トップページへのリンク 2006年 第6回研修会活動報告(11月)

MAP研究会は,宮城県教育公務員弘済会の支援によって活動しています。

■ 日   時: 2006年11月23日(土)9:00〜16:00
■ 場   所: 大崎市立鳴子小学校
■ 内   容: MAPミーティング2006
〜MAPを生かすってどうするの?〜
■ 担   当: 企画委員 運営委員 広報委員 研究委員
■ 報   告: Sphinx
■ 参 加 者: 17名
あだっつぁんのクラスMAPを生かした授業案の発表

今年度の目玉事業のひとつ,「MAPミーティング2006」が,大崎市立鳴子小学校を会場にして行われました。

このMAPミーティングは,2回のMAP研研修会をこのための準備のための内容に位置づけるなど,十分な準備を行った上で開催されたものです。第4回のMAP研研修会(9月)では,このMAPミーティングの内容の検討を行いました。第5回のMAP研研修会「教育プログラム研修」(10月)では,「MAPを授業に生かす」ということについて話し合いを行うとともに,鳴子小学校で行われる事例研究会の公開授業について検討を行いました。

そして,MAPミーティングの前日には,鳴子小学校で事例研究会が行われ,あだっつぁんとチョッキーが,10月のMAP研でみんなの知恵を出し合って検討した授業を公開しました。

これらを受けて,MAPミーティングでは,大きく次の4つの内容で話し合いおよび体験学習が行われました。
  1. MAPを授業で生かすには〜10月の教育プログラム研修の報告〜(かずさん,Sphinx)
  2. 鳴子小学校で行われた事例研究会の報告(あだっつぁん,チョッキー)
  3. 研究部からQ-Uアンケートの報告(まんちゃん)
  4. ワークショップ〜MAPを生かした算数・国語の授業をつくろう〜

MAPを授業に生かすって?(かずさん)

発表風景

MAPの学校教育への導入には4つの段階がある

第一段階は,【学校の人間関係づくり】の道具として。学級の指針として「ビーイング」を作成する取り組みは,かなり浸透してきた。

第二段階は,【アクティビティや考え方】を理解する段階。FVC,CBC,SMART,GRABBSSなどPAの理念や概念,そしてアクティビティを自分のものにしいく時期。いわば「道具磨き」。

第三段階は,【MAPを教科に】という段階。体験学習サイクルを意識した単元展開をしたり,マインドマップを取り入れてみたり,教科の基本やねらいをふまえた上で,MAPのエッセンスを授業に活用していく。

第四段階は,【MAPの日常化】の段階。問題解決学習とリンクさせるなど,既存の体験学習の中にもMAPの考え方や手法が生かされて,児童生徒が課題に切実感をもって取り組む学習を日常的に展開する段階。

「MAPを授業に生かす方法」の提案

これについては,10月の「教育プログラム研修」の報告を参照してください。

休み時間にも焦点を当てると…

MAPを生かすという話をすると,だいたい「学級づくり」と「授業」の話になる。しかし,それ以外の時間…つまり「休み時間」にも焦点を当てるとどうなるか。

いじめには二つのきっかけがあると言われる。一つは修学旅行の班分け,そしてもう一つが休み時間。休み時間に遊びの指導からしなければいけないのが子どもの現状だ。

うちの学校は今,校舎改築中で遊ぶ場所にも難儀することもあり,廊下の一角に「遊びのコーナー」を設置している。そこには校長先生が提供したおもちゃと,MAPの道具が置いてある(毛糸玉,フープ,パイプラインの雨どいなど)。

基本的には自由に遊ぶが,どんなことに気をつけると楽しく遊べるか?(フルバリュー)ということを考えるように仕向けている。遊び道具のそばには「遊んだ感想カード」が置いてあり,子どもたちは遊んだ後に強制でもないのにいろいろ書いてくる。書いてくるので,それに返事を書いて掲示している。掲示にも一工夫を加えていて,その内容に合わせて体験学習サイクルの絵の関連する場所にはるようにしている。カードの中身は【何で遊んだか,感想,理由,今度から】。

MAPの効能〜教育プログラム研修報告〜(Sphinx)

発表風景

次にSphinxから「MAPの効能」と題して,前回の「教育プログラム研修」の様子を報告した。基本的には,ウェブの「教育プログラム研修」の報告がベースになっているのでそちらを参照してください。

それに加えて,私がMAPについてどうとらえているのかも少しお話ししたので,それをここに再録します。

ワインの効能・お茶の効能

昔のスペインでは,処方箋に「ワイン一杯」とか書いてあったんだそうです。 ワインには薬としての効能があるんですね。実際フランス人に心臓疾患が少ないのはワインをよく飲むからという説もあります。

