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Sphinxです。
学力向上とMAP,皆さんの中ではどうつながっていますか?
学力向上とMAPは接点がない?
いやいや,MAPを積極的に取り入れている人なら,学力向上にMAPは有効である…と考える人が多いのではないでしょうか。でも「その根拠は?」と問われると,ちょっと答えるのが難しい…。
先ほど,フィンランド教育についての本を1冊読み終えたのですが,読みながら感じたことは,学力向上にMAPは有効であるということの具体的な根拠が,このフィンランド教育ではないかということです。MAPが目指しているところが,この国の教育に具現化されていると感じます。
フィンランドはPISAの学力状況調査で世界一と認められた国です。その教育の特徴を短い文で説明するのは難しいですが,あえて書けば「平等と個別化」です。クラスは習熟度別ではなく,いろんな学力の生徒による少人数クラスです。授業は後頭部凝視型ではなく,数人のグループによる「協同学習」が基本。個別学習もあります。選別のためのテストはありません。学習内容は生徒と教師が相談して決めて,評価も生徒が自分自身で行います。クラスのルールも自分たちで決めます。少し本から引用します。
> 新学期が始まると,「クラスの約束事」をクラス全員で決め,署名をしたりして,公式の文書として作成する。その約束事の中に,「クラスの居心地をよくする」(…略…)「お互いを助けてあげる」などがあって,その関連で自分は何をするか,具体的に生徒と教師が約束事を決めるようである。
とのことです。私たちが行っているビーイングそのものですよね。
学力向上というときに,そもそも「学力って何?」というところからズレることも多いですが,例えば学力を大学進学率とかテストの結果とか,そういう視点でしか考えられない人は,MAPが学力向上に有効だといわれても,まったく理解できないでしょう。
しかし宮城県学力向上推進プログラム(宮城県教育委員会)では,「学力」を文部科学省のいう「確かな学力」と捉え「知識や技能はもちろんのこと,これに加えて,学ぶ意欲や自分で課題を見つけ,自らが学び,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力等まで含めたもの」としています。この学力観の後半部分「学ぶ意欲や自分で課題を見つけ,自らが学び,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力」の育成は,まさにMAPの得意分野ではないでしょうか。
フィンランドでは,学力を単なる「知識量」とはとらえていません。むしろその知識を社会の中で実際に生かせるかどうか(コンピテンシー)を「学力」としています。そしてそれを「協同学習」で伸ばしていこうとしています。その結果が,PISAの学力状況調査で世界一です。
日本は今,教育改革と騒がれていますが,その改革の方向性はフィンランドとは180度逆向きです。総合的な学習の時間を批判し,土曜日まで後頭部凝視型の授業を受けさせて,「学ぶ意欲」や「自己教育力」を削いでいこうとしているように見えます。フィンランドではテストがなくても生徒たちはよく学びます。日本の生徒たちはテストがあっても「学ぶ意欲」が低いです。これはそれぞれの社会が学力をどうとらえているかと関連があります。日本の教育改革を唱える人の「学力観」は,世界で認識されつつある新しい「学力観」とはかなりずれている(周回遅れぐらい遅れている)ようです。
文部科学省のいう「確かな学力」は,それに比してかなりいい線をいってる(世界標準の学力観に近い)と思うのですが,その中にある「学ぶ意欲や自分で課題を見つけ,自らが学び,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力」を生徒に身につけさせるためのやり方として,MAPは適しているし,その力を持っていると私は強く思います。だから,学力向上にMAPは有効だと思うのです。
ちなみに,今回読んだ本はこれです。
競争やめたら学力世界一 ―フィンランド教育の成功―
福田誠治(朝日新聞社)
ついでに,この本の次に読み始めたのがこれです。
データが語るB 家庭・地域の課題
団らん・しつけ・地域の力を徹底検証
河村茂雄(図書文化)
これらの2冊の本の著者が,いずれも都留文科大学の教授というのは偶然でしょうか。それとも都留文科大学にはそのような文化があるのでしょうか。
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