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日曜地学の会「秋保鉱山」

秋保鉱山での採集風景
採集風景('96/9/29)

 仙台市の奥新川にある「秋保鉱山跡」で,1996年9月29日(日)に鉱物の採集会が行なわれました.参加者は,総勢約110名.小学生から80歳を越したおじいさんまで,老若男女みんなで楽しい1日を過ごしました.
 このページでは,秋保鉱山の概略的な説明と当日の採集会の様子を,数枚の写真をまじえてお伝えします.

【地形図】1:50,000「川崎」,1:25,000「作並」


目次

  1. 秋保鉱山の説明
  2. 秋保鉱山で採集できる鉱物
  3. 採集会の様子


1.秋保鉱山の説明

【鉱山の歴史】

 古くは「新川鉱山」として伊達藩時代に開山されたと言われる銅の鉱山です.「秋保鉱山」としての開発は,大正初期に始まりました.往時の売鉱実績としては,昭和15〜24年に精鉱1,560t,銅品位12〜13%を搬出.また,昭和29年から35年までの7年間に,銀98kg,銅77tを生産しました.しかし,市況価格の低迷などから,昭和36年9月末日をもって閉山してしまいました.

【鉱床の概略】

 秋保鉱床は,四の沢層のプロピライト(熱水変質した緑色の安山岩)や同じく緑色の凝灰岩の中の割れ目に生成した鉱脈鉱床です(鉱脈鉱床については後述).岩石中の割れ目の中に,黄銅鉱・方鉛鉱・閃亜鉛鉱などの鉱物が生成しています.できた時代については,データがないので正確なところはわからないのですが,周辺の同じ仲間の鉱床の研究から,数百万年前であると考えていいでしょう.ただし,この場合の「数」とは5〜10ぐらいと思ってください.

【周辺の地質】

 この地域は奥羽山脈のどまんなかで,グリーンタフという緑色の岩石が厚く堆積しているのが特徴です.土台となっている岩石は,中生代にできた「花こう閃緑岩」です.これらの岩石は,四の沢のハイキングコースを登る途中,足もとの石ころを探すと容易に見つけることができます.
 「花こう閃緑岩」は仙台市内で見られる最も古い岩石で,その上に「四の沢層」「奥新川層」「荒沢層」というグリーンタフ層が堆積しています.グリーンタフは緑色の凝灰岩です.海底に堆積した火山灰が火山活動による熱水変質を受けて,有色鉱物が緑泥石という緑色の粘土鉱物に変わってしまったためにこのような色になったのもです.グリーンタフは,かつてこの地域が海底だったことと,そこで激しい火山活動が起こっていたことを教えてくれます.

<花こう閃緑岩>
 約1億年前に,地下でゆっくり冷えてできた深成岩.

<四の沢層>
 模式地は仙台市奥新川の南沢およびその支流の四の沢,仙台西方の奥羽山地中軸部に分布.層理の発達したプロピライト質砂質凝灰岩(下部)とプロピライト質凝灰角れき岩からなり,変朽安山岩溶岩をはさむ.熱水変質作用・鉱化作用をこうむり,緑色である.白亜紀花こう岩類を不整合でおおう.層厚260m.

<奥新川層>
 模式地は仙台市奥新川付近の南沢沿い.仙台西方の奥羽山地に広く分布.おもに酸性の細粒〜中粒凝灰岩からなり,酸性溶岩・凝灰質砂岩・黒色泥岩などをレンズ状にはさむ.典型的なグリーンタフ相を呈し,特徴的な岩相である.四の沢層に整合にかさなる.層厚約500m.

<荒沢層>
 模式地は仙台市奥新川の荒沢.船形山南麓に分布.おもに軽石質凝灰岩・凝灰角れき岩などの酸性火砕岩からなり,酸性溶岩・砂質凝灰岩・凝灰質砂岩・シルト岩などをはさむ.淡緑色〜緑色で軽石は緑泥石化している.上部の砂質凝灰岩は浅海生貝化石を含む.奥新川層に整合にかさなる.層厚約1,000m.


2.秋保鉱山で採集できる鉱物

どんな石に隠れているか?


色を手がかりに鉱物の名前を調べよう

★黄金色…【黄銅鉱】または【黄鉄鉱】
 どちらも真鍮色だが,黄鉄鉱のほうが白っぽくて銀色に近く,逆に黄銅鉱は黄色みが強い.黄鉄鉱は結晶しやすい鉱物で,その形は立方体(サイコロ型)や五角十二面体が多い.立方体の場合,各面に細かい平行線(条線)が見られる場合がある.ここの結晶は小さいので,ルーペを使ってよく観察しよう.一方,黄銅鉱は多面体よりはべたっとしたかんじ(塊状)のものが多い.黄銅鉱は変色しやすく,大気中に長くさらされると表面が青色〜紫色,あるいは黒色になる.変色が疑われる場合は,すこし欠いて新鮮な部分を観察しよう.

★緑色…【孔雀石】
 濃い緑から白が混ざったパステル調の緑まで,色調が変化する.緑色のグラデーションが見られれば間違いなく孔雀石であるが,そんなに立派なものは多分出てこない.塩酸で泡が発生する.

★黒・銀色の粒…【閃亜鉛鉱】または【方鉛鉱】
 小さい粒の場合,どちらも銀色に見える.ルーペを使って観察しよう.方鉛鉱の色は鉛灰色.直角に四角く四角く欠けていくのが特徴(へき開).鉛の鉱物なので,かなり重く感じる.一方,閃亜鉛鉱の色は鉄の含有量が増すほど黒色になるが,鉄の含有量が少ないものは黄褐色で透明である.全体的には黒くても,一部分が黄褐色になっているものもあるので,よく見てみよう.斜め方向にすじ(へき開)が入ることがある.

