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kuniの研修日記(10)
玉川学園 本田恵子先生インタビュー

7月18日 絶対必見!!!見なけりゃ大損!!

 この研修をとおして,KATにはいろいろな先生方へのインタビューの機会を設定していただいているのですが,この出会いが何よりも自分にとっての大きな宝となっているのを痛感します。千葉大学の教育学部スポーツ科学の徳山郁夫教授,大阪薫英女子短大で自然活動学を教えておられる西村仁志先生,京都でご一緒させていただいた帝塚山大学人文科学部人間文化学科の宮川治樹教授など,たくさんの大学の先生方から影響を受ける場面がこれまでも数多くありました。そして今回は,特に僕が楽しみにしている,玉川学園で学校カウンセリングに自らも携わり,また教鞭も執っておられる本田恵子先生へのインタビューです。

 本田恵子先生はアメリカのコロンビア大学の大学院でガイダンスカウンセリングを専攻された教育学博士で,臨床心理士でもあります。玉川大学の他にもICUや慶応大学などでカウンセリングに携わられたり,教鞭を執ったりと,まさにプロ中のプロのカウンセラーなのです。「僕も身の回りのことをカウンセリングでうち明けてみようかな」などと少し考えていたりして…。

 小田急線の玉川学園前の駅で待ち合わせると,いつものようにPAキャップにポロシャツ,ハーフパンツのKATとすてきな本田先生がお見えになりました。お昼をとりながらということで,近くのパスタやさんに行き,さあ始まりました。初めてお会いし少しは緊張するかなと思っていたのですが,全く不安を感じない環境を作っていただき,すぐに話題にとけ込める雰囲気で楽しい時間となりました。

インタビュー開始(あれ?されちゃっている,逆に…)

 ここにインタビューの内容を紹介します。

■カウンセリングについて

 専門はグループダイナミクス。個人の相談というより,チームとしてグループとしての発達を研究。

 PAと同じような悩みを持っている。それはいいものだということですぐ結果が求められるということ。カウンセリングも特効薬ではない。長い年月をかけて行っていった上で結果として変わるかもしれないというもの。

 160人を一人で面倒を見たり研修をしたりという依頼が多い。→何ができるのか?講義なのか?

 「グループワーク」についての研修をしてほしい,といって160人もいては,「グループワーク」を体験学習するのではなく,「グループワーク」という講義をしているようなもの。自分で実際に当たらないでどうして研修になろうか?

 研修に行くと「教室内で落ち着きがない子供をどうしたらいいか?」という話題で話し合いなどがもたれるが,「どうして落ち着きがないか?」というところに着目していないケースが多い。その子はLD(学習障害)なのかもしれないし,ADHD(注意欠陥多動性障害)なのかもしれない。そこにさかのぼってのアプローチをしていかなければならないのに。

 その場の「現象」をみてそれを解決しようとしているが,その前からの「過程」に目を向けなければならない。

■ケーススタディ

 大学院で,ケーススタディの勉強をしている。

 前日にFVをやった。

 たとえば,教室の中を想定して,子供役教師役につける。子供役は子供の立場に立って徹底的に反抗し,教師役はそれに対応するという疑似体験授業。現職教員の方が多いので,その子供役の経験も非常に上手で,教師の対応に対する受け入れ方もこれをやることによって,理解できるという。

 なぜ「寝ていてはいけないのか」「反抗してはいけないのか」が日本には規範としてない。それを規範として作るのがBeingであろう。これはクラスの規範を作るという意味で非常に効果がある。そこに一人一人が自分の規範をもうけることによって,それを守ったときの価値を見いだしてあげればよい。

 たとえば落ち着きがない子供が15分間座っていられないとしたら,それを15分守ったら後ろに行ってヘッドフォンでCDを聞いてもいいというルールにしてもよい。15分という規範を守ったらご褒美をあげる。後ろで聞いていればほかの生徒の迷惑にもならない。ただし守れなかったら,そのルールはなしにするなど。自分で決めたゴールに自分で向かっていくという姿勢を大事にしていく。

 先生はカウンセリングの勉強をする前は,中高の英語教師をしていたそうだ。そこで自分のアプローチを実践していた。たとえば感情の授業として「I feel 感情 when I do something」という形で,実際にその場面を思い浮かべ,その顔の表情をみんなが見て,まねをするなど。このような形で授業を展開したこともある。またプレゼンテーションも重要な自己表現の一つであり,英語で行ったりもした。その際に,使う表現をいくつか与えておき,その表現の勉強を英作文の授業でやったり,その表現を学ぶために文法の授業があったりとすべてを一つの目標にリンクして授業を行っていくと生徒のモチベーションが全く違うという。

