トップページへのリンク kuni の研修日記

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kuniの研修日記(6)
横浜中学校2年生サマーPA

平成13年7月23日(月) 10:00〜15:30

場所:南足柄(足柄グリーンサービスロープスコース)
人数:64名(4グループ 1グループ16人)

スタッフ

鎗田(けん),徳山(ぺこちゃん),安江(ちか),田中(はるみ),吉田(よっぴー),高城(くに)

 前日の日野春のプログラムの続きで,またはるみちゃんのお宅にお世話になりました。かなはこの日からダンナさんのまえざわ(彼もPAのすばらしいファシリテーター)と東京で合流して,アメリカへ旅行。キャンプに行くそうです。この日も5:45に出発して,南足柄に向かいました。ここは以前はるみちゃんが働いていたところだそうです。この日も車が非常に混雑し,着いたのが9:30くらい。とんでもないほどの暑さでした。

 スタッフはそれぞれプランを練ってきていましたが,打ち合わせで「今日はじっくりと課題解決を行ってもうまくいかない。この暑さだからだれてしまう。ハイエレメントに上ろう」ということで当日の流れが決まりました。そのような環境設定の変化に柔軟に対応できるスキルと判断力が必要なのだと思いました。アイスブレーキングから始まってエレメントへということでプログラムがスタートしました。僕はけんのグループに入れていただきました。けんは横浜中学校でPAの中心となって取り組んでおられる先生で横浜中でのFCの時に初めてお会いしました。けんと僕の2人のビレイヤーが確保できたので,ペアでのエレメントをやりたいということがけんの目標でした。そこで手つなぎトラバース(マルチバイン)をピークに持っていきました。

 横浜中学校の生徒たちは,週1回2時間を使って,PAの活動を校内で行っています。横浜中学校にも蔵王高校と同じように体育館内にエレメントが設置されており,まだそれを使うまでには至っていないようですが,トローリーをやったり壁をのぼったりしているそうです。以前の日記にも添えましたが,振り返りの仕方など非常に工夫をしており,僕たちが宮城県で学校現場に取り入れる際の参考になると思います。また生徒たちはスチュードベッカーの巻き方やバックアップビレイのやり方なども学校で事前に経験しています。そんな継続した活動があるからこそ,このロープスコースに来たという意義を認識できるのだと思います。だからハイエレメントでOKなのだと思います。ファシリテーターそれぞれがそれぞれのアプローチで進んでいきました。クライミングタワーにのぼるグループもあり,生徒たちはハイエレメントのパワーを存分に感じているようでした。

 けんのグループは,コースを回り何をやってみたいかをみんなで見たあと,アイスブレーキングとウォームアップをかねてタグ系をやり,ローのマルチバインをやりました。自分のことで精一杯の生徒たちはなかなか手をつなぐなどの行動が見られません。しかし,徐々に相手に頼るような動きをが見えてきたところでブレイクとなりました。早めの昼食をとったあと,けんと一緒にエレメントにロープ等のセットアップを行いました。暑い中なのでとにかく大変です。しかし妥協は許されないこの過程に全力投球しました。午後は生徒たちがけんのインストラクションのもと,スチュードベッカーを巻きました。さすがにこのときはみんな自分の命の大切さを感じたようで,何度もうまくいかなくてははずし,付け直すという過程に真剣に取り組んでいました。自分の命を守る自分の作業,普段質問しない生徒もこんな時は必ず聞いてくるんだろうなと思いました。

 生徒間での役割分担がなかなかうまくいきませんでしたが,呼びかけると必ず誰かがバックアップやラダー,ロープなどそれぞれに入ってくれ,何とか活動することができました。やはりチャレンジバイチョイスの伝え方は難しいと感じました。「○○くんがこのままだと上れないんだけど…。」こんな言葉も何度か発してしまう僕がいました。

