MAP研究会は,宮城県教育公務員弘済会の支援によって活動しています。
■ 日 時: | 2007年 7月7日(土)〜8日(日) |
■ 場 所: | 宮城県立拓桃養護学校 |
■ 内 容: | プログラムデザイン講習 |
■ 講 師: | 田中裕幸氏(アウトドア・エデュケーション・センター) |
■ 担 当: | 企画委員 |
■ 報 告: | Sphinx |
15名 |
アウトドア・エデュケーション・センター代表の田中裕幸氏を講師に迎え,ただのお題目では終わらない,実効性のある学級経営計画をどう作成するか,その中に一つ一つの行事をどう位置づけて,どんなねらいで行っていくかについて,指導していただきました。
以下の報告は,非常に密度の濃い2日間の研修をダイジェストしていますので,いろいろ文章につながりの悪いところがあります。その辺は想像力で補って読んでください!
「ビジョナリーカンパニー」という本を読みましたか? 福祉・教育関係の組織に単純に企業の論理を適用しても意味がないが,優れた組織の理論には学べるものがあるという考え方が紹介されています。
日本のNPO法人は「同好会」型が多く,補助金がなくなると何もできなくなるなど活動に甘さがあります。その一方,アメリカなどのNPOの活動報告には,一番最初に Mission という項目があり,自分の使命をどれだけ果たしたかを数値で示しています。
企業の経営者なら,就任会見でこのくらいのことは必ずインタビューされます。学級経営者として,皆さんがインタビューされたらどう答えますか? 書いてみましょう。
参加者の自己紹介を兼ねて,どんな答えを書いたか発表し合いました。
経営理念は? | 「フルバリュー(人に優しく自分に強く)」 「人間的に成長できるクラス」 |
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具体的方策は? | 「MAPで」 「失敗から学ばせる」 「体験学習サイクル」 |
何で測定しますか? | 「Q-U」 「自分の目,こどもたちの声」 |
責任の取り方は? | 「ごめんなさいと謝るしか…」 「もう一度やらせてください」 |
責任の取り方は,先生方は難しいですね。私の場合,企業の管理職研修をやっていて,ある企業などは,研修後のアンケートで満足度の平均が4.2以下だとモンクを言われる。そういうシビアさがあります。
自分の方針は学校全体の方向性とリンクしているのかという視点も必要ですね。
よく体験型学習で一生懸命育てたクラスがクラス替えになったときに,「去年のクラスはよかった」という生徒の声を聞くことがあります。それってどうなんでしょう。そのクラスで本当に学んでいれば,与えられた新しい環境でも取り組んでいけるはず。居心地のいいクラスは,与えられたものだったということでしょうか。
私たちは「来年がんばります」と言えますが,こどもたちにとっては1回切りのチャンス。それがこどもたちの将来を左右することもあるのだから,怖い職業ですね。スタッフがそういう意識を持ってくれているかというのは,経営者の責任でもあります。
ミッション教育が日本では甘いという点で,例えば国立で行う大学生の研修会の話をしましょう。研修会に参加した大学生は参加費1万円を「高い」というのですが,実際そこには5万円程度のお金がかかっている。不足分は税金で補っているわけです。それほどの税金をかけて,その参加者たちは学んでいる。そのことを伝えて,税金に対する責任を取らせていく必要があるでしょう。
消費者の立場になって考えてみましょう。
自分のこどもをこのキャンプに行かせたいですか?このお値段でこんな豪華賞品!「キャンプをとおし自主性,主体性を育み…」これが趣旨である以上,自主性,主体性がどう変わったのか,それをどう測定するのか,と聞きたくなります。本当はどうなんでしょう。素直に「思い出づくり」と書いたらいいんじゃないかと思います。
こういうのは学校ではよく見る目標設定ではないですか。1泊2日で自主性,主体性…もし自分がこのような趣旨でキャンプをしてほしいと頼まれたらことわります。できるわけがない。1年の中での位置づけとしての意味はあるかもしれませんが,それにしても欲張りすぎでしょう。
国立自然の家での打ち合わせの最中に,他の団体さんが自然の家のスタッフとこんな会話をしています。
スタッフ 「オリエンテーリングと野外炊飯の順番を逆にしてもらえますか?」
団体代表 「はいはい,いいですよ!」
ここでビックリ,え!?順番が逆になったら,困るのでは? 困らないとしたら,目的は「活動すること」のみということ。デザインされてないんですね。
例えば登山をどう使うか。
・達成感を感じさせるとしたら?
