MAP研究会は,宮城県教育公務員弘済会の支援によって活動しています。
■ 日 時: | 2013年 1月21日(土) 10:00〜12:00 |
■ 場 所: | 大崎生涯学習センター(パレットおおさき) |
■ 内 容: | 今年度の実践を振り返ろう 〜上條先生と共に教育者としてのリフレクションを考える〜 |
■ 担 当: | 研究部 |
■ 報 告: | みっちぃ・あべpapa・あだっちゃん |
■ 参 加 者: | 19名 |
MAP研究会平成24年度のまとめは,東北福祉大学准教授の上條晴夫先生をお招きして,今年度の実践を共有する研修を行いました。
午前中は,上條晴夫先生の講義,演習でした。
上條先生は,最近,「教師のリフレクション(省察)」の大切さについて考えるようになったと言います。省察とは,簡単に言えば「振り返り」みたいなものと考えていいのだと思います。教師にリフレクションが必要な理由は,教師という仕事が,信念に基づいてなされるべき仕事だからである,と上條先生は言っています。
例えば,MAPのような素晴らしい教育手法も,その使う人の信念とうまくマッチしていなければ,それはただの道具にしか過ぎず,相手の心には伝わらない。それはMAPに限らず,どんな教育手法でも同じことであるとも言っていました。確かに,我々がMAPを伝えようとするとき,MAPという道具だけではなく,その理念や思想に惚れていないと伝わらない,ということは少なからず感じていることですよね。自分の信念に基づいて省察を繰り返していくことが,自分の教師としての質を高めることにつながる,ということだと解釈しました。
上條先生は,その信念のことを「強み」とも表現しています。自分の「強み」を生かして,その強みをさらに強化していくこと,こういう姿勢が今の教員にも必要なのではないか,という話でした。さらに上條先生は,その自分の信念(強み)があったとしても,相手の心の深いところを知ろうという努力なしには,相手には受け入れられない,とも言っています。だから教育者として,自分の「強み」をもつこととあわせて,相手(子供)の「強み」を見つけ,それを伸ばしていこうとする姿勢が必要だと言っています。
上條先生の教えている学生に,「あなたの強みは何ですか?」と聞くと,答えられない人が多いのだそうです。この傾向は,進学校から上がってきた学生に多いと言っていました。成績は優秀なのに,どうしてそうなのだろう,と考えたとき,それはきっと今まで,学校で「強み」を伸ばしてもらう教育を受けてこなかったからではないか,と考えるようになったそうです。
これまで学校は学力向上を目指して,「平均点を上げる」教育をしてきました。確かに,そうやって一律に学力を上げようとする指導の方法がこれまでは功を奏してきた,とも言えます。しかし現代のような,大学全入のような状況の中で必要とされているのは,「平均点をあげる」指導ではなくて,「個の強み」を伸ばす指導ではないか,ということでした(ただし,平均点をあげるための指導がまったく必要でない,ということではない)。子供の強みを伸ばす教育をすすめていくためには,「量的研究」だけでなく「質的研 究」に力を入れていくことも必要だと考えて,今後そういう面での仕事をしていきたいとおっしゃっていました。
これは私の勝手な感想ですが,MAPの効果測定も,やはり「量的研究」ではなくて,もっと個に焦点を当てた「質的研究」で考えていくべきなのかもしれないと思いました。(みっちぃ)
省察について深く知りたい場合は,授業づくりネットワークで出している次の本を参考にしてください。
★授業づくりネットワークNo.8 教師のリフレクション(省察)入門
午後の部では,MAP研究会の会員が,今年度の取り組みを紹介しました。
グループ学習を見直すという観点で,お話をいただき,「回覧板で感想交流」というアクティビティ(グループワーク)を体験したあと,グループ学習,授業作りについて参加者で考え,学びを深めました。
まんちゃんは中学校の国語の先生ですが,現在は小学校で教頭先生をしています。担任不在時の補欠等で小学生に授業を行うこともしばしばだそうです。そこで,子どもたちに価値のインストラクションをしています…実生活は協働力,社会の組織化,1人でできる仕事はほとんどない。
学び方には2つのタイプがあります。ひとつは教師から学習者への伝達型(A型),もう一つは教師からの伝達を受けながら学習者同士が学び合う型(B型)。今回はこのB型のような学び方について演習を行いました。