実は今,ワインより薬効があると注目されている飲み物があるんです。それは緑茶。 東北大学の先生の研究で分かったことですが,緑茶を飲む人には

ということが分かり,結論として緑茶には「長生き効果」があるということになったのだそうです。

これは,宮城県に住む4万人を対象に11年間研究を続けて分かったことです。 将来どんな病気になるかは人それぞれなんですが,一人一人のデータを蓄積することで特定の疾患が多かったり少なかったりということが出てくる。そうやって数多くのデータを束ねる中から,緑茶の効能が浮かび上がってくるんです。

MAPの効能

ところで,このプレゼンの題名は「MAPの効能」でした。

お茶の効能は,1人や2人を調べても分からないけど,何万人もの人を調べるとお茶の効能が見えてきました。私は,MAPも,緑茶と同じように幅広い守備範囲を持っているんだと思います。MAPにいったいどんな効能があるのか,ちょっと見ただけでは全体像をなかなかとらえきれません。でも,多くの事例を積み重ねることで,そのMAPの効能というものも見えてくるのではないかと思うのです。

前回の研修会では,KJ法を用いて「MAPで自分の授業のどこが変わったのか」というデータを一人一人が考えて出して,それを重ね合わせてみました。(→ koko.pdf)「群盲象を評す」という故事がありますが,私たちはMAPという象の全体を俯瞰することはできません。でも,一人一人の見え方を束ねていけば,きっとMAPが見えてくる。今後,この「MAPで自分の授業のどこが変わったのか」のデータを増やせば増やすほど,MAPの効能がはっきり見えてくるのではないかと思います。

MAPは生きる力への処方箋

生きる力

この図を見てください。文部科学省のウェブサイトからとってきた「生きる力」の図です。

この中で,【確かな学力 】は「知識や技能はもちろんのこと、これに加えて、学ぶ意欲や自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断 し、行動し、よりよく問題解決する資質や能力等まで含めたもの」と説明されています。

【豊かな人間性 】とは「自らを律しつつ,他人と共に協調し,他人を思いやる心や感動する心など」。

【健康・体力】は「たくましく生きるための健康や体力」だそうです。

いかがでしょう。MAPがめざしているところは,結局のところ文部科学省のいう「生きる力」に他ならないのではないでしょうか。

鳴子小学校・事例研究会の報告

6年生図工:地球アート(チョッキー)

発表風景

チョッキーから,前日の事例研究会で公開した授業について報告をいただきました。前回の「教育プログラム研修」でアドバイスされた事項がどうなったかを中心に振り返ります。「教育プログラム研修」の報告と合わせてお読みください。

題材は,風や光を生かした造形をつくるというもので,公開授業ではスズランテープを素材にして取り組みました。

何のためにするのか…例えばテーマを与えてみたら?

これについては「鳴子から宇宙にメッセージを送ろう!」というテーマを設定した。児童の積極的な取り組みが見られた。ある班は,スズランテープで宇宙から見える日本地図を作成していて,テーマをしっかり受け止めて活動している様子が見られた。

活動場所にも,工夫の余地がありそう。

外の活動も計画したが,当日は悪天候のため,残念ながら体育館での実施になった。体育館のバスケットボールのゴールや,暖房の吹き出し口の風,ステージや階段など体育館にあるものを工夫して取り入れて,大きな作品をつくった班が多かった。

光や風を生かす技法を伝える場面があるといい。

スズランテープをどう生かしていくかと考えさせる場面でマインドマップを活用した。

振り返りの工夫

振り返りは,「振り返りカード」に感想を記入した上で発表するという形態だった。

事後検討会では「振り返りの場面で,友だちの言葉を受け止めていたか?友だちに自分の言葉を伝えていたか?」という指摘をいただいた。確かに発表の場面では,友だちが発表しているのに,自分のカードを書き続ける子,よそ見をしている子がいたり,せっかくカードに書いたことを発表しない子もいた。

フルバリューの部分が抜けてしまっていたような気がする。クラスの人間関係の土台づくりの大切さを再認識した。

その後の話し合いの中から…

チョッキーの報告を受けて,メンバーからのコメントがありました。振り返りに関するものが多かったです。

みっちぃ

振り返りは,聞かせる手だてがないと,もったいないものになってしまう。

いっきゅうさん

自分でやっていて思うことは,書くことによって伝えることを阻害しているのではないかということ。書いたものを読むのでは伝えていることにはならない。書いたら見合う。その後で感想発表をさせるようにしている。

