MAP研究会は,(財)カメイ社会教育振興財団
宮城県教育公務員弘済会の支援によって活動しています。

第8回研修会活動報告

会場:二女高
報告:Sphinx

 2月24日(土),今年度最後のMAP研究会の報告です。今回はMAP研究会の会員によるビデオ実践報告とそれにもとづく討論を中心に研修を行いました。字だけで長い報告になってしまいましたが,飽きずに最後まで読んでください。

■ 参加者(名簿順)
 かあちゃん(菅原恵子さん),のり(野中映里さん),さくら(石丸八千代さん),Sphinx(山口裕之),しょう(高嶋正之さん),Japan(二本柳淳一さん),オカちゃん(岡寿さん),Sugar(佐藤博さん),わぶん(佐藤和文さん),BOB(菊地潤さん),鈴木信也さん,TOMO(関智子さん),小野寺洋征さん,コンちゃん(今野和男さん),KATMAN(難波克己さん),マンちゃん(早坂正紀さん),やわらちゃん(菅原美香さん),鈴木達夫さん,佐藤涼子さん,佐藤実千代さん,以上。 

■目次

  1. ビデオ実践報告
  2. ビデオ報告について討論会
  3. 今年度のまとめと来年度への展望
  4. 平成13年度の運営・活動について
  5. ≪番外編≫


1.ビデオ実践報告

 まず参加者の一人から実践ビデオを提供してもらい,それをみんなで通して見ました。これはある中学校の9月22日の実践です。実践者が担任するクラスの特活の時間で,PAの授業としては5回目でした。時間は50分。授業のねらいは「協力」でした。まずはその授業の様子をレポートします。

−−−以下ビデオレポート!

■ 導入でこの時間の注意点について短くコメント

■ 親指チェック
 円陣になって,参加者の心身の状態を親指チェックで確認。

■ ミラーストレッチ

■ ペアーズタグ(ふたり鬼)
 ブリーフィングでは,ファシリテーターが活動内容を説明して,「スピードに気をつけてケガをしないように」と注意しました。活動が終わって,デブリーフィングでは,ファシリテーターが「ぶつかった人は?」「混みすぎたと思う人は?」と聞いて手を挙げさせて,「じゃあどうしたらいい?」と聞きました。生徒から「もっと広くして」という意見が出て,もう一度ペアーズタグを行いました。

■ ワムサムサム
 円陣になってワムサムサムの説明をしました。あごをグイグイする説明の時に「イヤだー」という反応がありました。活動中も,楽しそうではありますが,あごグイグイのときに逃げている様子が見られました。

■ 風船トローリー
 みんなで縦一列になって,人と人の間に風船をはさみ,その風船を落とさないように移動する(もちろん手を使わずに)というアクティビティです。まず円陣になって座らせて,生徒に風船をふくらませました。
 ブリーフィングでは,ファシリテーターが「この風船は君たちの命綱です」「これから宇宙旅行に行きます。宇宙には空気がないのでこの風船の酸素が必ず必要になります」という説明をしました。
 まず最初は二人組になって,練習編です。二人の間に風船を一つはさんで,スタート→ゴールまで移動しました。次に全体を4つのグループに分けました。最初,「どのラーメンが好きですか?」(みそ/しょうゆ/塩/その他)で4つに分けようとしましたが,うまく人数がそろいませんでした。それで,急遽,サークル・ラインナップで円陣を作り,順番に「1」「2」「3」「4」と番号を言ってもらって,その番号で版を作りました。サークル・ラインナップで並ぶ順番は誕生日,そしてしゃべらないというルールを付けました。
 次に,班ごとに縦一列に並び直して目標設定をしました。ファシリテーターが「この人数で端から端まで行けるでしょうか?自分たちの班で目標を決めてください」と呼びかけ,体育館を移動しながら3種類のコースを設定して3つから選ぶように指示しました。また「風船を落としたら,先頭の人は後ろに移動する」というルールを説明しました。生徒たちは班ごとに円陣になって考えました。かなり時間がかかりましたが,なんとか目標設定ができました。
 実際に活動がはじまると,女子は互いに寄り添って落とさないようにしてますが,男子が全員後ろのほうで一人ずつ分離しています。また,落としたのを拾ってそのまま継続したり,風船を手で持つなどルールに従わない様子が見られました。

■ 風船上げ
 全員一つずつの風船をもち,それをついて上げる。全員でカバーしあって落とさないようにするというアクティビティです。ブリーフィングでファシリテーターがルールを説明して「何秒上げていられるでしょう」と問いかけました。
 全員で円陣になってスタート。あっという間に風船が落ちてしまいます。それでも風船をもう一つプラスして挑戦…。5秒で落ちてしまいました。そこで目標設定をして再挑戦。