★透明・白色…【石英(水晶)】,【方解石】,【重晶石】
 石英と方解石は,一見見分けにくい.ハンマーのとがったほうでひっかいてみて,傷が付けば方解石,つかなければ石英(水晶)である.割った面が平らになったら方解石か重晶石.塩酸をかけて激しく発泡するのは方解石.重晶石は,ひし形で板状の結晶であることが多い.ハンマーで傷が付く.重いので,振ってみるとすぐにわかる.重晶石はほとんど取れない.


3.採集会の様子

(1)概要

 日 時:1996年9月29日(日) 10:20〜17:18
集合場所:JR仙山線奥新川駅前(現地集合・現地解散)
 天 気:晴れ
 コース:仙台市奥新川の四の沢から三の沢にかけて

(2)活動の様子

 昨年とはうって変わってさわやかな秋晴れと暖かい陽光の中,今年も日曜地学の会「秋保鉱山」編が行なわれました.10時15分に奥新川駅に着いた電車から降りてきた参加者は,総勢110名.予想以上の人出で,用意したパンフレットはまたたくまに足りなくなってしまいました.
 駅前で簡単なあいさつと日程説明だけをして,そそくさと出発.駅前から遊歩道の入口までの数mの間に,秋保鉱山で取ることのできる鉱物を並べて,歩きながら見てもらいました.
 四の沢から急な山道を登り,第一の滝に到着.昨年と同様に,かつてここに備えつけられていた梯子は完全に壊れて,使えない状態です.ここですかさず山大3年の橋本君に運んでもらった脚立を立て掛けます.滝の水で脚をぬらし,滑りやすい岩の斜面に苦労しながらも,全員無事に滝を乗り越えました.第二の滝も乗り越えてしばらく歩き,やっと採集場所である第一のズリ山に到着.10時45分に出発してズリ山に着いたのが12時過ぎでしたから,ハイキングというには十分すぎる運動量です.皆さん汗だくでした.
 第一の滝を越えたところで一度休憩を入れましたが,それでも採集場所につく時間が早い人と遅い人で20分以上ずれていました.採集場所の到着時間が予定より遅れていたこともあって,説明の時間を取ることもできずに,採集&昼食になだれ込むことになりました(まあ,こうなることは事前にほぼ予想できた).

 説明ができない代わりに,阿子島先生がその場で採った鉱石を新聞紙の上に並べて,即席の「標本セット」を作ってくれました.重いサンプルを山の上まで運び揚げる元気はなかったので,実際に標本を見ながら採ってもらうことは考えていなかったのですが,その場でサンプルを調達してしまうという阿子島先生の機転の効いた仕事ぶりにはたいへん感動しました.参加者の皆さんは,自分で採った鉱石を「即席・標本セット」と見比べて,「これは黄銅鉱だ」とか「閃亜鉛鉱かな?方鉛鉱かな?」なんて会話していました.

標本の説明をする阿子島先生

 今回,私は採集をしないで(秋保鉱山の石は家にいっぱいありますから…),参加者の皆さんの質問に答えるほかは,皆さんの採集ぶりを見学したり,皆さんとお話をしたりしていました.いろいろ見聞きできて,楽しかったです.

閃亜鉛鉱が見つかった!

 私にとっての「日曜地学の会」の一番の楽しみは,鉱物を採ることよりも,参加者の皆さんの笑顔をみることです.皆さんが,一生懸命鉱物を探す姿や,鉱物を手にしたときの満面の笑みを見るだけで,「やって良かったなあ」と思えます.

 早帰り組の皆さんとは,1時30分にお別れになりました.居残り組は,その場でしばらく採集を続けた後,さらに上のズリ山を目指して岩だらけの険しい坂を登りました(最後はロック・クライミングのようでした).第二のズリ山に到着です.ここでもいろいろ採集できました.「そろそろ帰りますよ〜」とマイクでさけんだその時,突然「ワーッ」という歓声が….振り返ると人だかりができています.なんと最後の最後に永広先生からビッグなプレゼント!土砂の中から掘り出した,新鮮な孔雀石たちがたくさん!色がとても綺麗でした.
 三の沢を下って,事故なく無事に全日程が終了.参加者の皆さんの笑顔を今日もたくさん見ることができました.5時18分の電車で皆さんを送り出した後,夕暮れの空を見上げて「ホッ」とひと息.充実した一日の余韻を体全体で感じながら(筋肉痛…),満足して家路につきました.

孔雀石のかたまり


(3)感想から

 参加者カードの中で「時間がなかったからかもしれないけれども,もう少し説明の時間がほしかった」というご意見をたくさんいただきました.こちらとしても説明したいのは山々なんですが,いかんせん時間が足りません.早帰りの方のことを考えると,皆さんを集めて説明する時間というのはなかなか取れないのです.現地到着が三々五々というかんじになってしまうのも,説明がしにくいひとつの要因です.
 しかし,今回,多くの参加者から同じような意見をいただきましたので,来年に向けて(もしやるとしたら…)改善策を練っておく必要があります.今年の場合,採集の時間を最大限取るために,昼食の時間もとくに設定しなかったのですが,説明を入れるとなると,昼食の時間も決めておいた方がよいかもしれません.
 12時ごろに現地に着きますから,

・12時から30分間は昼食(&採集)タイム
・12時30分から15分間は説明の時間

というふうに,途中にあらかじめ説明の時間枠をとっておくというのはいかがでしょう.来年度の係の方は,この方法も含めて検討してみてください(なんて他人行儀な書き方…結局自分がやるんだろうなあ…).

 ということで,責任者の報告(というか感想)は終わりです.


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