなく,「何のためにするのか」「どう生かすか」という意識がなければ学びは深まらない。せっかくの「3日間の非日常」をもっと有効に使いたい。雨天時の活動,安全の確保,スタッフの確保,金銭的な問題など,解決するべき課題があるが,MAPを中心にした小学校の野外学習を広めていく方向性にならないかなと期待している。
自然体験学習のねらいはいろいろある。その小学校のねらいは本当に達成されたのか,どの場面でそれを学んでいたのか。それを思うと,私立中学校のねらいは明確で,手段との関連もわかりやすい。 | |
えんやす | 中学校のプログラムを見るとハイエレメントから入る班があるけど,その意図は? |
みっちぃ | 意図はチャレンジ。そこで感じたことを次に生かしていこうという考え方。ビレーは大人がやっていたが,ちゃんと教えれば中学生でもできるので,中学生がビレーをしたアクティビティもあった。 |
あだっちゃん | 昨年は小学生5年生を20名連れて行って,3日目の最後にハイエレメント。半数ぐらい飛んだかな?こどもたちは大きく変わった。 |
Sphinx | 中高生のことを考えると,そういう刺激的な体験は後ろに残しておいてほしいという気もする…。 |
このアクティビティは,職場体験学習の事前学習として,(1)身近な職業を知る,(2)グループで問題解決する体験をするという二つのねらいで行っている。今日は参加人数が少ないので4名と5名のグループにしたが,中学生だと1グループ5〜6名で行うことが多い。
<指導計画と実習用のシートはこちら>(PDFファイル)
グループに指示書を1枚だけ渡す。
みなさんの今回の仕事は,このマンションに住んでいる戸澤さんと大川さんの職業と,住んでいる階を突き止めることです。 |
説明の後,さっそく問題に挑戦しました。それぞれのメンバーには,問題を解くための断片的な情報カードが数枚配布されます。カードに書かれた情報は,口頭で伝えることはできますが,情報をそのまま書き写したり,カードを他のメンバーに見せてはいけません。互いの断片的な情報をみんなで共有しながら,課題を解いていきます。
<2班とも制限時間以内に終了。振り返り用紙の3,4,5を,それぞれ発表して共有しました。
実際の指導では,このアクティビティが1時間目にあって,次の時間は「グループで職業について調べてみよう」という流れになるとのだそうです。
名取北高等学校の職員研修で行ったプログラムから,3つの活動を紹介する。
まんちゃんが紹介した「いろいろな人が住むマンション」と同じようなつくりのアクティビティ。
養護学校の高等部の生徒用につくった,似たような活動もある。
これは,まっちゃんのプリントを参考に作ったもの。
こちらは,伊達ちゃんのプリントとタッキーのプリントを参考につくったもの。
いろいろな人が住むマンションをやったよね。いろんな職業に興味を持つという目標をもってグループで活動した。あのときの振り返りで「中年のフリーターっているのかな」という話が出たよね。今日はフリーターとかニートについて考えよう。
この人たちの共通点は?
アルバイトの人たち…そう。では,
(クイズ1)アルバイトとフリーターって何が違う? |
(クイズ2)フリーターには年齢制限があります。何歳から何歳? |
ということは中年フリーターっている?
(クイズ5)仮にフリーターのまま60歳を迎えたら,正社員との生涯年収の差は? |
フリーターはボーナスももらえないんだよね。60歳まででこんなに差がつくけど,60歳からも違うんだよ。
(クイズ6)定年後にもらえる2つのお金は? |
次の問題は,いろいろな人が住むマンションにも出てきたよね。
(クイズ8)フリーターが風邪を引いてお医者さんにかかると料金はいくら? |
ところで,人は何のために働くんだろう。
…
始業式の後に,全校生徒を相手に国語の5分間授業をした。
今年の夏は暑いね〜。
今日も暑いけど,こういう暑い日をなんと表現する?
NGワード「超暑い」「マジ暑い」「死ぬほど暑い」
これ以外の表現を考えて,ノートに書いてみて。
難しいようだから,ちょっと隣の人とペア学習をしてみようか。お約束は,まず挨拶をする,どちらかが口火を切る,相手から学んだことをノートに書く。2分ぐらいやってみましょう。
はい,ではみんなに紹介してください。
暑いって言ってもいろんな表現の仕方があるよね。「超暑い」だけじゃないよ。友達とは使うだろうけど,相手によって,言葉は変えなくちゃいけないよね。夏休みの後だからこの話をしたけど,今度は冬休み明けに「雪」についての話をしよう。では,終わります。
MAPが学校教育のいろいろな場面に生かされるものであるということを,私たちはもっと訴えていかなければならないのではないか。教師と生徒のピンポン型の学習ではなく,バレーボール型の学習。
宮城教育大学・相澤秀夫先生が推奨しているペア学習。県内のいろんなところで広まってきている。
11月22日に事例研究会で授業を公開する。体験学習サイクル,フルバリューを意識して授業をしていく。 MAPの経験が浅い先生方も,こどもたちの人間関係がうまくいって,今までの自分よりも成長していくことが大事だという認識で授業をしている。昨年度までは,松山町全体の指定で「キャリア教育」を研究していた。そこでねらっている部分は,MAPと関連が深い。
マット運動の学習の一環として,グループでマット上のシンクロナイズドスイミングを行う(新体操のイメージ)。その練習の過程を公開したい。
曲名 | ねらい | 活動 |
---|---|---|
音色や音の違いを感じ取ろう | いろんな楽器で「魔法をかけるときの音」をつくる。 | |
曲のイメージと旋律の関連を感じ取ろう | 好きなリズムや楽器を組み合わせて,曲の感じにあうリズム伴奏をつくる。 |
これらの活動をグループに分かれてチャレンジさせたい。ピアニカや笛で伴奏しながら,リズム伴奏も入れたりする。こどもたちで楽しく演奏できる。3年生からリコーダーが入ってきて,ちょっと吹けるようになってきている。歌詞を考えさせてもおもしろいかも。イメージは「3年1組のつくる『ゆかいな木きん』」。