■ 日 時: |
2006年10月14日(土)10時〜15日(日)正午 |
■ 場 所: |
国立花山青少年自然の家 |
■ 内 容: |
教育プログラム研究 |
■ 担 当: |
企画委員 研究委員 |
■ 事例発表者: |
あだっつぁん,チョッキー |
■ 報 告: |
Sphinx |
■ 参 加 者: |
9名(1日目),9名(2日目) |
今回は,PAJからはるみちゃんにも参加していただき,教育プログラム研究ということで1泊2日の研修を行いました。はるみちゃん,いつもありがとうございます!
1日目・午前の部 MAPを授業に生かすとは
午前の部では,「MAPを授業に生かす」ということについて,どういうイメージを持てばいいのかについて,考えを出し合いました。
MAPを授業に生かす方法 かずさん
最初に,かずさんから「MAPを授業に生かす」ということについて提案がありました。
<かずさんからの提案>
- 「人間力」(生きる力をさらに発展させ,社会を構成し,自立した人間として生きていく総合的な力)の向上には,「教師力」と「学校力」の向上が不可欠。その「教師力」とは,「授業力」である。また,学力向上と人間関係づくりは一体であり,そこにMAP導入の意味がある。
- MAPを教科,領域,時間等に生かす目的は,生かそうとする教科等の目標を,より効果的に達成させることにある。内容教科(国語,算数,理科,社会等)の場合は,この性格が強く出てくる。
- MAPを教科,領域,時間等に生かした場合,その効果測定はそれぞれの教科等のねらいの達成度による。
- MAP導入の評価では,技能的,体験型の学習の場合は,エンカウンターの「学級生活満足度調査」が利用できる。内容教科の場合は「授業評価表」が有効である。
- MAPの教科等への生かし方には2種類ある。直接的生かし方と間接的生かし方である。直接的生かし方では,アクティビティが直接導入でき,間接的生かし方とは,MAPの手法や考え方を生かすことである。
- 間接的生かし方では,「体験学習サイクル」と「マインドマップ」を重点的に取り上げる。
- 内容教科に「体験学習サイクル」を導入した場合,問題解決学習という形態をとる。
- 内容教科に「体験学習サイクル」を導入した場合,「基礎基本の習得」や「内部情報の蓄積」を位置づけておくこと。「学び」を実現するためには,「教え」は不可欠である。
- 「内容教科」の場合,「教え」は「学び」に優先する。
- 「体験学習サイクル」という複数の段階を想定した学習には,多くの先行財産がある。これらの学習指導理論をふまえていくことである。(例)国語(単元学習),算数・社会(問題解決学習),理科(仮説実験授業),道徳(総合単元学習)
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かずさんからの提案を受けて,討論を行いました。その討論の主な議題と概要を記します。
「MAPを授業に生かす」とは,どういうことか。
- まずMAPという概念が人によってずいぶん違い,それを生かすイメージも十人十色だ。「○○を生かす」というには,MAPは広すぎる概念ではないか。
- 「MAPを生かさなければならない」というスタンスではなく,「生かすと楽しい」「生かすとこうなる」という視点がいい。
- 「MAPは体験型学習」というところに,意識が集まりすぎてはいないか。毎日,普通に行っている授業のベースに,しっかりMAPが存在している。もうすでに,私たちの授業の中にMAPはしっかりと「生かされて」いる。
MAPを生かした授業」を,はじめてMAPを知る人にも分かるように伝えるには?
- 人間関係づくりに有効であることは周知された。次はやはり「授業」に使えるという点をアピールしていきたい。それには,やはり授業を見せていくことが必要だ。
- 「MAPは何を大切にしているか」がうまく伝わるようにしたい。
- 「MAPを学ぶと自分の授業がこう変わった!」という自分自身の変化(一つ一つの小さな変化)は,MAPを学んだ者なら必ず持っているだろう。そういうことなら伝えていけるのではないか。
やはり教師の変化だ。
- こどもたちにあずけていく方向性を大切にしたい。こどもが自分で体験学習サイクルをまわせるようになることが,生きる力であり,教育の目標だと思っている。
- 最後は,先生方の意識で決まってくる。
- やはりMAPで教師が育っていくのだ。(その先に,児童生徒の成長がある)
こんな話をしながら,
- MAPを学んで自分の授業が変わったところって,どんなところだろう。自分以外のことも知りたい。
- MAPを学んだ者に見える,授業のポイントがある。それらが指導案にうまく表現できるといいな。
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というところに,意識が収斂していきました。
1日目・午後の部 MAPを授業に生かす:その観点と実践例
美味しい昼食のあと,活動場所をオリ室に移して午後の部がスタートです!
