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kuniの研修日記(4)
精神科看護研修会
〜レクリエーションとグループワーク〜

平成13年6月29日(金)

場所:群馬県桐生青少年野外活動センター
主催:社団法人日本精神科看護技術協会 群馬県支部
参加:約70名(精神科を持つ病院の看護士さん)

 KATと7:15に東京駅で待ち合わせをして,僕の一日が始まりました。東京にも慣れてきたと自分に言い聞かせ,駅の構内を行き交う大量の人々の一人になって,東京駅へ。当日はKATと朝食対決でした。どっちがおいしそうな朝食を買ってくるか,対決です。僕は某パン屋さんのクロワッサンにいろいろ入ったサンドとカフェラテという僕らしい洋食で勝負に出ました。一方KATはおいしそうなおにぎりといいにおいがぷんぷん漂うみそ汁という純和風で挑んできました。僕もおいしそうに食べて善戦しましたが,KATが心から味わって食べているのを見て,ちょっと勝負あったかな…?次回は絶対に負けないようにするぞ。みなさんにも紹介しますね,KAT御用達のおにぎりとみそ汁屋さん。僕もついに最近発見しました!

 さて,当日は群馬県内で精神科を持つ病院の看護士をしている約70名の方々との研修でした。初めのうちは雰囲気もそれほど柔らかくなく,朝方降った雨でぬれた地面を気にしながら少々緊張気味のスタートでした。それもそのはず,県内各地からの参加ということもありお互いに顔を知っている人が3分の1ぐらい,さらに夜勤明けすぐの方や出張としてでなく参加している方など様々でした。

 そんな環境を見たKATのアイスブレーキングはやはりすごい。僕もKATと離れたところで輪に交じっていましたが,隣のお兄さんが「あの人面白いぞ」とどんどん話に引き込まれていって,KATワールドが形成されていきました。当日は地元のケーブルテレビ局も取材にくるという熱の入り様,PAが全国各地で広まってきているな,という印象を受けました。

 硬さがとれてきたところで,みんなが広い広場に一列になってそこから反対岸にジェスチャーを着けて渡っていくという活動で始まりました。周りの様子を観察し,また以前から知っている仲間とコミュニケーションをとる様子などを見ながら,だんだん人数が増えていきました。自然に手をつなぐ環境になり,それが輪になっていき…,とあっという間に大きな輪になっていました。今度はメビウスの輪のように,中に入ったり外にでたりと動きが活発になり,グループから大きな声や笑いが起こり,リーダーシップが生まれ…と10分前には全く想像もつかなかった集団になっていました。

 「名前を覚えよう」という目標設定のもと,看護士さんとして患者さんと接する際はもとより,職員同士の関係をよりよくするためにはどうしたらいいか,つまり我々教員が学校で行うのと同じ状況での研修となりました。「フルバリューの職員室を作ることがたぶん一番難しいことだよね」昨年,TOMOが話していた言葉が頭をよぎりました(TOMOに会いたいな…)。

 KATはもともとスポーツ心理学を専門としているということもあり,医学に関しても膨大な情報を持っています,その上移動中の電車で見せてもらったのですが,医学関係の本も携帯し常に情報を収集しているんですよ。さすがプロだなあ…。そんな医療の立場からのアプローチは参加者全員をうならせるものでした。我々が対象の時には「学校教育」からのアプローチですが,常にいろいろな方面にアンテナをのばしているのです。

<午前の活動>

 昼は毎年のこの行事で恒例になっているバーベキューで参加者の親睦を深めました。午前中のグループは実はこのバーベキューのグループへと発展していきました。もうお互いに自然に話しかけることのできる環境で,みんながのびのびと自分ができることに積極的に取り組んでいました。火をつける火と,食材を切る人,そしてとにかく食べる専門の人など,楽しい時が過ぎていきました。僕はもちろん食べる専門の人。

 汗がしたたるほどの晴天のもと,全員で片付けまでを終え午後からの活動に入りました。午後は,午前中の動的な活動から,エアコン付きのプレイホールで理論をまじえた活動に入りました。そのときのKATの一口メモをのぞいてみると…

という内容がホワイトボードの脇に小さく書かれていました。そして僕たちがのんびりしている間にKATは一人,プレイホールに入り場所の確認,理論の説明の際に使う内容の板書などをすべて済ませていました。それはFVFの意味,Cゾーンの図などでした。ちょっとのんびりしすぎていた僕でした。

 午後の活動の中では,体の動きを中心とした活動が行われました。まずキャッチで全員がここにいることを強調し,そこから再び始まりました。

 今回印象に残ったアクティビティは「オセロ紹介」でした。オセロゲームと同じように,黒を白にしてしまうという活動です。たとえば「私は優柔不断なんです」と言ったら,相手は「それじゃ,あなたはじっくりと考えてから行動するタイプなんですね」といった具合に,相手が思っている短所をすべて長所として返してあげるという活動でした。これをやって感じたことは,自分は長所よりも短所を意識することが多く,それによって自分をディスカウントしている場面が多いのではないかと言うことでした。もっと自分のいいところを認め,逆に悪いところもプラスに転換していく気持ちも必要なのだと感じました。

 そのあとは「クローン人間」。僕も自分でオーラルコミュニケーションの授業でやったことがありますが,今回の看護士さんたちの活動でも相手の立場に立つということがどれだけ重要かを再認識されていたようです。さすがに看護士さんたち,実際に自分も寝転がって同じ行動をとりながら活動されている方もおりました。僕もパートナーの方を無事に起こさせることができました。 そんなこんなの活動で,あっという間に時間が流れました。

 この研修で僕はとても強く感じたことがあります。それは,看護士さんがこの研修を行う意義です。きっとこの研修の目的は看護士さん自身が変わると言うことです。患者さんに「フルバリュー」とか「チャレンジバイチョイス」などという言葉は使わないはずです。それにPAを行う時間なんか絶対にないはずです。しかし,なぜこのような研修をするのか?それを考えると,私たちの学校で行う研修の意義が見えてくるような気がします。

 そんなPAのマインドを持った看護士さんがいたら,絶対に患者さんはうれしいよね。その人がいるだけでいいと思うよね。そんな感じだと思うのです,学校も。最近僕がずっと思っているのは,その人がいるだけでなんかいいや,と思える環境作りです。吉本ばななの「体は全部知っている」(文藝春秋)の「田所さん」という短編に出てくる,田所さんのような存在っていいなと思います。そうなりたいからなれるのでは絶対にないけど,でもそんな人がいたらそれこそフルバリューも生まれるのにな,と思います。僕は思わず涙してしまいました。みなさんも是非ご一読を(話が飛んでしまった…)。

 私たちは生徒に「フルバリュー」とか「チャレンジバイチョイス」という言葉を教えるのではありません。自分がそんな環境の中で生活し,いや自分を取り巻く環境がそうなることを期待しているのかもしれませんが,その中でたまたま生徒と共存するということではないでしょうか。うまくいえないけど…。

 僕たちは「生徒のために」とか「学校のために」と言っているけれど,その前に「自分のために」ではないでしょうか。「生徒を変えるために僕たちが研修をする」のではなく「自分が変わっていく過程を見つめ,それを生徒が見て結果として変わっていくかもしれない」のではないでしょうか?

 こんな当たり前のことを今頃敢えて表現している僕は何なんだろう…。こんな問いかけを自分自身にしながらこの研修日記はおしまい。

またねー!!