一つ目は,ペアコミュニケーション。これは,時間の都合もあり,体験もしているので省略。二つ目。5年生の教科書に載っている「だいじょうぶだいじょうぶ」を使って,「回覧板で感想交流」を体験しました。物語のはじめの時間で初発の感想をよく書かせるが,いつものことで,飽きてしまう。そこで「回覧板で感想交流」をします。学習指導要領で,友達の考えを受けて述べる力,友達の考えを引き出す力を求められていることとも合致するグループワークです。
4人でグループ音読をします。次にA4用紙を折って8つの部屋を作り,そこに1~8まで番号を書きます。1番上の部屋に「この話どうだった?」と書いて隣の人へ。2番目の人は感想を書きます(時間は2分,部屋に収まるように書く)。2分経ったら,また次の人に回します。その人は前の人の感想を受けて書き込みます。・・・という具合に1周したら,自分のものが戻ってきます。
ここまで書かれた感想を読んで,広げたい,深めたいと思う所にアンダーラインを引きます。そしてコーディネーター役となり,5番目の部屋に「このことについてどう思う?ぼくは,~って思うんだけどどう思う?」などと書き込んで,また回覧します。次の人は6番目の部屋に問いかけに対する考えを書き込んでいくというように・・・2周します。8つの部屋が埋まった用紙をもとに,ノートにまとめたり,おしゃべりしたりと展開していきます。…ということでおしゃべりタイム。それぞれのグループで感想交流しました。
やってみた感想としては,コーディネーター役が難しいし重要だということです。友達の考えを受けてさらに深めたり,広げたりできるかどうか。ツイッターやフェイスブックのようなイメージを感じました。つぶやきを拾っていき,それを広げたり深めたりできたらいいなと。ただ1人で感想書いて先生に提出して朱書きをもらって・・・というよりは,楽しいし,友達の感想や意見も知ることができておもしろい。また,上(友達)の意見を受けて書くという所が考える力や書く力に結びついていきますね。
国語だけではなく,道徳や学活,図工や音楽の鑑賞にも使えるということで,いつでもどこでもできるグループワークでした。(あべpapa・あだっちゃん)
6年生11名,情緒障害学級1名,知的障害学級1名の計13名。6年生11名の中には,食物アレルギーで弁当持参の子,境界線上の子。緘黙気味の子がいます。6年間同じメンバーで過ごしているので,お互いを理解しながらなかよく学校生活を送っていると感じています。
6年担任となって,フルバリュークラスをめざしてきました。ですが,実感としてはフルバリューというより,バリアフリークラスを目指しているのかなという思いもあります。つまり,みんなで学びあいながら,互いの力を向上していくというよりも,緘黙の子がいれば黙って待ってあげられる,情緒の子がパニックになっても子どもたち同士で解決できる。たがいに高めあうというよりは,「みんなちがってみんないい」その子にあった接し方ができているクラスにしていきたいというのが私の気持ちです。
バリアフリーなクラスで居心地はいい。でも一方で,自分(担任)は,もっと子どもたちの力を高めたいという思いも持っている。今は,どの学校どの教室でもいろいろな子がいます。
そういったクラスで学級の力を高めていくってどうなのか? というこを主題にして,みなさんと意見交換をしました。キーワードをまとめてみます。
いけちゃんからは,学級のルールを守れない子についての話題。上條先生から,協同学習の助言。グループで学ぶ。どのグループも先生がいなくてもできるようにする。先生がいない状況でも学習ができるコラボレーションラーニングをベースに,共同的で活動的な学習はできないか。また,演劇的なドラマ学習。有田和正先生の本など・・・。先生1人では無理。先生と同じ人を増やす。1人でやらない戦略を考える。
えんやすから,フルバリューな環境。先生と同じ気持ちを共有。特別扱いしない,他の子どもがフォローできる環境になればうれしい。Kenyaから,他の先生を絡んで合同でする。教師のチームワーク。
いのきから,学級崩壊のクラス。コミュニケーションを大事にした。担任とのコミュニケーション,子ども同士のコミュニケーション。しゃべり方をコミュニケーションのツールにしている。まんちゃんから,協同学習,学び合い,人に教えるのが一番の学びだということを子どもたちが分かっているのかだと思う。その子に関する本(緘黙)を読むだけで違ってくる。解決の糸口が見えてくる。
などなど,他にも参加者の方々といろいろと話し合いながら進めることができました。(あべpapa・あだっちゃん)