・グループワークとしての登山なら?
・自己限界(自己チャレンジ)を求めるなら?
何のためにやっているかを考えれば「登山」というだけのプログラムはあり得ないんです。文化祭にしても,合唱コンクール,運動会にしても,「それをそもそもなんのためにやるの」と目的を考えれば活動の与え方が変わります。
コンテンツ(活動の中身)の話ばかりで,「そもそも」の話がまったくないというのが問題です。以前,ある市の「子ども野生復帰大作戦」についての懇談会に出席したとき,まず聞いてみたのが「そもそもこどもがどうなったら『野生復帰』なんですか?」ということ。職員室でも,そういう「そもそも…」という話をしていますか?
大事なところは現在地。学校の,クラスの現在地が分かっているかどうかです。現在地は「仙台」,それとも「だいたい東北」,「だいたい宮城県あたり」なのか。そこがないと,経路もわかりません。企業で言えばマーケティング,消費者のモニタリング(リサーチ)。そこから商品開発が始まります。現在地が分からないと,行き先も「桃源郷」みたいになんとなくいい場所へということになってしまうしかありません。
現在地から目的地へ。その途中にいくつかの「道標」がある。これが目標です。学校の先生はよく「目的」と「目標」のどちらが上位の概念か分からないといいますが,目標をいくつかクリアしていく先に,目的地があるのです。
学校からの要請を請け負うときの流れです。
まずはニーズ把握(=「現在地」の調査)として,生徒・教師・親の意識調査を行います。生徒の調査は,自己意識というタイトルのオリジナルの調査用紙で,親の調査は「親の役割意識調査」で。また,親には生徒の意識調査用紙も渡して「あなたの子どもはどこに○を付けたと思いますか?」という調査も行います(これはけっこう興味深い)。
次に生徒・保護者への説明会を行います。保護者向けの説明会では,「キャンプの後,このように接してくださいね!」というような意識づけをしておきます。
プログラム(キャンプ)実施中には,観察法による状況把握を行います。生徒の振り返りは毎日行います。指導者同士の話し合いでは「1日に3人のことだけを書け」というような振り返りシートも使います。最終日には,キャンプ前と同じ意識調査をもう一度行い,キャンプによる変容を確認します。
プログラム実施後に報告を行います。振り返り用紙からのキーワードの抽出というのは,例えば「協力」「責任」「言えた」「言えなかった」などの言葉が,何回その子の振り返りに出てくるかというかんじです。
振り返りなど,書いたものを集めるだけでも見えてくるものがあるんですね。クラスの中でも,一人一人に自分の考えを考えさせる,そのタイミングがほしい。例えば合唱コンクールも,最近は課題曲2曲ということで自由曲がない学校もある。そうじゃなくて,例えば自分たちを象徴する曲を1曲決めて,その理由を書いてエントリーするというやり方は?もし決まらなかったらエントリーできないとか。または,クラスで何か決めなくてはいけないとき,まずそれに対する自分の考えを一人一人に書かせてから議論を始める,とか。
エンカウンターの関わりのスキル,配慮のスキルは項目数が多すぎて使いにくかったので,今はオリジナルです。筑波大の先生に調査用紙として問題ないかどうか見てもらって,大丈夫ということで。
報告書です。前後の違いが大きいものにコメントをつけて分かりやすくしています。
新入社員に対する企業研修の担当者曰く「最近の新人は根拠のない自信だけが強いね」とのこと。キャンプの前後での自己意識を調査すると,私の調査でも最近はキャンプ後の方が低いスコアになってしまうことがあります。きっと,キャンプをとおして「できない自分」に直面して,評価が適正に近づくのでしょう。
親の意識調査の報告書です。実線が平均,点線が自分。平均にはあまり意味はないですが…。
それでは,そろそろ時間もなくなってきたので,午後のメニューを少し紹介しましょう。
まずロジックツリーを使って,自分の考え(ヴィジョン)を具体的にしていきます。例えば,青少年健全育成。健全ってなんですか?ということを具体的に表現していきます。学校で言えば,「互いに認めあえるクラス」…それってどういう状態?「まごころ教育」…まごころってなんですか?まごころが育ったこどもはどんな様子ですか?