恒例になった,はまちゃんの差し入れ。今日はなんと,コーヒーサーバーまで持ち込んでのサービスです!いつもごちそうさまです!
MAPによって自分の授業のどこが変わったか
MAPを授業で生かすとはどういうことなのかという午前の話し合いを受けて,まずはじめに自分の授業がMAPでどのように変わったのか,それぞれ付箋に書いてKJ法でまとめてみました。
<MAPによって自分の授業のどこが変わったか>
目標設定 |
- 何のためにこの授業をしているのかという目標を意識するようになった。
- 今日の授業のポイントを,文字にして明確に示すようになった。
- 目標を設定する際に,明確な目標,目的を意識するようになった。
- 何のためにやっているのかを,常に意識するようになった。
- 学習内容を絞った授業を考えるようになった。
- 目標〜取り組み〜不利帰りを,授業構成で意識する。
- 何が大切なのかを体験的に(自分の体験と結びつけて)学んでいける授業づくり。
- 少し頑張ると満点になりそうな小テストを多く取り入れるようになった。(自己達成予言という言葉を知ったのがきっかけ)
どんなニーズがあるかを把握して,わかりやすく説明するために工夫する。
- 氏名や自分の考えを大事にするようになった。
- 自分で考えること(学び方を学ぶ)思考力
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協同学習 |
- 共に学ぶ,他社から学ぶことのすばらしさに気づく,実践していく。
- 話し合い(意見交換)の場の設定→輪
図工の作品の相互評価(認め合い)の機会が多くなった。
- グループワークを授業の中で行わせる。
- 考査を返却したとき,みんなで助け合いながら正答をつくる活動をしている。
- 自分と他者を大切にする。
- 活動の約束の意識づけ(安全に,一生懸命に,公正に,楽しく)
誤答を大事にするようになった。
- お互いの認め合い。
- 職員同士の話し合いが多くなった。
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振り返り |
- 振り返りの大切さ(サイクルの重視)。
- 振り返りの場づくり。
- 生徒からの振り帰りを聞くことができるようになった。
- お互いの気持ちを共有させるようになった。
- 形式的評価をさらにフィードバックという形で考えるようになった。
- 振り返り 学びを次に生かすこと。
- 授業を受けている生徒の様子をフィードバックすることが時々ある(悪い面がみえるときだけ…)。
- 考査後に自分の授業の受け方やテスト勉強の様子を振り返り,次への目標設定をする時間を設けた。
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実態把握 |
- こどもの様子をよく見る,聞く。
- こどもの発言をじっくりと聞く姿勢。
- 個々をよく見る。その子を取り巻く環境,背景,1人ずつのそれぞれの努力の様子。
- こどもの良さや願いを授業で生かそうとする。
- 待つ姿勢。こどもの発言,行動。
- 人の発言の背景(裏側)に何があるのかを考えるようになった。
- 生徒の実態を配慮するように努めるようになった。
- 最初のあいさつと座った直後あたりで,そのときのクラスの状況というか気持ちのようなものが伝わってくるようになった。
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雰囲気 |
- 「笑い」=FUN 等があるか,考えるようになった。
- 和やかな雰囲気を大切にするようになった。笑いが大切なことを再確認した。
- 自分がどんな表情,雰囲気で授業(教室)に入っているか,意識するようになった。
- 和やかな笑いとそうでない笑い…「温かさ」の雰囲気づくり。
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児童・生徒 主体 |
- 教師主導ではなく児童主体。
- 学習を「こどもが…」という視点から考えるようになった(こどもが分かる授業のねらい)。
- 実験の時の指示事項が減り,生徒が工夫する余地を残すようになった(安全に関する指示は減らせないが)。
- こどもたちへの言葉がけ。
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過程 |
- 学習(学び,授業)は,自分の生きる力を高めていくプロセス。道具を自分のためにどう使っていくのかまで考える。
- 結果ではなく,過程を大切にする。
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教材の工夫 |
- 教材を工夫するようになった。
- アクティビティの活用。
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KJ法でまとめた結果,上の表の右列のようなカテゴリーになりました。まとめられたホワイトボードを見ながら出た意見を,下にまとめます。
- 体験学習サイクルが出てこないが,その各要素がカテゴリーとして出てくる。
- どの先生も,この中のどれかを自分の得意分野として持っているだろう。苦手分野もあるだろう。MAPを学ぶと言うことは,得意分野をさらにのばすと共に,今まであまり注意をしてこなかった部分についても向上させて,教師として幅広く能力を向上させていくこと。
- MAPを学ぶ過程で,感じ取るアンテナや,指導法の引き出しが増えていく。
事例検討会(1)小学5年国語「マザーテレサ」あだっつぁん
マザーテレサについて書かれた伝記を読み,そこからマザーテレサの生き方や考え方を読み取る。そして,読み取ったことを本のカバーづくり(絵,題名,あらすじなど)で表現するという題材。その中で,マザーテレサが貧しい人たちのために行ったことをノートにまとめ,発表するというグループ学習の授業。
MAPの授業か教科の授業か,授業のねらいはどこに?
