トップページへのリンク MAPミーティング2012(11月)【2/2】

MAP研究会は,宮城県教育公務員弘済会の支援によって活動しています。

高台から南三陸町立戸倉小学校方面を望む

■ 期   日:2012年11月10日(土)〜11日(日)
■ 場   所:宮城県志津川自然の家
■ 内   容:MAPミーティング2012 〜震災復興の中のMAP〜
■ 担   当:運営・企画・研究・事務局
■ 報   告:Sphinx
■ 参 加 者:31名

【1日目】被災地巡検〜「3・11とMAP」他

1日目の活動は,前のページにまとめてあります。

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【2日目午前】PAベースの実践事例報告とワークショップ(1)

2日目は,ゲストの皆さんやMAP研究会のメンバーから,PAやMAPをベースにした実践事例の紹介とワークショップを行いました。ゲストは,東北青年塾を主宰されている阿部隆幸さん(あべたかさん)と,東京の小学校でPAをベースにしたクラス経営を行なっている秋吉健司さん(けんじくん)です。

学級集団の力を活かした授業づくり(あべたか)

ミニ授業(1)背中の歴史上の人物を当てろ!

背中に「杉田玄白」と書いた紙が張ってあるまずはさっそく,私が授業の中で行なっている活動を2つほど体験していただきます。一つ目は「背中の人物を当てろ!」です。

6年生で学ぶ歴史上の人物が40数名いるのですが,その名前を書いた紙を背中に貼って,周りの人にヒントをもらいながら,誰の名前か当てていく活動です。

  1. 背中に歴史上の人物名を張ってもらう
  2. 自由に歩き回り出会った人とペアになる
  3. 背中を見せ合う
  4. 交互に質問をして答えてもらう(イエス・ノーで答えられる質問)
  5. 別のペアになって質問を繰り返す → 背中の人物が予想できたら先生に答えに来る

「えーと…政治家ですか?」「残念,違います」
「私は西日本に行って活躍した人ですか?」「そうです」
「私は江戸時代に活躍しましたか?」「ちょっと記憶にありません…」

活動風景 活動風景 活動風景

だんだん分かった人が出てきます。(Sphinx注:私は歴史が苦手なので一人で冷や汗をかいていました)

ミニ授業(2)野口英世の次に1000円札になる人を考えよう

次のミニ授業は,歴史上の人物を思い描きながら,次にどんな人が1000円札に登場するか,グループで話し合いながら予想するという活動です。資料として,今までお札に登場した人物の一覧が配布します。(伊藤博文,夏目漱石,聖徳太子などの名前があります)

最初に個人的に何人かを列挙してから,ペアで見せ合った後,4人グループになります。お互いのアイディアを共有した後,最もおすすめの人物を一人だけ決めて,グループごとに人物名と新しいお札にふさわしい理由を発表してください。

#さて,皆さんなら誰を思い浮かべるでしょう。5グループのおすすめは下の3人でした! 理由もそれぞれ趣向があり爆笑の連続でしたよ。(Sphinx)

教育観の転換:授業づくりから学級づくり

昔は学級づくりが土台で,その上に授業づくりと言われました。学級づくりと授業づくりは車の両輪だという考え方もあります。しかし,私は授業づくりから学級をつくっていくという考え方で行なおうとしています。国語や算数,社会などの教科の授業の中に,目標設定や学び合い,話し合いの場面を設定しています。社会では質問授業といって,児童がそれぞれ担当した分野の質問を受け付けて答えていくという学習にも取り組んでいます。

主体的で自律的な力を身に付けさせるためには,主体的で自律的に学べる授業になっている必要があります。教師が用意した学びの枠組みの中で,児童生徒が互いに学び合ったり,課題に挑戦することで主体的で自律的な力を育み,そのことをとおして,クラス集団が問題解決志向集団(集団として課題をよりよく達成することをめざして結ばれた集団)になっていくことを目指しています。

PAベースで作る人間関係〜学級経営・学習指導を通して〜(けんじ)