 すばらしかったのは,ある生徒の活動でした。彼は2人組のグループを作ることになった時,1人余ってしまいました。それは1人の生徒が体調面の問題で活動の仕方を変えたからです。その彼が「僕やってみたい」と言ったのです。「でも一人なんです」。この行動にもうすでに2人組を作っていた生徒が「僕2回のぼってもいいから一緒にやってやる」と手を貸してくれたのです。2人組の活動なので,どちらかが最初にのぼらなければなりません。はじめの彼が先発部隊でいよいよのぼり始めました。ラダーを越え,いよいよワイヤーに手が届く…という時に「やっぱり降ります」と彼がいいました。しばらくそのままの状態が続き,やはり降りてきました。汗が全身をしたたり落ち,彼にとってはそれがとても大きなチャレンジだったのだということを物語っていました。グッドチャレンジ!!精神的にも身体的にも疲れていたにもかかわらず,彼はその後の活動でほとんどすべて何らかの形で積極的に関わってくれました。その次のグループは彼に手を貸してくれた生徒のグループがのぼりました。どっちが先にのぼるかを決めるのに,「自分」ではなく「おまえが先にやれよ」という言葉が出てきたのが面白い瞬間でした。そんなこんなで一人目がのぼりました。スチュードベッカーの巻き方も多少煩雑で巻き直しをした生徒でした。その彼がふるえながらワイヤーに足をかけました。二人目がのぼっていきました。「どう,景色はきれい?」「富士山が見える?!」そんな言葉を,下で聞いている生徒がいました。さっきの彼です,断念した…。数グループのチャレンジが終わり,ビレイもくたくたです。時間も押してきたという状況の中で,彼が「もう一回のぼってもいい?」と聞いてきました。全体に問いかけると「いい」との返事。このときも一緒にのぼってくれる生徒が現れて,チャレンジとなりました。スタートから足は震えています。前回と同じポイントで「やっぱり降ります」が出てきました。「本当に?」下にいる生徒の声も多少疲れ気味でしたが,明らかにもっといけると励ましていました。そして2人目がのぼり始めました。もう下から詰まっているので引き返すこともできません。ここで彼らのチャレンジがまた一歩ステップアップしました。ついに2人がワイヤーに乗ったのです。

 あとはもう,ゆっくり時間をかけて2人でトラバースしていきました。途中,しっかりと支え合い,倒れそうになったのを救ったのは1番目の彼の方でした。さっきまでとは違って,頼られる側にいる彼がいました。そして目標を達成したあと,ロープに身を委ねて降りてくるときに手を振りながら降りてくる姿は象徴的でした。最初に手を貸してくれた仲間たちが受け止めていました。もう震えなどはありません。彼は目に見える形で自分の殻を破ったのです。

 振り返りでも言葉がどっとあふれてきました。「□□くんがいたからできた」と言う言葉が妙に実感がこもっていました。「どうしてもう一度のぼろうと思ったの?」と尋ねると「自分の次にチャレンジした仲間が見た景色を自分も見てみたい」という気持ちからだそうです。「景色はどう?」「富士山見える!」。何気ない一言が,エラーを起こした自分を奮い立たせ,再度チャレンジする気持ちにさせるほどの大きな力を持っているということを改めて感じました。それも先生や親からではなく,自分の同級生の言葉から…。

 今回のプログラムを通して感じたこと,それは普段の生活に取り入れた上でのピークはハイエレメントができるのだということでした。蔵王高校ではAPなどの4泊5日の経験がないことから,ハイエレメントに対して非常に懐疑的な印象を持っていたのかもしれません。しかし,授業に取り入れていく時にハイエレメントは貴重な体験を与えてくれる宝物です。是非取り入れていきたいし,取り入れていけるということを感じました。ファシリテーターによっては目標として「まずあがってみること」。そこから自分に合わせて無理だと思ったらそこでやめてもいいし,そこからスタートしてもよい,という目標設定をしているところもありました。「あがってみて考える」これも一つのチャレンジバイチョイスなのかな,と感じています。

 今回のプログラムでは,僕が千葉大学での研修ですごくお世話になっている徳山先生の奥様,ペコちゃんとご一緒させていただきました。実は僕が2年前,PAの体験会に初めて参加した時,ファシリテーターはペコちゃんと高久ケイだったのです。だから,PAとの出会いを支援してくださった方と一緒に活動するなんてとても夢のようでした。また,ちかとも出会うことができました。横中で講師としてPAにも携わっており,その凛とした姿はとてもすてきでした。この研修でも,またすばらしい方々と出会うことができました。最高のおみやげです。

 帰りは,開成という駅から小田急線で小田原まで,そこから新幹線で仙台に帰ってきました。もうふらふらでした。ちなみにはるみちゃんは車で青梅まで帰りましたが,途中意識がないほど眠かったそうです。そして家に着いたのも僕が仙台に着いたのとほぼ同じくらいのようでした。本当にありがとう,はるみちゃん。でもまた遊びに行きますよ。

kuni