そういうことを,基本的には3つずつ具体化していきます。上から(上位概念から)埋めていくのが,KJ法と違うところです。
その例です。このように,段階的に具体化していく中で,何を求めているのかのイメージをはっきりさせることができます。
こちらはヒエラルキーという分析のしかた。基本的には先ほどのシートと同じような使い方をします。
ヒエラルキーによる分析で,新入社員研修の内容についてまとめたものです。一番下の責任力というのは間違いではなく,責任「感」ではだめで,責任をとれる力がほしいということですね。また,それぞれの3角形(例えば「関係力」とか「課題達成力」)は,さらに文章で8項目程度に具体化しています。
企業の新入社員研修は,昔は真ん中のレベルで出していましたが,今は大卒の新入社員研修で,一番下のレベルからやらなければならない状況です。例えばストレートハイクという活動をやると,400mで1時間という時間配分でスタートするのですが,その行程の半分も行かないうちにタイムアップ。「木が…」とつぶやくだけで互いの会話がないんです。気づいた者が勝手にフォローすることはあるんですが,会話はない。このままだとタイムアップするという状況に,みんな気づいているけど,誰も何も言わない。
ロジックツリーまたはヒエラルキーで,あなたの学級経営理念実現に向けてヴィジョンを明確にしてください。時間は40分です。
…というお題をいただいて,さっそくそれぞれ書き始めました。紙に印刷されたロジックツリーで書く人,パワーポイントのデータをコピーしてパソコン上で書く人。書き終えた感想は…
皆さんできましたね!これが,学級経営についての目指すべきゴールです!!
ゴール設定ができたら,今度はそこに向けての課題を同じようなシートで考えていきます。これは,ある教育委員会に提出した企画案の例です。
ところで,複雑なことをひと言で表現するようなスキルを「conceptual skill」といいますが,最近生徒に感想を書かせて「〜でよかったです」という感想が多いですね。それって感想なの?評価じゃないの?と思います。
先ほど作成したヴィジョンの実現に向けての課題を明確にしてください。30分ぐらいで。
時間は意外に早く進みます!
先ほどの「ヴィジョン実現に向けての課題」をコピーして,緊急度ー重要度の表に貼り付けます。それぞれの課題を表の適切な位置に配置していきます。位置関係は相対的な者なので,どれかひとつ真ん中に置くものを決めるとやりやすいでしょう。
こういう図を書きながら,「何のためにやろうとしているか」という部分の意識の統一をしていくのです。これをやらないうちに,手段(展開の計画)を考えてしまうという失敗が多いのですが,そうするといっぱい枝葉(活動のバリエーション)が出てくることになります。コンセプトが明確なら,枝葉を切っていけるはずです。
このためにどれくらいの時間を割けるのか,それがプログラムデザインでは大事です。
1つ1つで体験学習サイクルをまわしていく…というのではなくて,もう少し長いスパンでまわしていくという発想も必要です。とりあえず1学期は体験をがんがんやっていく。2学期になったら,自分で調べてみる。3学期はそれについて,自分の行動を決めていく。こういうのは1年で体験学習サイクルがまわっています。
学校教育の中でも「実行型市民の育成」という意識を持ってやってほしい。地域でも,地域の市民としての役割分担とか,実社会に向けての働きかけが必要です…もちろん,それがイベントになっちゃうとダメなんですけど。
このシートは,ヴィジョン実現に向けて時間軸で考えるためのシートです。
クラスの現在地は,先ほど課題として書いたことですね。その課題が本当にそうかどうか,データによる検証もぜひ行ってください。
こんなクラスにしたいのところは「学級経営理念実現に向けてのヴィジョン」です。そこに向けて,道しるべとなる途中経過を考えて1学期末,2学期末のところに書いてみましょう。
現在地とゴールを決め,どこの時点で何をしているかをはっきりさせれば,ゴールに向けて歩み続けることができるはずです。その行事によってどんな力をつけたいのか,それをどのような与え方にするか。
活動内容を変えられないとしても,「何のためにそれをやるの?」という部分が明確であれば,その与え方をどうしていくか(アレンジ)で,いろんな状況に対応していけるのです。
筑波というお蕎麦屋さんで,美味しいナイトセッションを行いました。とても楽しかったので,写真を撮るのを忘れました!!