PAと出会って自分自身で体験し,以来「これしかない!」と思って,学級経営に取り入れています。ポイントは,楽しさとメタ認知(自分について知る)です。

ある男の子の話

PAに出会って,本に書いてあることを参考にたくさんアクティビティをやりまくっていた頃の話です。4年生のクラスでハイウェイ・シャッフル(TPシャッフル)をやりました。このクラスには少し乱暴な男の子が一人いたのですが,その子が引っ込み思案な女子に「俺の手に掴まれ,引っ張ってあげるから」と声をかけ,そのグループだけがそういうやり方で課題を達成しました。その後の振り返りで,女子が「本当にうれしかった」と言ったんです。これがきっかけで,男の子は優しい子になりました。4年生の最後に先生に宛てた手紙の中で男の子は「自分のことを好きになれた」と書きました。そういう経験ができるPAやというものを大事にしたいなと思いました。

今年度の教育ビジョンとゴール設定

皆さんの今年度の教育ビジョンは何ですか? また,1年間の学級経営のゴールはどこにありますか? 私は4月に自分のクラスを受け持つにあたって,1年間のビジョン(こんなクラス集団に育ってほしいという方向性)とゴール設定(どんなクラスになっているか)を行います。そして,現在地(実態)と学年末の行き先を設定して,そこから各学期の目標(途中の道しるべ)を作ります。

この学期の目標や学年末の行き先に持っていくために,各学期でPAの活動などの様々なアプローチを仕掛けていくわけです。

1学期

1学期はクラスメイトとの膨大なコミュニケーションを通して協力することの楽しさを伝える時期です。毎朝のペアトークでは,ちょんせいこさんに教えてもらったオープンクエスチョンを使って1分ずつ話を聞き合いました。お題は「しゃべりか」を使います。友達との共通点や相違点,いろんな友達と話ができたという小さな成功体験,話し合うときのスキルの修得をねらっています。他に,魔法の鏡,秘密の友だち,帰りの会でのあいこじゃんけん(3人目標)や親指メーターでの振り返りの練習などを行いました。

2学期

2学期は自分の言葉や行動がチームの問題を解決するために必要だということを感じる時期です。1学期に行った毎朝のペアトークや秘密の友だちなどを続けながら,新しくパイプラインによる課題解決を行いました。ねらいは「チームワークとは?」です。

1回目のチャレンジで成功したのは1チームだけ,残りはケンカ寸前です。振り返りでは,チームワークについて見えたこと(良かったこと,悪かったこと,次はこうしたい)がたくさん出ました。2回目では,活動の前に1回目の振り返りを読み直して自分の目標をジャーナルに書き,それをチームのみんなで共有してから挑戦しました。「あ〜あ」と言って僕の顔をみて慌てて「ドンマイ」と言い直してる子もいました。チャレンジと振り返り,目標設定をしていく過程で,チームワークについて学びを深めています。

教師がPAをやる意味

1年間通して,日常の中でかかわり続けることができるというのが教師の強みだと思います。今後は,あべたかさんのように,教科の中でも取り組んでいきたいと思っています。ありがとうございました。

祝辞:日本教育公務員弘済会宮城支部 支部長 高橋道郎様

MAP研究会の立ち上げの年から,一貫して活動のサポートをしていただいている,日本教育公務員弘済会宮城支部の高橋支部長に祝辞をいただきました。MAP研究会のみんなで作った「クラスの絆が深まる楽しい活動集―信頼と安心を築くプロジェクトアドベンチャー」についても,お褒めの言葉をいただきました。継続的に支えていただいていることに感謝いたします。

道徳にMAPの体験学習サイクルの考え方をいかす(haya)

本校は内陸にあり周囲の被害も小さかったので,生徒たちは,被災地の様子をテレビやインターネットを通した情報でしか知らないのが現状です。そのような生徒たちに,復興のために働いている人や,他県から支援に来ている人のリアルな姿を知ってもらうことで,今後の自分の仕事とか生活について考えを深めてもらおうと考えて,道徳の授業を行いました。