タッキー

6年生は自分の気持ちを素直に言えなくなる年頃で,自分もなかなか難しいと思ってやっている。うちのクラスでは,最初に少人数にして「Good and New」という視点を与えて話し合いの場をもつ。その時は「書くのをやめて話し合ってごらん」と言う。

その後で,メンバーチェンジをして同じことを繰り返す。そうして何度もいろんな人を相手にしゃべる中から,自分の意見に自信を持てるようになる。最初は自分の言いたいことが分からなかった子も,だんだん言いたいことが分かってくるということもある。そこまでやって,全体の前で発表させる。

5年生国語:森林のおくりもの(あだっつぁん)

発表風景

次にあだっつぁんから,前日の事例研究会で公開した授業について報告をいただきました。

教科書の「森林のおくりもの」という題材からの発展学習として,環境問題についてグループで調べてみようという内容です。授業はその1時間目で,自分が調べてみたいことをカードに書いて,グループで集まって各自のカードをKJ法で分類し,調べる活動の計画を練るというものでした。

あだっつぁんから

発表風景

このクラスの目標は「フルバリュー(そんちょう)」。そこに向けて各行事にむけてのビーイングや,クラス目標に向けてのビーイングなど,ビーイングを多く活用している。当初自分をうまく表現できない児童が多かったが,次第に壁も下がりつつあると感じている。

授業では,「もっと詳しく知りたいと思ったことは?」と投げかけ,KJ法を用いて考えをまとめさせた。もっと短い時間で終える予定だったが,分類と題名つけに予想外に時間がかかり,授業の進行が遅れてしまった。

その後の話し合いの中から…

みっちぃ

どこでMAPの要素を入れていくかというのは,バランスを考えながら決めていく必要がある。私なら,この分類の場面で交流はしないかな〜。むしろ,この後で「どう調べてどうまとめるか」というあたりに入れるような気がする。

また,一つの模造紙にクラス全員が集まっていたけど,そうするとどうしてもあぶれる子が出てしまう。場の設定に無理があったと思う。

かずさん

5年生の国語の目標の中に「要旨をとらえる」というものがある。主教材の学習でそこがしっかりできていれば,もう少しスムーズにいっただろう。

ふとちゃん

事前の予定の半分で終わってしまったのも無駄ではない。予想外の生徒の反応で,授業の進行が予定と違ってしまうのはよくあること。その後の部分で修正すればいいのではないか。あだっつぁんが,言葉を引き出すことにこだわった(その結果時間がかかった)のも,授業の中で何かが見えたからだろう。

(あだっつぁんの返事)

あそこでこだわった場面では,子どもが食いついてきた感じがしたから。

メンマ

マインドマップを活用した授業は初めて見た。一目で分かるのがすごい。来週から小学校で教育実習をするが,そこで自分もやれるだろうか?

(みんなの返事)

担当する学年による。「ウェブ図」ということで指導するのは3年生から。低学年の場合は字を書くところから難しいからねー。低学年でやる場合は,字ではなく実物をつないでいくという方法もあるよ!とにかく,来週からの教育実習,頑張って!

Q-Uアンケートの報告(まんちゃん)

発表風景

Q-Uアンケートは,クラス集団と個人のアセスメントを手軽に行うことができる心理検査です。質問は40項目で,回答に要する時間は15分程度です。今年度「MAPで中1ギャップと不登校を未然防止せよ!」というミッションを与えられ,MAPを活用しながら学年を経営していくにあたり,Q-Uアンケートを活用しました。

Q-Uアンケートは5月に行いました。その結果を受けて学年の担当教員全員で,各クラスの指導方針について検討会を行いました。この検討会は,Kー13法と呼ばれている事例研究法を取り入れて行いました。

現在は,この指導方針に基づいて指導を行っています。12月に2回目のQ-Uアンケートを実施することになっていて,5月と12月の2回の結果を比べて,その間の指導の効果を測定する予定です。

Q-Uから見えるクラスの状況

まとまりがある学級になるためには,学級に「ルール(規範)」と「リレーション(よい人間関係)」の2つの要素が同時に確立していることが必要です。

Q-U「いごこちのよいクラスにするためのアンケート(学級満足度尺度)」の結果は,ルールの確立を横軸に,リレーションの確立を縦軸にしてつくられる4象限のグラフ上に,各生徒の場所が点で示されています。大まかにはその4象限のどこにはいるかで,

のどれに属するかが示されます。

K-13法

この事例研究法は,KJ法とディスカッション等を組み合わせた,集団思考・体験学習型の事例研究法です。学級担任が問題を報告して,みんなから「あーすべきだった」「こーすべきだ」と一方的に責められるのではなく,参加者全員がよりよい解決策を我が身に置き換えて考え提案します。