その代わりといってはナンですが,ググって見つけた「筑波」情報を載せておきます。お近くにお越しの際は,ぜひご利用ください。
朝,三々五々参加者が集まってきます。会場が拓桃養護学校ということで,みんなが集まるまでの間,浜ちゃんが養護学校の個別の指導計画(家庭と学校が相談して個別目標を決めて書くシート)の資料を持ってきてくれました。
こういうことを通常の学校でもできるといいですね。やはりこどもたちをどう育てていくかを親と共有していかないと…。
キャンプのときは,自分の子が他者とどう関われるのか,どうコミュニケーションがとれるのかを親に見てもらいます。体育館でのこどもたちの活動をギャラリーから見てもらう。そして,うちの子はどんな思いでああいう行動を取っていたのかと,振り返りをしてもらう。その後で,こどもたち自身の振り返りの映像を見てもらうのです。
そうやって,親に実態と教育の必要性を理解してもらう。学力だけじゃなく,そういう人間関係も一緒に成長していかないと,新入社員研修で問題になっているような人間を育ててしまっていることになるわけです。
学校でも,親に見てもらうための客観的データを上手に使って(Q-U,意識調査),家庭でもこういう部分をしっかりやってほしいということを伝えていく必要があります。そこのアプローチが非常に弱い感じがする。学級懇談でも,先生から家庭教育への要望というものがほとんどないでしょう。そこが一番のネックでは?家庭教育をどう巻き込むか…です。
キャンプ中のこどもたちの変容はそう難しくないんです。一週間もらえれば。だけど帰っていく受け皿が…。受け皿の状況を変えるということに視点を移していくのも大事です。それを,ヴィジョン実現に向けてのデザインにどう盛り込んでいくか。という視点がないと厳しいですね。
これから予定されている行事などを考えながら,そこで何をしていくか,ヴィジョン実現に向けて具体的に何をしていくか計画してください。
これは継続的に入っている中学校でのプログラム例です。
たとえば年間の計画の中に「運動会」という行事があるとき,その行事には学校全体のねらいがあり,それに関連して学年のねらいがあり,その中の学級ではどうしていこうかということになる。そういうことに気をつける必要があります。
ここからはタッキーのワークシートを事例として,みんなで検討しました。事例対象は5年生3クラス104名です。
行き先:互いに認めあえる学級集団
現在地:コミュニケーションが表面的で,友達同士のトラブルが絶えない。
「自分を知る」の中身(イメージ)についての話し合いが続きました。
例えば運動会で「自分を知る」ということをやるときに,個人的な種目をさせるという発想が出てきがちですが,振り返りでいいのではないでしょうか。つまり団体種目でいいけど,例えばその団体競技に,自分はどうかかわったのかということを振り返る。
「自分を知る」ということが,自分の意思を持ってもらいたいということだとすると,騎馬戦の作戦会議(クラスミーティング)の持ち方を変えてしまう方法がある。まず個人の意見を用意させて,それを持ち寄って全体で話し合うのも一つ。あるいは作戦会議は普通にさせておいて,その後の振り返りで自分がグループにどう関われているか,課題への取り組み姿勢がどうなっているか考えさせるのも一つ。どこにウェイトを置くかの問題。
運動会の振り返り,現状ではどうなっているんですか?