自分が生まれ育った山元町や,初任地の南三陸町は,今回の震災で筆舌に尽くしがたい被害を受けました。初任地で私がお世話になった方々(保護者,飲食店の皆さんなど)もいろいろ大変な体験をしました。教え子も亡くしました。また,自分の実家の片付けを手伝ってくれた,他県からの素晴らしいボランティアさんとの出会いもありました。

それらの方々に協力していただいてインタビューを行い,「津波被災地を支える人〜南三陸町と山元町の被災地で〜」というビデオ教材を作成しました。ビデオの内容の一部を紹介するとこんな感じです。

インタビューからは,働いて賃金を得るとはどういうことかとか,お金だけじゃなく,働くことによって充実感ややりがいを感じることが,生きる希望につながっていくんだということが,強く伝わってきました。

この教材を使って道徳の授業を行うに当たって,体験学習サイクルを生かしていきたいと考えました。生徒たちは,授業の中でワークシートへの書き込みは熱心に行う一方,意見を求められても人前で発言することが少なく,個々に学んだ内容がなかなか共有されないという実態があります。そこで,ビデオ教材の視聴という①共通体験の後,②観察と振り返り(ビデオで印象に残った人は? どんなところが?)→③一般化(登場した人が地域や被災地のために行動しているのはなぜ?)→④試験適用(登場人物の行動から私たちが学べることは?)の部分をグループの話し合いで進めていくことにしました。

グループでの話し合いは,いきなり道徳で「はいどうぞ」という訳にはいかないので,係活動や班長会議など,学級の活動の中でホワイトボードを使った話し合いを練習するなどしてスキルアップしました。

授業の中で生徒たちは,私が予想した以上に意欲的に学習に取り組んでくれました。授業後の生徒の感想として「被災地の人たちを応援したい」「中学生の自分が今できることなないかもしれないが,勉強をしっかりして将来の仕事に役立てたい」「(震災後も変わりなく)今までどおり過ごしていた自分が情けなくなった」というような声が聞かれ,授業のねらいがしっかり伝わったと感じています。体験学習サイクルを生かして④の試験適用まで回すことができたこと,グループでの話し合いを通して他の生徒の考えや気持ちを知ることができたことが,良かったのではないかと思います。

【2日目昼休み】南三陸さんさん商店街へ…

昼休みには,チーム関東の皆さんのお土産購入のため,慌ただしく昼食を取った後,南三陸さんさん商店街に急ぎました。合格祈願のタコ「オクトパスくん」(置くとパス!)など,いろいろなお土産をご購入いただきました〜♪

【2日目午後】PAベースの実践事例報告とワークショップ(2)

MAP研究会・研究部報告(みっちぃ・イマ)

4年生のクラスにグループワークの前後で質問紙とQ-Uによる調査を行った(みっちぃ)

みっちぃとイマ4年生のクラスで,グループワークの時間を年間指導計画の中に盛り込んで指導しました。行った活動は「先生ばかりが住むマンション」,フープリレー,「火事だよ!」,MAPのアクティビティいくつか,長縄跳びです。グループワークをやる前と,グループワークをした後で,質問紙によるアンケートを行いました。アンケートは「あなたはグループの人たちみんなと仲良しですか?」とか「このグループの雰囲気は明るい感じがしますか?」といった質問が並んでいて,5段階で答えるようになっています。このアンケート結果を統計的にチェックしたところ,いくつかの項目について有意差がある(効果がある)という結果が得られました。

5年生での実践(クラスから学年,学年から学校,そして地域へ)

その学年が5年生になって,今度は花山合宿に向けたグループワークとして,魔法のじゅうたん,ビーイング(学級のシンボルマーク),夏休み明けのトレジャーハンティング,ヘリウムフープ(課題解決),アイ・メッセージ,セーブ・ザ・エッグ(課題解決)を行いました。Q−Uの分布図は,少しずつ右上に(全体的に学級満足群の方向)に変化していき,具体的な時間を使ってグループワークをすることは大切だということが分かりました。