参加者全員でクラスの理解と対応の検討ができるので,各クラスに関わる多くの教員間で共通理解が図れます。また,学級担任が問題を一人で抱え込むこともなくなり,職員間のフルバリューにもつながります。

Q-Uの結果と対応策

不登校予防

学級生活不満足群(特に要支援群)の生徒たちは不登校になる可能性が高いので,生徒の学校生活の様子を細かく観察する必要があります。タイミングを見計らって個別に話す機会をつくり,友人関係に問題があるならば,それへの対応も進めていきます。

<実施した対応策>

いじめの発見・予防

侵害行為認知群,または学級生活不満足群の生徒たちは,いじめ被害や悪ふざけを受けている危険性が高いので,静観せずにすぐに具体的な対策を講じることが大切です。

<実施した対応策>

学級生活満足群が多いクラス

ルールやリレーションが確立している状態なので,生徒主体の活動を多く取り入れ,教師は委任的なリーダーシップを取ることを心がけます。

<実施した対応策>

学級生活満足群と非承認群が多いクラス

評価の観点を多様化させ,生徒同士がさまざまな観点で認めあえる場を設定して,人間関係を深める対応が求められます。特に,承認得点の低い生徒に対して,認められる行動・がんばりを促す働きかけをしていく必要があります。教師の叱責・叱咤で行動させようとするのは逆効果です。

<実施した対応策>

学級全員リレーでは,各クラスとも最初のタイムをベースラインにして,目標設定をして行いました。それによって1位のクラスも2位以下のクラスも,満足感を得ることができました。また,文化祭のグループ分けも,Q−Uの結果を生かして個に応じた活躍の場面を設定しました。

学級全員リレーのように,他者と比べるのではなく,過去の自分と比べるという方法は,例えば書写の時間にも応用できます。授業のはじめに,細かく指示はしないでまず1度書かせます。それを保存しておき,指導した後にもう一度書かせて最初の作品と比べます。そうすると,その時間の学習で自分が上手くなったことを実感できます。他の人と比べる必要はないのです。

ワークショップ〜MAPを生かした授業をつくろう!

午後は,参加者が4つのグループに分かれて,MAPを生かした授業をつくるワークショップを行いました。お題は,小学6年の国語「百年前の未来予測」と小学6年の算数「速い,遅いってどんなこと?」の二つです。各グループごとに国語,算数のどちらかのお題を選び,それぞれの授業計画をつくって発表しました。

MAPを生かした授業案の発表

国語部会は2班とも,マインドマップとパネルディスカッションという構成になりました。教科書的には「百年前の未来予想」の文章を読んで内容理解をした後,学習のまとめとして「未来についての討論会を開こう」(パネルディスカッション)という流れになっています。そのまとめの学習でマインドマップを活用していくというアイディアでした。

MAPを生かした授業案の発表MAPを生かした授業案の発表

MAPを生かした授業案の発表

算数部会は,距離と時間の違う3人のデータで,誰が一番速いのかを考えるという学習の計画を立てました。一つの班は教科書の流れを生かして,実際に校庭に出て歩いたり走ったりしてデータを取って,そこから討論で距離÷時間に持っていくという計画をつくりました。もう一つの班は,その部分を100m走と3分間走の2つの例を出して話だけで済ませてしまい,さらに教科書のデータで誰が一番速いか答えも教えてしまい,その上で「○○くんが一番速いんだけど,それはどうしてか説明しましょう」という発問を出してじっくり議論させるという計画でした。

MAPを生かした授業案の発表MAPを生かした授業案の発表

やってみての感想ですが,小中高のさまざまな校種の教員がグループになって授業案をつくるというのは難しいのかと心配しましたが,実際はそれほど壁を感じることなく,楽しく取り組むことができたと思います。2時間の活動時間があっという間に過ぎていきました。

また,同じ題材の授業計画を同じ観点(MAPを活用する)でつくっているのに,グループによって違う授業計画ができあがるということも,事前にある程度予想はしていましたが,実際にそうなってみるとなかなか面白いなあと思いました。

振り返りもホットに…

というように,たいへん充実した1日となりました。会場の鳴子小学校は鳴子温泉街のど真ん中にあります。歩いて数分で滝の湯に着きます。一風呂浴びて帰ろうと滝の湯に浸かったところ,奥の湯船から聞き覚えのある声が…。温泉で暖まりながら,4人でホットにMAPミーティングの振り返りを行いました。(詳しくは情報交差点へ…)

鳴子温泉滝の湯150円です