ファシリテーター 「目標タイム,何秒にしますか?1分?30秒?
 ……じゃあ短めに30秒にしましょう」
「ようい,はじめ!」。
  今度は10秒ぐらい上げていられました。
ファシリテーター 「もう1回,30秒で」「ようい,はじめ!」
  また目標には達しませんでした。
ファシリテーター 「さて,どうしたらいいでしょう」
「では次回の授業まで作戦タイムにします」

■ ふり返り
 集合してファシリテーターから,はじめのルール:

についてどうだったかと問いかけがあり,それを帰りの会で聞きますという連絡をしてすべての活動が終了しました。

2.ビデオ報告について討論会

 まず実践者がビデオを学習資料として公開してくれたことに,みんなで感謝しました。討論会では最初に実践者から自評がありました。

 次に何人かの参加者から質問や意見が出ました。が,それを全部含めた形でKATから長〜いコメントをいただいたので,質疑は省略してKATからのアドバイスを書きます。多岐に渡っていろんなアドバイスをいただきましたが,私の理解力の関係でうまくまとめ切れていないところが多々あります。だいぶ厳しい指摘が随所にありますが,それは私たちMAP研究会のレベルがKATの期待に沿っていないことを意味するのだと思います。この1年の私たちの研修をふり返り,来年度への決意を新たにする意味でも,このビデオ討論会は非常に意味がありました。おっと,私の感想は置いておいて,さっそくKATのアドバイスを書くことにします。

KATのアドバイス

(1)グループの状況をしっかり読もう。−−−引いている人を忘れずに!
(2)授業のねらいにそったアクティビティシークエンスをつくろう。
(3)動きと環境−−−場所の使い方を考えよう。
(4)情報の提示のしかたを工夫しよう。
(5)PAは日常生活からはじまって日常生活に帰っていくもの。
(6)教師もELC

(1)グループの状況をしっかり読もう−−−引いている人を忘れずに!

 今回の授業はチャレンジレベルが高すぎたために,みんなついてこれなかった。もっとスモールステップにして成功体験を積み上げるようにするべきだ。

GRABBSSを見る

- Goals:目標
- Readiness:準備
- Affect:感情
- Behavior:態度
- Body:身体
- Setting:背景
- Stage of Development:グループの発達段階

グループを読む「目」と「耳」と「心」

 「協力」というテーマだったけれども,生徒の動きの中にそれが見えていただろうか?「目」と「耳」と「心(ハート)」でグループの一人一人の状況を読みとろう。

 生徒の活動の様子を見ていると「やりたくない」という気持ちがたくさん見えていた。自分の気持ちを正直に体で表現している。それが見えたらそこでやめよう。もっと前にやることが別にある。

 ミラーストレッチで手を合わせることに躊躇している生徒がいた。近距離で親しくない人と対面するのは怖いということ。そのときどうする?
「どうしてさわれないの?」
とわざとつっこんでみよう。「はずかしい」「てれくさい」などの反応がある。
「そうだねー。もしかしたらトイレに入ったと手を洗っていない人がいるかもしれないから,今日は手を合わせないミラーストレッチにしようか」
などと言って,手をくっつけないミラーストレッチに持っていくという方法もある。

 ミラーストレッチで他者との関わり合いや接近が上手にできていないことが明らかになったのに,次にペアーズタグや風船トローリーを行った。ペアーズタグは二人の関係をつくっていくアクティビティ。風船トローリーはミラーストレッチよりさらに接近をともなうアクティビティ。どちらもグループの状況に合っていない。

 関わり合いが苦手なのに接近させてしまったという意味で,ワムサムサムを入れたのも失敗。ディインヒビタイザーではなく「アイス・メイキング」になってなかったかな?雰囲気を変えたいなら,例えば
「知ってる?最近はやってるトルコの言葉」
「これを知ってるとトルコに行ったときに役に立つんだよ」

とに強引にこっちの世界に引きずり込む前ふりが必要。やってみて失敗だと思ったら「タイムアウト!」と言ってワムサムサムを中断する。そしてみんなを離すことを考える。
「じゃあ別なことをしよう。自分がこの体育館の中で行きたい場所に行ってみて」
「いい?さあ行ってみよう」(ファシリテーターが最初に動く)

そうすると「あ〜この子となら関われるわけね」と分かる。日本地図でもいい。
「じゃあ日本のどこに行きたいかやってみよう。そこに行って何をするかを,その場でジェスチャーで表してみよう」
こんな感じで全員を離しておいて,また集める。