 学習目標をどこに置くか,ということを,英語の教員同士,ひいては学校の教員で話し合っていくべき,その際の話し合いの仕方をPAという感覚で取り組んでみたら。たとえば,10月の英検に合格させたい,という目標があったら教員一人一人のアプローチは違っていいはず。教科書にしてもそれを通して何を伝えるか,だから。教科書を教えるのではない。結構こういう授業をやっていて,英語が好きになり東大に行った生徒もいるそうだ。

■フルバリューの職員室

 教員間で共通の意識を持った教員同士は案外うまくいくが,輪に無理に入ってこようとしない教員にはどのようにアプローチをしていくかについてもお話しをいただいた。

 そのような教員と同じ集団にいてどのように関わっていったらよいかを伺ったら,

「どうしたらいいと思います?」
 「やはり関わっていきたいと思う」
「それじゃ,どうして関わらないんだと思います?」
 「自分が今までやってきたことを曲げたくないから」
「そう。それじゃどうして曲げたくないんだと思います?」
 「今まで築いてきた自分がなくなるから,自分が否定されていると思うから」
「そうですよね。だから,その人は否定されてしまうと思うから入ってこれないので,思い切り肯定するのです。力を貸してください,と。あなたにはこのような力があるので,それを私たちにも使わせてほしい。あなたのこれまでのノウハウを私たちの力に貸してほしい,というスタンスです。実際にその人はいい部分をたくさん持っており,それは絶対にいかせるはず。そして,それが終わったら,あなたの力はこのようなところに使うことができた。本当にありがとう,というフィードバックをするのです。そうすれば,彼らも遠巻きからだんだん輪の中に入ってくるかもしれません。
その人を無理に集団に入れようとするのは,その人を無理やりにCゾーンから出してしまう行動です。そんなことをしたら,その人は絶対にCゾーンから出なくなります。そこにFVとCBCが存在するのです。適切なフィードバックを与えることによってその人のCゾーンを広げ,我々のゾーンと重なる部分を見つけるのです。そして,その重なった部分でより強く尊重し合っていけばいい。」

という話だった。

 本田先生にどうやってPAと出会ったのかを聞くと,それは数年前にKATと会ってからだそうだ。だからPA=KATできている。それ以前は自分の感覚で,これと似たようなことをやっていたが,PAとであったとき,自分を確信することができたという。自分の中に核として持つことができたということだろう。

 KATのPAでのアプローチがプロのカウンセラーから見ても完璧だそうだ。グループを読むということがすべて完璧に行われている。4つのグループには4通りの進め方をし,状況に応じてすぐに一つ前のステップに戻したりできる。たとえばグループでの協力を目標にしていても,個人がまだ出ていない場合はそのステップに戻って個人を見たりさせる。

 何事も現象を見るのではなく,そこに至る過程に目を向けることが大事。

 結局,KATと本田先生が一緒に本を書くということで話は終わった。出版についてのミーティングをするといっていた。

■感想…(ちょっと毒)

 うーん,やはりPAとカウンセリングのスタンスで共通するものはたくさんあるなあ…。そして,初めてあった僕にこんなにたくさんの時間をとって話をし,また僕の話にも耳を傾けてくださる。このような方が果たしてあちこちにいるだろうか?少なくとも,今まではあまりいなかったような…。今回の研修をとおしてそれが当たり前の環境になっているということを感じている。僕が一生懸命聞くことと,相手が一生懸命惜しみなく情報を与えてくださること。これって,PAでしょ。僕の身の回りでも,何か出し惜しみをして,相手の動きを読むような人も少なくありません,はっきり言って。これってどうなんでしょう?そのように自分の得た情報を他人に提供するのが,損をすることのような日常になってませんか?みんなでとにかく出し合って,その中でみんなで考え出したものとして一つのものを作り,行っていくということが大切なことではないのでしょうか?また少し毒づいてしまった…(反省)。

 とにかく,こんなちっぽけな僕に時間をとっていただき,有意義な時間を過ごさせていただいて,とても感謝しています。そしてあらためてKATの偉大さがわかりました。KATの周りにいる人は,みんな本田先生のように,すべてを提供してくれる方々です。それはKATがやはりそうだからなんでしょうね。本当に感謝しています。ありがとう,本田先生。そして,ありがとう,KAT。

kuni