どれをとっても,こどもたちがどの視点で振り返るかは分かっていますか?視点の提示があるのか,それとも「勝って良かった」で終わりなのか。
小学生ぐらいだと振り返るための視点が持ててないんじゃないかと思う。「自分の意見は言えましたか」→その理由は?ということを書かせたときに「いっぱい言ったから」。それは言えた理由ではない。「なぜ発言できたか/できなかったか」ということを考えて深めることはできない。そのため,変えるための(成長するための)手だてはなにも見つからないままになってしまう。
「なぜ」を考えるための視点は,小学生レベルではよほど与えない限り,振り返りになっていないようなきがします。次の一歩を踏み出すための,手がかりが分からないままになってしまう。
視点を与えるということに関して,低学年(2年生)のお店づくりでやったのは,できてない子の様子を先生が見取って,振り返りのときに「誰かがはさみを必要な人にもっていってくれた人がいましたか?」など,できていたこと,できていなかったことについて観点を黒板に書いていった。そうすると,だんだん子どもが自分でも気づけるようになり,さらに自分で行動できるようになっていった。
それは行為としての観点で,低学年ならそれで十分だと思うのですが,高学年には,思いとしての観点(どうしてそうしたかなど)を期待したい。
新入社員(大卒)の振り返りをしても,彼らの中に観点がないんです。こちらから視点を与えていかないと,振り返ることができない。「よかった,わるかった,おもしろかった,つかれた」というレベルで終わってしまう。最近は振り返りの観点の持たせ方がすごく大事になってきている。「〜できてよかったです」「〜できなくて悪かったです」で終わってしまう振り返りをどうしていくか?
振り返りの持ち方は整理した方がいいですね。今,聞いていると観点の持ち方がいっぱいある。もう少しプロセス部分に焦点を当てた振り返りをしていければ…。例えば「あのときこうすればよかった」という声。それは今思っていることか,その時思ったことか。その時思ったならどうしてそれをいわなかった?これもプロセスの問題。その場で気づいたら言ってみると,もっとうまくできたかもしれないねという気づきにつながるかもしれない。コンテンツとプロセスは車の両輪だと言うが,駆動力はプロセスですよ。そっちが回り始めれば結果がついてくる。(逆もあるけどね;結果→プロセス)
MAPの取り組みとしての振り返りが,このように行事レベルのところに本当に今定着しているのかどうかが心配ですね。しかもそれが,視点・観点が明確に提示された,プロセスに注目した振り返りになっているかどうか。そして,その振り返りを日常に戻していけてるかどうか。試みる素材を見せる振り返りを意識していかないと…。
総合的な学習の時間にしても,調べ学習をやったときに何が起こったのか。人任せにしてしまったとか,そこが本当の課題発見・課題解決。振り返りではそこに焦点が当たるべき。
午前中の討論のまとめをしました。
1学期末の目標 | 自分を知る(→「自己確認」「自己決定」) |
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それを達成するための具体的な場面 | 運動会の騎馬戦ミーティング 総合学習(米作り) |
目標達成のための運営方法 | 振り返りの重視 |
振り返りの観点の持たせ方はどうしましょう?
MAPの観点100みたいなものはないんですか?MAPを展開するとこどもたちがこんな姿になるだろう,みたいなものは。それがあると,振り返りの観点を選ぶのは楽ですね。それを振り返り用紙に落としていってもいい。
今回の場合は,振り返りの観点として,例えば…。
・自分の考えを持とうとしたか 123456
・自分の考えが持てたか 123456
・自分の考えを伝えたか 123456
そうすると,1学期に自己確認・自己決定の機会が何度かあって,自分についてある程度知ることができたという前提の元に,2学期の目標は「自分と向き合い,他人を知る」。
自分と向き合うのは1学期で達成されている前提では?
他人との違いを知るなら,自分がかかわってくるよね。総合的な学習の時間で「米作りで学んだことを個別にまとめ,自分の考えを発表する。」と書いてありますが,これは素材はこうなんだけど,振り返りは「他の人の発表を聞いてどう感じたか」という視点に持って行くということになるんです。(他者のことを考えるような位置づけにしていく)
そうすると,言葉としては2学期末までに…?