 風船上げもかかわる気持ちがないのでうまくいかない。せめて風船トローリーの班ごとに,風船をつきながらここまで移動しようという程度の設定があるべき。あるいは,数名の成功体験から人数を増やしていくなど,スモールステップで成功体験を積み上げながらレベルを上げていくようにするべきだった。

先生と教師のインタラクションを逃さない

「風船がわれたら怖い人いる?」
などと聞いてみたり,タグの説明の時
「ちょっと二人来てね」
と誘っていっしょにやってもらうなどしながら,少しずつ味方を増やして生徒を巻き込んでいく。
 また,感想などを聞かずに進めているためにインタラクションがない。
「脈どう?」「気分どう?」「疲れた?」
などどんどん聞いてみよう。聞かれることで学習者は自分で自分のことをふり返るきっかけになる。

(2)授業のねらいにそったアクティビティシークエンスをつくろう

 達成した感じ(成功体験)がないままアクティビティだけが淡々と進んで終わってしまった。ペアーズタグ→ワムサムサム→風船トローリー→風船上げ。アクティビティの数が多すぎる(50分なら3つが限度)。授業のねらい「協力」を達成させるためのシークエンスを考えよう。

ねらいを「感情」「身体」「認識(理解)」という視点から考える

  1. 感情
  2. 身体
  3. 認識(理解)

 このアクティビティは授業のねらいにどう関わるのか,学習者にはこのアクティビティで何を感じてほしいのか,「感情」「身体」「認識(理解)」という3つの視点から考える。
 例えば今回の風船トローリーで,学習者は何を学んだだろう。

  1. 感情:他者と接近するのはイヤだ/怖い
  2. 身体:他者と接近すると緊張して硬くなる。
  3. 認識(理解):異性とはいっしょに活動できない
もしかしたら,こういう事だったかもしれない。
 本来,風船トローリーは,リーダーの役割について考えさせてくれるものだ。先頭のリーダーが後ろを引っ張ろうとしてもうまくいかない。後ろに押してくれる人がいて,リーダーはそれを押さえる役になると上手に前に進めるようになる。これは現実の世界に置きかえて考えることができる。

いきなり路上教習はしない(実態に合わせて)

 ペアーズタグを行う前に安全な動き方のチェックが必要だ。面と向かってきたときは避けるというアクティビティを行ってからペアーズタグへ。今回は,自動車学校で学びはじめた人がいきなり路上に飛び出してしまったような感じ。
 また,ワムサムサムの振り付けは「あごをグイグイ」である必要は全くない。接近が苦手な集団ならそれに合わせて振り付けを変えよう。例えば「服をつまむ」という動作でかまわない。

アカデミック・ラーニング・タイム

 アカデミック・ラーニング・タイム(実際に学習者がねらいに沿って活動している時間)はどれくらいか考える。50分中の1/3〜1/5程度かもしれない。その時間でねらいを達成させなければならない。今回は風船トローリーの班編制やゴール設定で時間を使いすぎ,みんなやる気をなくして座ってしまった。また目標はファシリテーターが設定するのではなく,学習者に決めさせる方がよい。

(3)動きと環境−−−場所の使い方を考えよう

 PAは輪で活動する。自分の半分は中を向いていて,仲間とかかわろうとする自分(顔はこっちに向いている)。残りの半分はプライベートな自分(仲間には見せない)。一人一人を認めるということは,前を向いてかかわろうという部分を認めるということ。

(4)情報の提示のしかたを工夫しよう

パフォーマンスの工夫

 ルール(フルバリューコントラクト)のメモを出してそれを読むよりも,例えば紙芝居にしてみたらいい。
 また風船トローリーの前の班分けでもたついてしまったが,単純に4グループに分けたいなら風船を4色にしておけばよい。

授業のねらいを伝える努力

 学習者が自分で何をしているか分かっているかどうかに注意を払うこと。

 今回は授業のねらいである「協力」という言葉を,活動中にまったく使っていない。もっと授業のねらいを伝える努力をしよう。そして活動後,デブリーフィングで「協力」をテーマにした話し合いを持つ。今までの「協力」の姿は?など。そしてファシリテーターが見えた「協力」を学習者に伝えてあげる。
 また,鬼ごっこをしたあとでハーハーしてるときは人の話を聞きやすい。より集中して聞いてもらうためにはそういうタイミングを活用する。

