2002/2/21

平成13年度いじめ問題情報交換会資料

『いじめーその本質と克服の道すじー』を読んで

中学部 山口裕之

『いじめーその本質と克服の道すじー』前島康男著(創風社)1300円+税

 この本は5年研の「いじめ問題研修」の講義で紹介され,買うだけ買っておいたもの。5年間本棚に飾りつづけていたが,この機会に読んでみた。装丁はいかにも堅苦しく,つまらない内容を予想させるような仕上がりになっているが,実際に読んでみると,とても興味深く示唆に富む内容であった。以下,読みながら私が考えたことを書く。

○文部省的対応を超えて

 文部省の緊急アピールより「学校・家庭・社会は,社会で許されない行為は子どもでも許されないととの強い認識に立って子どもに臨むべきであり,子どももその自覚を持つこと」。文部大臣の発言「法という社会的制裁を持っていることを教えるべき」。また,文部省通知では「学校と家庭は,改めてそれぞれの立場から,人間として備えるべき基本的な生活習慣・態度を徹底する教育・しつけを行うことが求められる」。

 これらの,懲罰主義的・しつけ主義的な対応で,いじめは決してなくならないということがこの本を読むとよく分かる(事実,いじめはまだ無くなる兆しも見せていない)。また,自分のクラスにはいじめがないからいじめ問題は関係ない…という考え方が,完全に間違っていることもよく分かる。いじめ問題は,単なるいじめ問題として完結しているのではなく,そこから一人一人の人間としての在り方そのものに深くつながっていく問題である。

  • 自分と違う何か(異質性)をもっている者が気になる,むかつく。
  • 周囲の目が常に気になり,神経を使いくたくたに疲れている。
  • 嫌なことを「イヤ」と言えない。周りの評価が怖くて本音を口にできない。
  • 親や教師の意見に従うことしかしらず,いつの間にか自分が分からなくなった。
  • 自分のしていること,考えていること,感じていることに自信が持てない。
いじめへのアプローチとは,一人一人のこういう気持ちにアプローチしていくことだ。このようなアプローチは,いじめがあろうとなかろうと常にしていくことが必要である。(もちろん指導する前に教師本人が自分の中にあるこの問題と対決する必要がある)

○いじめ問題をMAP(みやぎアドベンチャー・プログラム)的にみていく

 いじめ問題克服の教育実践の在り方として著者が述べていることを要約すると,「子どもが安全で,安心でき,一人の人間として尊重されていると感じられる雰囲気の中で,子どもが自分の本音に気づいてそれを素直に表現したり,真に自らの自由と責任において行動や思考を選択できるように援助する」ことが必要だという。そのような雰囲気の中で,相手にむかつく自分に向き合ったり,自分の気持ちを抑圧してきた過去に気づいたりする。それが生徒一人一人の内面の成長につながる。

 宮城県教育委員会が平成14年度から全面導入しようとしている「みやぎアドベンチャー・プログラム」(MAP)は,このような指導に最適である。「安全で安心でき一人の人間として尊重されている雰囲気」を,MAPでは「フルバリュー」と表現する。また,「自らの自由と責任において行動や思考を選択する」ことを「チャレンジ・バイ・チョイス」という。MAPは,これらの二つの言葉を具体的に実践できるように,小集団で体を動かしながらステップバイステップで学習を進めていく。著者の考えを具現化したものがここにある。今後,さらにMAPの研修を積み,日々の指導に活かしていきたいと思う。