「他者を知る」(他者に目を向ける,他者に興味を持つところから)
そのスタートとして風林花山合宿があるので,他者に目を向け,興味を持つような仕掛けをしていくということになります。そこに向けて必要な状況(物理的,心理的)はなんでしょう?
(*)「この人は誰でしょう」は,キャンプでやるなら「あの活動の最中にこういう意見を言った人がいました。その人は誰でしょう?」みたいにやっていくのもあり。あらかじめ「あとでこういう活動ををやるよ」と言っておけば,そういう目で活動中もみんなをよく見るだろう。
では,これらをどんな順番で?
1日目 | 他者に目を向け興味を持つようになる規範作り(アイスブレーキング) | |
---|---|---|
午後 | ブラインド系 | |
夜 | … | |
2日目 | 沢登り(前半チーム)…自分への影響(助けられる,迷惑) | |
午後 | 沢登り(後半チーム)…自分への影響(助けられる,迷惑) | |
夜 | 沢登りの振り返り…他者のことを自分の言葉で表現する | |
3日目 | ソロ…他人のいない状況(前日の振り返りを踏まえて) | |
午前 | これからの自分のあり方(宣言) | |
午後(3時まで) | BQパーティー…楽しい活動で終わり! |
…話し合っているうち,知らず知らずに「コンテンツレベルの話」になってしまう。
他者に興味を持つためのキックオフとしてこれをしようとしているんだから…「せっかく花山にいくんだから…」「前半と後半で活動を分けて…」とか言って「みなさんの意見」を尊重しているうちに,どんどん目標がぶれていくね。やはり目標にもとづいて考えることが大事。
2日目の夜の振り返りが,仲間へのフィードバックという要素もあるから,それを生かすと3日目の朝に来るのはソロですね。「これからの自分のあり方」とか,「宣言」。そして昼からどんちゃん騒ぎでもすれば?
他者に興味を持つための3日間だけど,そのことの最終的な意味は「自分のあり方」。最後にやはり自分のことに戻していくことが必要。
こうやってつくったけど…実際に職員室で理解してもらえるか。キックオフという位置づけを,他の先生に共感してもらえるか。その辺をどうクリアしていくか考え込んでしまう。
職員室をどうこのプログラムデザインの過程に巻き込んでいくかなんですよ。みんなを当事者にしていく。担当だけがやるとみんなが当事者になれない。企画ができる人できない人の差は,当事者意識・問題意識・危機意識があるかないか。これがない人は企画はできない。グループでやっていくことを考えたときには,こういう作業(プロセス)を学校内で共有していかないと難しい。
2泊3日で,このすべてのポジションを取れるようにならなければいけない(最後に放任できる)。1年間でもそうだし,2泊3日のなかでもそう。2月,3月になっても「指示的」な介入が多いとすると,何も教育できていなかったという話になる。自分がどうフェードアウトするかということを,常に考えておく必要がある。一つの活動の中でも,これがある(最初はたくさん指示を出すが,次第にフェードアウトする)。
学校が一番弱いのはマーケティングができていない。だからつくった企画や商品がいまいちヒットしない(実態や目的にあっていない)。職員室で互いに主観を出し合って,学校としての現状認識から合わせていかないと…。ここから学校の規範や学校の風土ができあがってくるのではないか。
職員会議で共通の認識を持つためには…職員会議の持ち方から変えていく必要があるのかな。もう少し,みんなの頭が働き,みんなの口が動くような職員会議にするところから。
燃費のいい車を作ろうとしているはずなのに,このエンジンは馬力があるから…とF1のエンジンをもってくる。そんな感じ。何をやるかの前に,それを何のためにやるのかという共通理解が必要。つまり,コンテンツの前にコンセプトがないとやっていく意味がない。
逆に言うと,「何のために」があれば,取捨選択(切ること)もできる。メンバーでコンセプトを共有しないと,切るものも切れないということになります。
2日間,どうもありがとうございました!