(5)PAは日常生活からはじまって日常生活に帰っていくもの

ニーズは日常生活の中に

 「協力」というテーマも,普段からグループごとに協力する学習場面が他の学習の中で行われていなければ,「協力」を高めていこうという学習ニーズは生まれない。このクラスの「協力」ってみんなにどう見えている?(目),どんなことが聞こえている?(耳),どんなふうな感じ?(心)というところからニーズを拾っていくのもよい。
 このクラスにどうかかわって,どんなクラスにしたいのかという目標設定が上にないと,そこにいるニーズがでてこない。「1日のうちの○%という長い時間をみんなはこのクラスで過ごしているんだよね。その時間をどうやって過ごしたい?楽しく?つまらなく?」クラスに参加できない人がいる場合は,その辺から確認していく。

日常と非日常のブレンド

 風船やフラフープなど,普段の学習で使っていない物を利用するのもいいし,あえて普段の学習で使っている物を利用してもよい。例えば風船の代わりにバレーボールやバスケットボールを使ってみるとどうなるだろう?

(6)教師もELC(体験学習サイクル)がまわっている

 PAは指導者である教師にとっても一つの体験学習。だから,体験学習のサイクルが自分の中でもまわっているはず。

3.今年度のまとめと来年度への展望

 平成12年度のMAP研究会を締めくくるにあたって,今年度の活動のふり返りと,これから学んでいきたいことを,各自が黒板に書いてみました。

●今年度の振り返り●
  • 実践に活かせた(アクティビティの研修、理論研修により)
  • もっとビデオ研修をしたかった。(KATがいるとき)
  • 源流の森でのハイエレメント体験でPAに対する理解が深まった。
  • しらかし台中学校で実際にやってみて、自分に必要なこと(足りない部分)が見えてきた。
  • 体験会(出前PA)と学級づくり(変容)のためのPAとは根本的に違うと思った。
  • 試行の場として今一つ機能しなかった。
●これから学びたいこと●
ファシリテーションプログラミング
知識面
  • グループを読めるようになるにはどうするか?
  • 言葉の使い方、伝え方、引き出し方
  • ゲーム分析(このゲームで何を学ばせるか)
  • 1クラス40名をどうファシリテートするか。
  • グループダイナミクスの本を何冊か読んだが、実際に使おうとすると難しい。知識と実践をいかに結びつけるか。
  • ゲーム性の維持
  • ファンタジーの作り方と意味
  • 創造性と発想をどうつくるか
  • 図書情報と参考図書
バリエーション/応用
分類外
  • アクティビティをもっと知りたい。
  • そのねらいとするものも含めて
  • 知るだけでなく実際に体験する
  • 総合学習とどうからめるか
  • メンバーの整理が必要(1年間不参加の人は削除するとか)。
  • これからマップが全県導入されるということだが、その具体的なイメージは?

インターネット上の情報

 図書情報と参考図書の件に関連して,KATからアドバイスを受けました。インターネットで次の単語で検索してみましょう。いろんな情報を得ることができるそうです(英語ですが)。

私としては今のところ英語は勘弁してというかんじなので,とりあえず日本語で「体験教育」とか「冒険教育」とかを検索してみました。そしたら日本語でもけっこう引っかかります。みなさんもぜひやってみてください。

おすすめの検索サイト
http://www.google.com/intl/ja/

宿題!!

 また,仙台青年の家で行われた第2回研修会で,「ファシリテーターとして環境を作る」というテーマでブレインストーミングをしたのですが,そのときに出た意見をまとめたプリントが配られました(第2回研修会・報告を参照)。これを次回までに読んで,自分なりに加筆してくることを宿題にしました。

今月のおすすめ図書

『進化する高校・深化する学び』

−−−総合的(ホリスティック)な知を育む松高の実践−−−

  • 菊地栄治編
  • 学事出版

4.平成13年度の運営・活動について

 事務局から,資料に基づいて来年度の研修計画・予算案等の説明があり,了承されました。どんな内容だったかは,ここまで書いてきて疲れてしまったので省略します。来年度の1回目の研修会で,同じ資料が出ることと思いますので,すみませんがウェブサイトでの公開はそのときということにします。なお,来年度の第1回の研修会は,5月12日(土)に行われる予定です。場所は未定となっています。

≪番外編≫

 昼の部が終了したあと,夕方からTOMOを送る会が行われました。なんとTOMOは,今年度いっぱいで宮城県を去ることになったのです。これからもいろいろ教えていただきたいと思っていたところで,たいへん残念なニュースでした。でも,送る会では,TOMOへの記念品贈呈などをふくめ,とても楽しい時間を過ごすことができました。TOMOさん,1年間ホントにホントにありがとうございました。(写真を撮ればよかった〜!)


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