校内の事後検討会でも,「教科のねらい」からはずれないようにしなければならないという意見をもらった。
やはり,教科の授業には,教科のしてのねらいがあり,そこをはずしては本末転倒である。教科としてのねらいを達成するために,児童の学習活動の中にMAPの手法を取り入れることができるし,教師側の授業の運び方とか児童の観察の視点などにもMAP的な視点というものがあるはず。
MAP「的な活動」を,どの場面にも盛り込まなければならないということではない。この授業の場合,グループでまとめるということが中心で,他の部分を無理にMAP「的」にしなくてもいいのではないか。グループで要点をまとめる活動を取り入れることによって,他のメンバーの考えを聞くことで自分の理解がさらに深まるなど,仲間の存在で自分の学びを深めていく効果を期待できる。その際,グループ活動で児童がフルバリューを意識できているかどうかが,教師側の授業を見る視点となっていく。
※記録者のひとりごと
授業の中で科目のねらいを達成させることはもちろんですが,私たちは同時に授業を通して人間としてのあり方も教育しているわけですから,科目のねらいとMAPの要素を生かした人間教育のねらいが共存することに,何のためらいも感じる必要はないですよね。それらは対立したり,どちらか一つしか選べないというようなものではないのですから。
MAPの考えを,指導案にどう表現し盛り込んでいくか。
指導案 |
学習過程の指導上の留意点の欄に,[M]印をつけてMAPの考えを表記した。 |
指導上の留意点とは別に,MAPの視点の欄もつくってはどうだろう。そこには,具体的な表現でMAP的な視点を書き込んでいく。その内容は,児童やクラスの実態から想定される,そのクラス・その授業ならではの視点が,いろいろ入ってくることになるだろう。
その場合,MAP的な視点というのは,「〜させる」というような表現ではなく,授業者が「〜する」というような表現にしたほうがいい。
事例検討会(2)小学6年図工「地球アート」チョッキー
身近な素材や自然環境(光,風など)を生かしながら,造形活動を楽しもうという題材。新聞紙を使ってグループで造形活動を行い,グループで活動できてよかったことや,他のグループの作品を見ながら振り返りを行うという授業。
何のためにするのか…例えばテーマを与えてみたら?
こどもたちは,グループで新聞紙で活動することの意味(目的)をどう考えていただろう。例えば,MAPの活動でよくあるようなファンタジーをつけてみたらどうだろう。あるいは「今日のテーマは光と風です!」というテーマ設定を,授業の最初にバーンと出してしまってもいいのではないか。
活動場所にも,工夫の余地がありそう。
図工室を飛び出して,風や光のある場所で活動してみたら。校内のどこに作品をつくるか,グループで探して,決めたりできるといいのではないか。
光や風を生かす技法を伝える場面があるといい。
新聞紙以外にもいろんな素材で授業が進んでいく。光と風を利用するという授業をするのだから,例えば光を通す素材をつかって,透過した光がどう見えるかとか,風を生かす造形としてどんなものがあるか(例えばモビール)など,基本的な技術を伝える,あるいは児童に気づかせる場面が必要。
振り返りの工夫
テーマがしっかりしていて,活動の目標がはっきりしていれば,振り返りも焦点が絞られた意味のあるものになるだろう。
他のグループの作品を見て,よいところのコメントを書くなど,児童の相互評価を取り入れやすい題材ではないか。
2日目 事例研究会の公開授業について
2日目は,鳴子小学校の事例研究会で発表する,二つの公開授業について,みんなで検討を加えました。
あだっつぁんとチョッキーは,前日の話し合いの結果を受けて,1日で授業案を練り直して,この日に臨みました。お二人とも,たいへんおつかれさまでした。
記録者は,家庭の事情で2日目は参加できませんでしたので,簡単ですが主な内容と写真の紹介のみとします。どうもすみません。
- 自己紹介
- ネームトス
- MAP研Beingへ「昨日の活動でよかったところ・気づき」を記入
- チョッキーの授業体験 図画工作科「地球アート」
- あだっつぁんの授業案の検討 国語科「森林のおくりもの」
- MAPミーティング2006のフレームを検討