花山合宿では学年全体でグループワークによる事前事後学習を行い,それが学校全体,そして他の小学校からも声がかかるようになってMAPの活動の輪が広がっていきました。

構成的な振り返りと非構成的な振り返りについて(イマ)

振り返りには,例えば「右の方から順番にどうぞ」という構成的なやり方と,参加者の自由意志に任せる非構成的なやり方があります。最初から非構成的な振り返りを行うと,場合によっては気後れして話したいことも話せずに終わってしまう人もいます。そこで,非構成的な振り返りの前に構成的な振り返りを加えて,みんなが話す機会を作ることで,グループへの気持ちを高めることができるのではないかと考えて実験を行いました。

その結果,まずは単純に構成的な振り返り(順番に話してください)と非構成的な振り返り(自由にどうぞ)を比べたら,構成的な方がのほうが心の変化(グループへの気持ち)が大きいという結果になりました。また,構成的な振り返りをどの段階で非構成的に切り替えたら効果的かという観点で調べたら,グループとして十分に暖まったと感じられる少し前が一番効果的ということが分かりました。

みっちぃの今年のクラス(5年生)での実践

今年も5年生34名を受け持ち,PAベースのいろんな取り組みをしています。ビーイングをつくったり,朝の子ども同士のあいさつをハイタッチにしてみたり,話し合いをホワイトボード・ミーティングにしてみたり(昨年,ちょんせいこさんがうちの学校に来てくれました!),褒め言葉のシャワーも,ジャーナルも。席替えでは,今までお世話になったお隣さんに感謝のメッセージを書いて渡すということをやってますが,これがまたラブレターみたいで,読んでいて楽しいというか,子どもたちの素直さにジーンときます。

MAP研究会で取り組んでいく研究について

クラス経営の中で,Q−Uを用いてクラスの状態や児童一人一人の状況を見ていくという手法があります。Q−Uで調べてみると,クラスの中に担任の見立てとQ−Uの結果が異なる児童がいたりします。その際,担任の見立てでは「学級生活満足群」にプロットされるはずの児童が「学級生活不満足群」にいたら,おそらくその子のことを担任の先生はよく観察しようと思うでしょう。でもその逆に,「不満足群」だと思っていた児童が「満足群」にプロットされたらどうでしょう。「実は満足していたのか」と担任は認識を改めて観察が疎かになってしまうかもしれません。

Q−Uのような質問紙調査のひとつの問題点は,児童が自分の本当の行動や気持ちを回答せずに,自分を良く見せるように回答してしまう可能性が排除できないということです。つまり,「満足群」の子どもの中には「社会的に望ましい回答をする」というバイアスがかかって,本来より良い方向で回答をしている子が混じっている可能性があります。その場合,本当は「不満足群」なのに「満足群」にプロットされてしまうことによって,担任の先生がクラスや児童の実態を正しく理解する上でちょっとした障害になります。そこで,「学級生活満足群」の子どもがどの程度「社会的な望ましさバイアス」を受けているかを調査し,よりよくクラスや児童の実態を理解することを目的として研究を行っていこうと考えています。

現在,児童生徒や専門学校生にQ−Uと,適応傾向を見るいくつかの質問紙(※)を実施して,それらの相関を調査している段階です。(※:友人関係場面における目標志向性尺度,孤独感尺度,親和動機尺度の一部)

ワールドカフェ:MAP これからの取組に向けて(えんやす)

2日間の学びの振り返りと共有を,えんやすファシリテートのワールドカフェで行いました。

ワールドカフェの様子 ワールドカフェの様子 ワールドカフェの様子

4つの島を作り,それぞれの島で次のようなお題の元に語り合いました。

模造紙:アドベンチャー教育 私の目標

模造紙:私が大切にしている教育の視点

模造紙:人間になぜ成長が必要か

模造紙:MAPの良さを生かすとは

チーム関東をお見送り

古川駅でチーム関東の皆様をお見送りMAPミーティング2012のために関東から駆けつけてくれた皆様を,古川駅にお送りしました。ありがとう! また会いましょう!