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●平成15年度 地学部会秋季総会・巡検<予告編>
 平成15年度の地学部会秋季総会・巡検が下記の日程・内容で行われます。千円支部(南地区)と仙南支部では,昨年度と今年度の2回,コースの下見を行いました。ここにその様子を予告編として紹介します。参加者の皆さん,本編もどうぞお楽しみに!
◇おしらせ◇

みやぎ地学喫茶(メーリングリスト)に参加しませんか?

 秋季総会・巡検では,お世話になりました。さて,「みやぎSWAN」メーリングリストが今年の2月で終了したため,宮城県の地学教員のメーリングリスト「みやぎ地学喫茶」もそのまま立ち消えになっていました。しかし,今回の巡検に参加して,やはり先生方と日常的なコミュニケーションがしたいなと思いまして,Yahoo!eグループという無料のメーリングリスト・サービスを使って,リスタートさせてみました。興味がある方はぜひご参加ください。

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【巡検概要】
  • 期日 平成15年11月13日(木)〜11月14日(金)
  • 方面 白石市内,白石市小原周辺および七ヶ宿町関
  • 宿泊 七ヶ宿館(刈田郡七ヶ宿町字関30 TEL:0224-37-2408)
  • 講師 長瀬敏郎 東北大学総合学術博物館・助教授(鉱物学)
  • 内容
    • 白石市小原温泉の雨塚山(紫水晶)
    • 七ヶ宿町横川(横川層の観察と植物化石・ザクロ石花こう岩など)
    • 白石市白川内親(白石層の貝化石)
    • 白石市北白川犬卒都婆(球状閃緑岩;菊面石)

※一次案内を出した時点では,小原温泉碧玉渓の玉髄についてもコースに入れるつもりでしたが,下見の結果,水量が多くやや問題があるためカットすることにしました。その代わりに,犬卒都婆の菊面石の見学が入っています。

  • 地形図 1:50,000「桑折」「上山」「関」「白石」

   
雨塚山のズリを下の林道から見上げたところ【雨塚山の紫水晶】

 バスを降りて林道をすこし登ると,あの有名な雨塚山のズリ山にたどり着きます。斜面一帯に穴がたくさん。先客の皆さんががんばった跡です。ここは紫水晶の産地として全国的に有名なところで,全国から鉱物マニアがやってきます。もしかしたら,当日も先客がいるかもしれません。そんなに掘られたら,もう掘り尽くされているのでは…と心配になるかもしれませんが,大丈夫です。下見の短い時間でもちゃんと発見できました。巡検講師の長瀬先生の講演に関わる鉱物ですので,しっかり採集しましょう!

【横川の植物化石・ザクロ石花こう岩など】

 宿泊先にほど近い,七ヶ宿町横川の集落。そこを流れる横川の川岸に植物化石を産出する崖があります。新しい橋ができたときに,その崖はほとんど護岸になってしまったのですが,ところどころにまだ顔を出していて,化石を採集することができます。

 この植物化石を産出する地層は横川層と呼ばれていて,新第三紀中新世後期にカルデラに堆積した地層です。仙台市内に分布する白沢層とよく似た雰囲気で,実は時代もほとんど同じだと考えられています。

 ここでは,植物化石に加えて,転石からいろんな岩石が採集できます。赤いザクロ石を含む花こう岩,シマシマの片麻岩,大きな斜長石の斑晶を含む安山岩など。1cm以上もある斜長石の斑晶は迫力ありますよ!この安山岩を見せると,生徒たちは「なるほど斑晶だ」と納得するそうです。

横川の化石産出地点

横川の安山岩

内親の砕石場全景

内親の貝化石

【内親の貝化石】

 白石市白川に,松川砂利砕石という会社の大きな砕石場があります。この砕石場の岩石は,白石層の凝灰質砂岩〜シルト岩です。この岩石の中に,ヤゲンオオハネガイやエゾキンチャクなどの貝化石がたくさん含まれています。あたり一面露頭なので,時間を忘れてしまいそうです。下見のときに,パワーショベルを動かしていたおじさんが,化石がベタベタ張り付いた岩塊を見せてくれました。ダンプカーじゃないと運べないぐらいの大きさでしたけど,もらっていきたかったです。

 ちなみに,この貝化石を多産する岩石はどこに運ばれていくかというと,砂利を採集したあとの穴を埋め戻すための材料になるそうです。埋め戻された場所に貝化石が多産するなんて,後生の人がその場所を掘り当てたとき,理解に苦しむでしょうねえ。

 また,地層中からは有孔虫やケイソウなどの微化石がたくさん含まれているそうです。部活動のネタにいかがですか?

【白石市犬卒都婆の球状閃緑岩】

 白石市の東方にある犬卒都婆(いぬそとば)部落には,菊面石と呼ばれるちょっとかわった閃緑岩が産出します。岩石の中に直径数cmの球状の構造が密集する部分があるのです。まるで菊が咲いているようなので菊面石と呼ばれていて,大正12年に天然記念物に指定されました。

 天然記念物に指定されてからは,当然採集や移動が禁止されています。また,現在直接観察できる露頭もありません。しかし,ある民家の庭先に,立派な菊面石がおかれていて,今回の巡検ではそれを見せていただけることになっています。写真の上の方です。この菊面石,実は一度ドロボーに遭っているのです。ある晩,この家の方がトイレに立って何気なく庭を見ると,さっきまであった菊面石がない!あわてて駐在所に連絡したら,ドロボーはすでに捕まっていて,石も警察が保管していてくれていました。ちょうどそのとき,仙台で起こった殺人事件の検問をしていて,大きな石を積んだ怪しげな車がその検問に引っかかったのだそうです。無事に戻ってきてよかったですね!

 巡検では寄りませんが,この民家から2km弱先には,菊面石をまつった「菊面石神社」というものがあります。なぜ石をまつったのでしょう。

 この球状閃緑岩については,巡検講師の長瀬先生が共著で論文を書かれています。講演のときにこれに関する話題も出てくる予定です。お楽しみに!

民家に置かれた菊面石

菊面石神社

【関連サイト】
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